防災用語1/防災用語2
地震の名称
被害などを伴う地震が発生すると、気象庁は震源域の地名などを冠して地震の名前を付ける。「北海道南西沖地震」「長野県西部地震」「兵庫県南部地震」などがそれである。「東海地震」は、まだ地震が発生しないのに名称が付けられた過去にないケースであった。
なお「神奈川県西部地震」という名前も発生していないのに付けられているが、こちらは震源が特定できていないので実際の地震が発生した際にこの名称になるかどうかは判らないといえる。「東海地震」の方はおそらく発生したときもこの名称となるのであろう。
東海地震
駿河湾から静岡県付近を震源に発生が予測されている大規模地震。四国沖から遠州灘にかけて百数十年ごとにマグニチュード8クラスの大規模な地震が起きており、この地震は四国沖から熊野灘、遠州灘など全部の領域が同時に地震を起こしたり、時には領域を分割して地震を起こして来た。1944年に熊野灘で東南海地震が、 1946年に南海地震が発生し、これらの東領域が未破壊として残り、遠州灘に地震の可能性があるとされていた。1976年、1854年の安政地震の新たな古文書が清水市で見つかり、地震の震源が駿河湾内にまで及んでいた可能性があり、それ以降駿河湾を震源とする大規模な地震が発生しておらず、歪みが蓄積しているとの見解が示された。東海地震説がこれである。
大規模地震対策特別措置法
大規模な地震の発生前にその予兆が出現、もしくは発生が予知された場合に備えて、国や地方自治体、企業、事業所などがとるべき対策を定めた法律。
事前対策として、総理大臣は大規模地震発生の際に大きな被害が予想される地域を中央防災会議に諮問し、関係都道府県知事の意見を聞いた上で「地震防災対策強化地域」に指定する。強化地域では各種の観測の強化を図らなければならない。
地震防災対策強化地域
大規模地震対策特別措置法に基づいて、東海地震に備えるため静岡、神奈川、山梨、長野、愛知、岐阜の6県167市町村が地震防災対策強化地域に指定されている。指定されているのは東海地震が起きると震度6弱相当以上の揺れになると推定される地域である。
強化地域に指定されたところでは東海地震に備えて、「地震防災計画」を策定しなければならない。「地震防災計画」には、「地震防災基本計画」、「地震防災強化計画」、「地震防災応急計画」の3種類がある。
地震防災基本計画
国の中央防災会議が作成する計画を「地震防災基本計画」という。「地震防災基本計画」は、警戒宣言が出された際に国がとるべき地震防災に関する基本計画、地震防災強化計画および地震防災応急計画の基本となる事項を定めている。
地震防災強化計画
「地震防災強化計画」は、国の各省庁、JR、NTT、NHK、日赤などの指定公共機関や、地方公共団体がつくる計画。
地震防災応急計画
「地震防災応急計画」は、強化地域内の学校、病院、デパート、ホテル、劇場などの不特定多数が出入りする施設や石油、火薬などを製造したり取り扱う施設、私鉄などの運送業などが警戒宣言が出た際に実施する防災措置などを具体的に定めるもの。これら各事業者は計画を作成し届け出ることが義務づけられている。
地震防災対策強化地域判定会
東海地震の観測網に、定められた基準を超える異常が観測されるなどした時、地震発生の有無を検討するため招集し開催される地震学者ら6人による委員会。判定会の判定結果は気象庁長官に報告される。
警戒宣言
判定会での東海地震発生のおそれありとの判定結果を受けて、気象庁長官は総理大臣にその旨を報告、総理大臣は閣議で了承をとった上、警戒宣言を発する。警戒宣言が出されると、国には「地震防災警戒本部」が設置され万全の防災対策がとられるのをはじめ、県、市町村、住民も直前の防災対策に取り組むことになる。
警戒宣言に伴う規制
警戒宣言が出されると強化地域内では交通など様々な規制が行われる。交通規制は必要物資の緊急輸送や避難の円滑な実施などのために行われるもので、高速道路の閉鎖、JRや私鉄の電車、バス、定期航路の船舶の運休などが実施される。また学校の休校、デパートなどの閉店など様々な規制が行われる。
災害対策基本法
伊勢湾台風による大被害が発生したことを契機に、従来災害要因別に行われていた防災行政体制の整備を進めようと、1961年(昭和36年)「災害対策基本法」が公布された。
「災害対策基本法」は災害全般にわたり施策の基本の確立を行うことにしている。
地震調査研究推進本部
平成7年に施行された「地震防災対策特別措置法」に基づいて、従来の地震予知推進本部に代わって、地震に関する調査研究を推進するため設置された。
推進本部には、施策の立案、調整、計画の策定、広報などを行う政策委員会と、地震に関する調査結果などを総合的に評価する地震調査委員会の2つの委員会がある。
地震予知連絡会
地震予知計画に加わっている国土地理院や気象庁などの官庁、国立大学などの専門家が最新の観測資料を持ち寄って検討する会合。国土地理院長の私的諮問機関。1969年に発足した。年4回の会合が開かれデータの検討などが行われている。
地震と震災
断層の活動などにより地面が揺れる現象そのものを「地震」。地震発生に伴って火災や建物倒壊など地震の揺れによって様々な災害が起きることを「震災」と呼ぶ。「地震」を避けるわけにはいかないが、「震災」は万全の防災対策で防いだり、少なくしたり出来る。
地震活動の空白域
地震活動の活発な地域の中に、地震があまり起きない静穏化した地域が存在することがある。こうした地域はもともと地震を引き起こさない地域であるか、やがて起きる地震に向けてエネルギーを貯めている地域の可能性がある。駿河湾内やその西岸付近は地震活動が比較的少なく、次の東海地震に向けて地震エネルギーを蓄積している場所とされ、地震活動の推移が注目されている。
震央 震源域
地震が起き始めた地点を震央という。ある場所で始まった地震は破壊が広がって行きやがて止まる。破壊した部分は「面」となるので震源域と呼ぶ。「地震の震源域は東西○キロ、南北○キロ」などの言い方をする。地震は地中の断層がずれ動いて起きるものだが、震源域とは地震の時にずれ動いた断層の範囲とほぼ同じである。
震度とマグニチュード
地震が起きた時、テレビやラジオで「震度6弱、マグニチュードは7.0」などと速報される。震度は地震の「場所ごとの揺れ」のこと。マグニチュードはその地震の「規模」を表す指標。
マグニチュードが大きくても震源から遠ければ震度は小さい。反対にマグニチュードはさほど大きくなくとも震源の真上ならば震度は大きくなる。
震度は計測震度計によって自動的に計られる。震度の階級を「震度階」といい、日本の震度階は国際的な基準とは異なり、身体に感じない震度0から1,2,3と順に大きくなり、震度5と震度6は弱と強の2段階に分かれ、最大級の震度7までの10段階が設定されている。
一方、マグニチュードは、0.2増すとエネルギーはほぼ2倍になり、マグニチュードが1大きくなると地震の大きさは約32倍になる。つまりマグニチュード8の地震はマグニチュード6の地震の1000回分に相当することになる。
気象庁は地震発生直後に地震動の揺れ幅の一番大きな部分と地震の破壊が始まった場所からの距離を使ってマグニチュードを計算し発表する。気象庁のマグニチュードは、地震発生直後、防災に供する目的で出される暫定的な値だが、気象庁以外にも大学など研究機関が算出するマグニチュードもある。これらは気象庁とは異なる計算式を使うので数値が異なることがある。異なるマグニチュードの発表で、事情を知らない利用者の間では困惑や混乱が生じることもある。
大地震、中地震、微小地震、極微小地震
地震学上では、地震をマグニチュードで分類している。大地震はマグニチュード7以上と呼び、中地震がマグニチュード7から5、小地震はマグニチュード5から3、微小地震マグニチュード3から1、極微小地震マグニチュード1以下と分類する。
なお巨大地震は大体マグニチュード8弱より大きな地震を指すようであるが、一部マスコミではそれより小さな地震にも使っている。