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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
被災者生活再建支援法について
 
川崎勝幸
国土庁防災局防災企画課課長補佐
 

(要約)
1. 日本は、気象や地形的要因により自然災害を受けやすい状況となっており、毎年のように地震、風水害などの災害が発生し、甚大な人的・物的被害が生じている。これまで、被災者の生活再建については、被災者の自助努力を基本としており、国としては低利の融資や税の減免等を実施し被災者を支援してきた。しかしながら、1995年に発生した阪神・淡路大震災では、低利融資といえども十分な債務負担能力がない、あるいは高齢であり自活する力が弱い等の理由により、自立して生活を再建することが困難な場合も見られた。このような教訓を踏まえ、自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた被災世帯の自立した生活再建の開始を支援するため、1998年5月に被災者生活再建支援法が成立した。
2. 被災者生活再建支援法の概要及び特徴は以下の通りである。
-1- 住宅を全壊等した被災世帯に対し、年齢、所得等に応じて最高100万円を支給することとしており、被災者に現金を給付する初めての恒久的な生活再建支援制度である。

-2-都道府県は、予め設置された被災者生活再建支援基金に、相互扶助の観点から、当初300億円(5年後300億円を追加)を拠出し、基金はその運用益で被災者に生活再建支援金を支給するものであり、都道府県による相互扶助の観点からの初めての被災者救済の仕組みである。なお、国は、支援基金が支給する生活再建支援金の半額を補助する。

-3-被災者は、生活再建支援金により、生活再建に通常必要な耐久消費財の購入や、引越代に充てることが可能となっている。

-4-1999年4月以降の自然災害から正式に適用されているが、1998年夏の豪雨・台風災害に対し前倒しで同様の措置を講じた。
3. 今後、法の施行状況について総合的な検討を加えることとしており、また、住宅の再建支援方策について検討を深めることとしている。

 

1 被災者生活再建支援法の制定までの経緯
 
我が国は、気象や地形的要因により自然災害を受けやすい状況となっており、毎年のように風水害、地震などの災害が発生し、甚大な人的・物的被害が生じている。

  これらの災害が発生した直後においては、食糧、住居、医療等を自ら確保することが 困難な被災者に対し、災害救助法に基づき、必要な物品、応急仮設住宅、医療等を直接提供する一時的、応急的な救助が実施されてきた。他方、このような応急的救助が行われた後の被災者の生活の再建については、被災者の自助努力を基本としており、国としては、災害援護資金の貸付等の低利融資や税の減免等を実施することにより被災者を支援してきた。

  しかしながら、1995年1月に発生、死者・行方不明者約6,000名、負傷者約40,000名、住宅の全壊約110,000棟、半壊約140,000棟の被害となった阪神・淡路大震災では、居住する住居が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた被災者の中には、経済力が弱く低利融資といえども十分な債務負担能力がない、あるいは高齢であり自活する力が 弱い等の理由により、自立して生活を再建することが困難な場合も見られた。

  このような阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、内閣総理大臣が設置した防災問題懇談会は、1995年9月「大規模災害による被災者の生活を迅速かつ弾力的に支援するため、全国地方公共団体が毎年度一定の額を拠出して積み立てておき、有事に際して被災地の支援を行う基金の制度を創設することを検討する必要がある。」と提言した。

  また、こうした基金制度を含めた広域防災支援体制等の整備について検討を行ってきた全国知事会は、1997年7月「地震等自然災害による被災者の自立再建を支援する災害相互支援基金の創設に関する決議」を行った。

  その後、関係機関で様々な検討が進められ、最終的には、与野党共同で「被災者生活 再建支援法」として提案され、1998年5月に成立し、同年11月に施行された。

 

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