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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
準リアルタイム迅速被害査定ツールとしてのハザス(HAZUS)の能力
 
米連邦緊急事態管理庁(FEMA)
被害軽減局(Mitigation Directorate)
上席地震学者(Senior Seismologist) スチュアート ニシェンコ(Stuart Nishenko)
 

要約
 地震発生直後の地震動データの伝送、収集システムは数多くの利点がある。まず、発生した災害の深刻さおよび範囲を把握することができる。次に、これは緊急対応人員が現場検証を促進し、被害、損害査定モデルに定量データを提供し、初期の予備調査の優先順位付けを行うための重要な情報を提供する。観測データがさらに入手可能となるので、この情報が今後の対応に対する意思決定の根拠となる。

 本紙は1999年10月16日のカリフォルニア州ヘクターマインで発生した7.2マグニチュードの地震で、FEMAの危険評価システムであるHAZUS(米国災害)がこのデータをどのように利用したかを説明している。HAZUSにより被害が迅速に評価され、必要な緊急対応の内容と範囲の評価のための重要な情報を提供する。HAZUSの分析結果が洗練されればされるほど、時宜を得た評価の正確度が向上する。

 こうしたプロセスに基づく3つのシミュレーション結果が得られた。まず、地震が発生した時点で、暫定的な震源の位置とマグニチュードが入手された。つづいて、マグニチュードが下方に修正された。そして、南カリフォルニアのいたるところに張り巡らされた地震波観測システムの観測値はもとより修正された情報に基づき近似的地震動地図が作成された。

この論文は3つのシナリオに対するHAZUSの被害予測を集約したもので、それらは、
・ シナリオ1:暫定的な震源の位置とマグニチュード(Ms=7.3)情報とHAZUSによる初期設定された破壊メカニズムと衝撃地域の物品明細表を加えて使用する。
・ シナリオ2:修正された震源の位置とマグニチュード(Ms=7.0)情報を使用し、最近接の断層(ブリオン断層)の破壊を仮定する。
・ シナリオ3:トライネット(TriNet)を用いた近似的地震動マップを、衝撃地域の改良型建物明細計画を加えて使用する。

 トライネットは地震研究、監視およびコンピュータ化された警報を行うための多機能地震ネットワークである。トライネットは南カリフォルニアの地震と地震動を継続的に監視する。そして迅速な地震時刻の予測、震央位置、地震強度、震源の深さ、推定あるいは原因となる断層、地震動地図、余震情報を提供する。シェイクマップ(ShakeMap)により地震動地図が作られ、地域規模の現場修正を行う単純化された地質分類計画に利用される。この計画は地球科学情報学会(GIS)のオーバーレイのセットとして入手でき、この計画は単純化された4次、3次、中生代(QTM)の組を含み、土壌、軟岩、硬岩に解釈される。QTM法は解像度、経験的データといった点では充分な詳細度はないが、第一次の現場修正の基礎として利用できる(ワルド他 1998年)。

 
 

序 論

HAZUSは州、地域、地方公共団体が地震被害軽減、緊急対応準備、行動と復旧を計画する場合、被害査定を行うものである。この方法はほとんど全ての建物の状況および多様な被害の形式を取り扱う。また、過去のいくつかの地震体験と専門家の判断により吟味されている(HAZUS、1999)。

HAZUSは図1に示したように、6つの相互依存したモジュールから構成されている。このモジュールによる研究方法では3水準の分析をおこなうことができる。それらは、HAZUSが所有する初期設定の国家データベースに基づく近似的結果、地域の地質および構造基盤の特徴の入力を用いた改良結果、ある特定地域向けに方法を特化する詳細な技術および地質情報入力に基づくより正確な結果である。

地震の位置と規模が与えられれば、HAZUSは地震動とその結果生じる構造基盤に対する物理的被害を評価する。これらの被害水準を用いて、HAZUSは機能損失はもとより、経済的、社会的損失を評価する。地震動データが得られる場合は,地球科学災害モジュール(図1を参照)は抜かされる。

HAZUSによる経済的損失は構造的および非構造的被害、移転費用、商業的在庫損失、資本に関連する損失、収入の損失、賃貸の損失を含む。HAZUSの社会的損失は被害者(重大度の4水準)、生活手段を失った所帯、短期的に必要な避難場所の観点から定量化される。

nishenko

図1. HAZUS地震被害査定−手法の構成種目

        
 

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