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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
地域の安全優先への取組み:
カリフォルニア州バークレーの概観
 
カリフォルニア州バークレー市管理局長
(Chief of Staff, Office of the City Manager) アリエッタ・チャコス
 

第2回日米地震防災政策会議
開催地:横浜

1999年11月
 
カリフォルニア州バークレー市はサンフランシスコの東端に位置し、有名な金門橋を真正面に見据えている。人口約108,000人、16.093平方キロメートルのこぢんまりしたこの都市には、カリフォルニア州立大学バークレー校があり、優れた知的・学術的探究の場となってきた。また政治的行動主義でも、知られている。こういった特徴から、バークレー市の地域性は伺えるはずである。

 バークレー市民は地域政治に深く関与しており、40以上の市民委員会に務めて、市長及び市議会への提言をしている。このように市民同士が一致団結して、地方自治体の様々な側面について、公の場でよく活発な議論をたたかわせているのだが、その対象の一つに、災害対策がある。

 過去10年間、バークレー市は耐災害社会を作り上げる事に尽力してきた。二つの地域での災害、1989年のロマプリエタ地震と1991年のイーストべイ・ヒルズ火災がきっかけとなって、地域社会が自然災害による危険を査定し、その中で最も深刻なものへの対策をたてようとする動きが出てきた。この運動は当初は細々と行われ、安全性への目標も不明確なままだった。住民達は単に、カリフォルニア州が地震の頻発期に入った事で、バークレーを脅かす様々な災害の潜在的危険が、無視できないほど大きいものだと意識していたにすぎなかったのである。

 1990年2月に入ると間もなく、バークレー市局は地域の代表者とともに、危険査定についての取り決めに着手し、安全強化にかかる主なコストの援助方法を模索し始めた。ロマプリエタ地震に見舞われたとき、バークレー市内では軽傷者も少なく、直接的な被害は殆どなかった。とはいえこの地震が喚起となって、地方自治体役員や地域の代表者達は、ロマプリエタ地震は都市型地震のケースではないと気付いたのである。震源地はベイエリア近辺から70マイルも離れていた。被災地での死者と広域に及ぶ財産被害は相当なものではあったが、同じ地震がバークレーまたは他のサンフランシスコ湾岸地域を直撃していれば、被害はもっと拡大していたであろうと思われる。それでも バークレー市民は、同じような災害がもし近くで起きた場合の被害を考えると、自分達はあまりに無策であると気付いたのである。

 
 

多様な災害環境
 
バークレーの多様な災害環境は、安全への挑戦である。同市は建物が密集する地域にあり、ヘイワード断層によって二分されている。このため、特に潜在的ダメージの大きい急激な地表加速度を含め、地表近くでの地震の影響を受けやすいのである。港湾地区の地質工学的形状は日本の沿岸地域に非常に類似しており、神戸との類似性が多いのが気掛かりである。バークレーはサンフランシスコ湾とイーストベイ・ヒルズの間に位置している。その地盤である沖積扇状地は、地震動の被害を非常にうけやすい不安定な土壌で構成されている。これが最も顕著なのは、液状化の危険が大きい湾岸地域である。地滑りもまた、悪天候や地震の中では、アクセス関連の支障を来すので、バークレーヒルズにおいて大きな脅威となる。

 これらの危険のほかに、市を通って流れている都市部の小川が13箇所ある。降雨量の多い期間は、これが住宅内や市の道路で大きな洪水を引き起こす。都市/荒蕪地域と東バークレーヒルズとの境界が、広大な未開発森林地帯に隣接する密集住宅地域にある。住宅地域の狭い、曲がりくねった道では、消火装備が近づくのは難しく、災害時でなくとも火事の危険を増加させている。

 コミュニティがかように自然災害に弱いことを認識させるのは、困難であった。1989年のロマプリエタ地震で、バークレー市が、USGSがカリフォルニアで最も危険と診断した。北ヘイワード断層の上にあることを再認識した人が多かったのである。地域の住宅地の多くがアルキスト-プリオロ特別研究地域 (Alquist - Priolo Special Study Zone)にある。この地域は、特定のコミュニティと建築デザイン安全対策を保護する、活断層付近のカリフォルニア管轄機関が地震断層帯と指定している。さらに、地元の歴史家も1908年以来、バークレー市が都市/荒蕪地域で16件の大火事を経験したことを喚起している。

 USGS 研究者は、港湾地域で今後30年以内にM6.7またはそれ以上の地震が起こる確率を70%、M6-6.6の地震を80%と予想している。港湾地域政府連合、共同管轄地域組織による研究で、地震がくると、バークレー市だけでも30%以上の住宅が失われ、多数の死傷者が出ることがわかっている。過去10年に、この地域は地震、大火事からひどい冬嵐まで、8つの政府認定災害を経験した。ここは、災害と無縁の地域ではない。

 

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