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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
ナウキャスト地震情報への取り組みとその活用可能性について
 

3. ナウキャスト地震情報の導入に向けて
3.1. アンケート調査の実施
 
気象庁では、国土庁及び消防庁と協力し、ナウキャスト地震情報の活用可能性や情報自体に対する需要、具体的な活用方策のアイディア等について、アンケート調査を行い、首都圏、阪神地区及び静岡県下の企業・団体を中心に利用者側の意向を把握することを試みた。これによって得られた結論は,以下のように整理される。
・ナウキャスト地震情報を活用したい、あるいは活用可能と考える人は多い。
・具体的な活用アイディアを有する利用者は特定の業種に集中せず、多方面にわたって存在する。
・実際に活用するかどうかは、「条件次第」であり、その条件としては、「猶予時間」「情報の精度」「コスト」の3つのいずれもが重要と認識されており、これらに活用の際のリスク(損失)を考慮に入れて,最終的な活用の可否が判断される。

 上記の最後の結論において,例えば化学プラント等の生産施設においてナウキャスト地震情報を活用して材料供給や生産作業自体を停止(火を落とす等の行動)し、火災の発生防止や人的被害の防止を考える場合,情報に基づき実施した対応から得られる効果(導入により得られる便益)と対応システムの構築・運営コスト,空振りの際の経済的損失等、トータルのコストについて比較・検討が必要である。

 ナウキャスト地震情報の「猶予時間の長短」「情報の精度の高低」「コストの大小」と「活用の可否」との関係を整理し,上記の3つの要件がどのような場合に利用者がナウキャスト地震情報を活用する可能性があるのかを明らかにするため,表1に示すマトリックスを作成した。

 なお,「猶予時間」「情報の精度」「コスト」に対する要求レベルは活用主体により様々であり,今後個々の分野ごとのより詳細な検討が必要である。

3.2. 今後の課題
 
以上の検討等から,ナウキャスト地震情報の活用を実現するため,今後検討を進めるべき課題には以下のようなものが考えられる。

-1-ナウキャスト地震情報の普及・啓発活動の推進
 ナウキャスト地震情報の認知度を広く向上させるとともに,地震波の伝播と情報発信のタイミングやその精度との関係等ナウキャスト地震情報についての理解を深めることが重要である。このため,猶予時間を実感するデモソフト等疑似体験を可能とするような啓発手段を開発し,企業等の業務担当者だけではなく,理科・防災教育の場を活用する等,一般へも普及・啓発活動をより充実させていくことが必要である。

-2-活用方策の具体的検討とナウキャスト地震情報に対する要件の明確化
 活用方策をより個別的・具体的に検討し,必要なハードウェア・ソフトウェア・コスト,活用による損失・効果等を明らかにした上で導入の可能性を評価するとともに,それらを踏え、利用者が必要とする情報の形態等ナウキャスト地震情報に対する要件をより明確にしていく必要がある。

  なお、活用方策の具体的検討においては、地方公共団体や一般家庭、個人等様々な立場における活用アイディアも対象とする必要が
ある。

-3-ナウキャスト地震情報の高度化についての検討
 気象庁において、地震観測ネットワークと震源及び活用地点の地理的位置関係を種々変化させたケーススタディを十分に実施し、その精度と発表までの所要時間等の関係を明確にしておくことが重要である。また、活用方策の側から明らかにされる要件などをも勘案し、さらなる高精度化、迅速化といった情報の高度化に関して検討を進めていく必要がある。

-4-公的な導入促進施策の検討
 各ユーザが情報活用の有効性を理解し自力でシステムなどの開発を実施することを待つだけでなく、運用に係る法的な整備等の公的なバックアップ等、企業、団体等がナウキャスト地震情報の活用システムの導入を促進する施策について今後検討していく必要がある。

 今後、気象庁では、これらの課題を踏まえ、ナウキャスト地震情報の活用方策をより個別的、具体的に検討し、観測システム、処理システム、情報伝達及び受信システムを含め、ナウキャスト地震情報による発災前対応の実用化に向けた調査・検討を進めていくこととしている。

 
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図1 図2
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表1
 

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