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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
アクションプラン作成等による複数機関の連携について
−南関東地域における震災時の医療搬送活動を中心に−  
 

4.広域医療搬送活動に関する検討
 
国土庁においては、活動要領等に基づく応急対策の具体化を推進するため、「南関東地域の大規模震災時における医療と搬送に関する調査検討委員会」(座長:吉井弘明文教大学教授)を設置し、関係省庁、関係公共団体の参画を得て、医療搬送活動の具体的かつ実践的な連携方策を中心に検討を行い、平成10年8月に大規模震災時における医療搬送活動を効果的かつ実践的に行うために必要な方策について、次のような検討結果がとりまとめられた。

(1) 一連の対応の有機的な連携の必要性
 医療搬送活動については、現地レベルの救護活動、救護所の設置、救急車等による最寄りの医療機関への搬送等から始まり、医療機関間の搬送、さらにその外側の搬送にまでわたるものであり、その一連の対応が有機的な連携のもとに行われることが重要である。

(2) 広域的な対応の必要性
 大規模な地震が発生した場合の重篤患者の発生状況を勘案すれば、南関東地域外に患者を搬送する必要性が生じる場合がある。被災地内を中心に医療や搬送を実施する地方公共団体を効果的に支援するため、国は広域的に患者を搬送するための体制を構築する必要がある。

(3) 現地情報が収集できな段階における対応の必要性
 医療搬送活動は、人命に直接関わるきわめて迅速な対応が必要な活動である。24時間以内に適切な処置が施せるか否かが一つのポイントであり、災害時にはそのための体制を早急に立ち上げることが重要である。このためには、現地情報の収集等の重要性に加えて、地震被害早期評価システム(EES)による推計結果を活用して、関係機関ができる限りの対応を迅速に行う体制を構築する必要がある。

(4) 医療搬送活動に係る資源の確保
-1- 搬送手段
・迅速かつ広域の対応のためには、ヘリコプター、固定翼機等の搬送手段が重要であり、そのような搬送手段を災害時には迅速に確保するための方策を講じるとともに、平常時からの習熟、重篤患者を搬送するための装備等の問題についても検討を進めていく必要がある。
・医療搬送活動に使用されるヘリコプター等の搬送手段は、物資の輸送や救助活動、消火活動等様々な応急対策に使用されるものであるから、応急対策全体の需要等について検討した上で医療搬送活動について、さらに具体的な検討を行う必要がある。 ・搬送手段の運用については、被災都県の災害対策本部の役割が重要である。また、さらに実践的な運用として、災害時の被災地内の拠点となる医療機関との間で、災害時の運用について検討を進めておくことが効果的である。

-2-搬送拠点
・地域内のヘリポート等については、広さ、医療機関との距離、夜間の利用可能性、避難地との競合の有無等を的確に判断し、平常時からリストアップし、情報を共有しておく必要がある。さらに、平常時から、管理者等と協議を進め災害時に迅速に活用できる体制を整備しておく必要がある。
・広域的な搬送拠点について、国としても、南関東地域内の医療機関に搬送する場合のヘリコプターのための搬送拠点、さらに南関東地域外へ搬送する場合の広域搬送拠点として活用する施設も含め、体系的な整備を進めておく必要がある。

-3-医療機関
・一般的な空床でなく外科手術可能量等に着目し、平常時から災害拠点病院等の大規模地震発生時の重篤患者受け入れ可能数を把握し共有しておくことが重要である。
・広域災害・救急医療情報システム等の整備により、災害時には広域的に情報を共有することが可能であるような体制を構築する必要がある。
④医師
・搬送手段に同乗する医師、搬送拠点等で医療活動に従事する医師等の確保 について、平常時からリストアップしておき地震発生時に被災地周辺の関係機関に対応を要請できる体制を構築しておく必要がある。

(5) 関係機関の連携
-1-医療搬送に係る関係者ネットワークの構築
関係者が多岐にわたり、しかも災害時という特殊な状況において迅速な対応が必要とされることから、国の関係機関間、国と地方公共団体間について、さらには、医療機関と防災機関間について、災害時に情報や連絡のやり取り等を行う関係者のネットワークを平常時から構築しておく必要がある。

-2-情報手段の整備
多岐にわたる関係機関が連携するためには、情報の連絡や共有のための設備の整備がきわめて重要である。国の関係機関を結ぶ中央防災無線やDIS、国と地方公共団体を結ぶ消防防災無線、医療機関間や医療機関と防災機関を結ぶ広域災害・救急医療情報システム等の整備の状況を踏まえ、さらに連携に配慮し、災害に強い情報手段を整備していく必要がある。

(6) 計画的な備えの推進の必要性
 阪神・淡路大震災後、関係機関においては計画やマニュアルの見直しが進められた。今後は、関係機関の連携に着目し、実践的な備えを計画的に進めていく必要がある。医療搬送活動は実践的な備えが急がれる分野であり、国、地方公共団体における取り組みの進展を踏まえ、順次充実させていく必要がある。

 

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