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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
横浜市の地下構造調査とその応用について
 

3 地下構造調査の概要
3-1 調査の経緯
 阪神・淡路大震災では、神戸市街地を中心とする東西の狭い地域に甚大な人的・物的被害をもたらした強震動の分布、いわゆる「震災の帯2 」が認められた。この原因の一つとして、地下深部の地震基盤までの構造が挙げられ、より正確な強震動予測のためには、地下深部の構造や、地震の波の伝わり方に関する情報が重要であることが改めて指摘された。

  しかしながら、我が国においては、強震動の定量的な評価を目標とした総合的な地下構造調査を実施した例はほとんどなかった。

  このため、本市では、市内の地域毎の地震の揺れを高い精度で予測し、「高密度強震計ネットワーク」を活用して、各種の物理探査や強震動解析等を行い、地震基盤と呼ばれる地下深部にある硬い岩盤までの詳しい構造を把握する「地下構造調査」を1998年度より2000年度までの間で、科学技術庁の交付金を活用して実施している。

  本調査にあたっては、市域の地形・地質等に詳しい研究者、並びに地震学・地震工学及び防災工学に関する専門家で構成される「横浜市地下構造調査委員会」を設置し、専門的な見地からの指導・助言を受けて実施している。
2 阪神・淡路大震災では、神戸市から西宮市にかけて、際だって被害の大きい地域が幅1km程度で東西に帯状に連なって現れた。その後の調査結果で、地盤構造がその主な原因であるとされている。

 

3-2 調査の目的
 昨年、横浜市で開催された「第2回日米地震防災政策会議」では、「リアルタイム地震防災システム」の概要を紹介した。このシステムの中核をなす「高密度強震計ネットワーク」のこれまでの観測結果から、横浜市内でも地域により揺れの大きさが異なることがわかっている。

  本年6月下旬からの伊豆諸島における一連の郡発地震でも、揺れに差異があることを示しており、例えば、7月15日に発生した新島で震度6弱を記録した地震においても南区で最大計測震度3.8、青葉区で最小計測震度1.5となっている。

  このように揺れが異なるのは、地震計の設置してある表層の地盤に差異があるだけでなく、深部の地下構造が異なるためである。これまで、市域の表層地盤については既に詳細に調べられているが、その下の地下構造については詳細に把握されていなかった。

  このことから、地震の揺れを精度よく予測するために、各地域の地下構造を把握するものである。

 

3-3 調査・解析の方法
 横浜市では、1995年度から1996年度にかけて立川断層3 (東京都)の市域への延長の可能性を確認するために地下構造調査を実施しており、深部地下構造に関する豊富な既往調査結果がある。

  そこで、調査・解析にあたっては、既往データを活かしつつ、横浜市の特徴である稠密な「高密度強震計ネットワーク」のデータを活用した解析を中心に、深部までのS波速度構造4 の推定に有効な微動アレイ探査を多点で実施し、さらに、分解能の高い反射法地震探査を併用する調査を実施した。具体的には、以下に述べる4項目にわたって調査を実施した。(図‐1)

(1) 横浜市を通る既往人口地震探査測線データを収集・整理し、再解析することにより市域直下の3次元のP波速度構造5 を求める。
(2) 「高密度強震計ネットワーク」で日々観測している関東周辺で発生する地震の、計測震度、地震波形データ、応答スペクトルなど地震データを利用し、走時6 データの解析や市域直下の3次元のP波およびS波速度構造の推定等を行う。また、本調査で推定された地下構造を検証するためのデータとして利用する。(図‐2)
(3) 微動アレイ探査は、風や波などの自然界や、交通から発生する非常に微弱な地面の揺れを解析し、市域の3次元的なS波速度構造の推定を行うなど、深部までの地下の構造を把握するものである。横浜市域周辺では、これまで、主に地震工学研究の一環として実施されているが、市全体を網羅するような十分な密度では実施されていなかった。そこで、微動アレイ探査の地下構造調査への適用性を評価することを目的に、1998年度には、市域内の25箇所において、微動アレイ探査調査を実施した。
なお、最大底辺長2kmを基本として実施したが、横浜市周辺では、地震基盤までの深度が3〜4kmと極めて深いため、そのような深部の探査への適用性を評価するため、最大底辺長を4kmとした測定も実施した。(図‐3)
(4) また、1999年度には、推定される構造の急変箇所等に的を絞り、地震基盤の凸凹や、基盤上位の地層の詳細な速度分布を推定することを目的に、反射法地震探査を実施した。これは、地表でバイブロサイス(大型起震車)で人口的に震動を発生させ、地層の各層から反射してくる反射波を観測し解析するもので、市北西部(青葉区、緑区、旭区)の南北約13kmにわたる区間で実施した。(図‐4、写‐2)
3 東京都武蔵村山市から、立川市から国立市にかけて延びる活断層で、およそ5,000年に1回の割合でマグニチュード7クラスの地震を発生すると考えられている。
4 S波が伝わる速度の震度分布。Secondary wave(次に来る波)の略。P波より遅れて伝わり振幅の大きい横波であり、主要動とも呼ばれ、P波に比べて強く揺れる。従って、S波が伝わる速度の把握が強震動予測を行う際に最も重要になる。
5 P波が伝わる速度の震度分布。Primary wave(初めに来る波)の略。振幅が小さく先に伝わっていく縦波であり、古い時代の堅い岩盤の方が新しい時代の軟らかい地層より早い性質を持つ。
6 地震波が震源から観測点までに到達するまでの時間。走時遅れとは、基準点における走時との差。地震基盤が深い地域や表層に速度が遅い地層が堆積する地域では、走時遅れは大きくなる。

 

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