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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
既存建築物の耐震改修の取り組みについて
 

3 建築規制における構造安全性の確保
 
前述したように、建築基準法では、建築規制の内容として各種の基準が定められている。

  この基準には大別して、建築物と市街地環境との関係を規定した集団規定と建築物本体の安全性を中心とした要求を規定した単体規定とに分かれる。単体規定の内容は、自重・積載荷重と自然界からの外力に対する安全性が求める構造規定、火災に対する安全性を規定する防火規定、階段の構造など日常活動が安全に行われることを担保するための規定、換気や給排水等に関する衛生上の安全規定、昇降機等の設備の安全規定等が規定され、規制されている。

つぎに、これらの安全規定の中での構造の安全性に関する規定について、より詳しく見てみよう。

1)構造安全規定の概要
 構造安全規定は、建築物の自重・積載荷重及び自然界からもたらされる種々の外力から構造体の安全を担保するための規定である。

  我が国は、太平洋の地殻プレートがアジア大陸に沈み込む位置に南北に長く存し、四季の変化が顕著で、多雨な気候を持っていることから、自然災害面では世界でも有数の厳しい条件にさらされている。水害、台風に代表される風害、土砂崩れ地滑りなどの土砂災害、冬季の雪害、雪崩等、さらに地震による被害が著しい。

  このような状況を反映して、建築規制でもこのような外力に対する構造体の安全性について、種々の規定が設けられている。風圧や積雪荷重などが建築物に課せられる荷重として規定されており、建築物の設計に当たってはこれらの荷重の組み合わせにより生ずる荷重を、構造部材が適切に支えることが出来るかどうかを検証することとなっている。

2)地震力に対する構造安全規定の変遷
 建築構造の設計を行うに当たって特に重要なのは地震による外力である。通常他の外力は構造体に対して垂直にすなわち重力方向に働くので、その方向と建築構造物の組み立てられている方向が一致し、部材の大きさ等から安全性についての判断が働きやすいのに対して、地震の力は構造体に対して水平に働く力であり、しかも激しい振動を伴うものであることから一般的な力の働く方向とは全く異なる様相を有し、なかなか予測が難しいという特徴がある。このため、構造関係規定では地震力に対する検証方法の設定が重要であり、また、我が国の建築物ではしばしば地震による力に耐えることが他の外力に耐えることよりも難しいことから、設計が地震の耐震性で決まると言われている。従って、耐震基準は我が国の建築構造設計における中心課題となっている。耐震基準の推移を見ると、市街地建築物法以来、関東大震災等の経験を加え、その後も建築基準法において順次改正が行われてきた。さらにその間に発生した大規模な地震の教訓をもとに昭和56年に、大幅な改正がなされ、この改訂された耐震基準が現行基準となっている。

3)現行耐震規定
 現行耐震基準以前の耐震基準では通常建築物が経験する可能性の高い地震に対して、地震力を設定しその検証を行っているにすぎず、大規模な地震に対する二次検証は義務化されておらなかったため、十勝沖地震(1968)や宮城沖地震(1978)では、靱性の不足による建築物の被害や、ピロティ形式や偏心の著しい建築物に被害が顕著であった。これに対して、現行耐震基準では、検証を二段階に設定し、通常の地震時には構造体に何ら問題を生じさせず、ごくまれに発生する大規模な地震に対しては在館者の生命を脅かす程の破壊を引き起こさないことを構造強度のレベルとして求めている。そのため、荷重に各部材が耐えることの検証の他、地震力が建築物の一部に集中することなくバランス良く建築物全体で受け止められるかどうかの検証を行うとともに、高層建築については大規模地震時に想定される強度の地震力に対しても崩壊を防止できるだけの耐力があるかどうかを検証する。具体的には、通常の地震としては、地震力によって部材に発生する応力が許容応力度内に収まることを検証し、規模の大きな地震に対しては層間変形角、剛性率、偏心率、保有水平耐力の計算を行い検証することを求めている。また、構造計算による検証が難しい1,2階建ての在来木造建築については、仕様規定として地震力を担う壁量を、一定以上にすることように求めている。

 

4 耐震改修促進の必要性の顕在化
1)現行基準施行に伴う既存建築物対策  現行耐震基準の施行とあわせて、当然のことながら旧基準によって建築され、弱点を有している既存建築物対策の充実が必要となった。現行の耐震基準案が検討を進められるのと並行して、既存建築物の耐震診断及び改修についての検討も行われた。その成果は、現行耐震基準が施行される1981年に先立って、1977年に既存鉄筋コンクリート構造の耐震診断基準・耐震改修指針が発行され、引き続き鉄骨造(1979年)、木造(1979年)、鉄骨鉄筋コンクリート造(1986年)についても耐震診断基準・耐震改修指針が発行された。これらの基準・指針は、法的拘束力を持つものではなかったが、耐震診断・耐震改修については、現行耐震基準施行
後の1985年より、特定行政庁段階での既存建築物総合防災対策推進計画作成が指導されることとなり、そのための技術参照図書として活用されることになった。特に、大規模地震の発生が予測された東海地方においては、既存建築物の耐震診断・耐震改修が急務とされ、公的建築物を中心に約4千棟の耐震診断・耐震改修がこの基準・指針に沿って行われた。

 

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