特集 防災推進国民会議・防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)のこれまでの歩みと今後



 内閣府、防災推進国民会議及び防災推進協議会の主催で、国民の防災意識の向上を図ることを目指し、毎年開催されている防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)。その第1回が平成28年(2016年)に開催されており、令和8年(2026年)に開催される本大会は11回目となります。本特集では防災推進国民大会(以下:ぼうさいこくたい)開催に至った経緯や目指すところ、これまでの歩みを紹介し、その成果と今後を考えます。

防災推進国民会議の発足

 平成27年(2015年)3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議において、「仙台防災枠組2015-2030」が採択されました。その中に指導原則の一つとして、災害リスク削減のために各国政府が市民社会、ボランティア、地域団体、学術界、企業、メディアなどのステークホルダーと責任を共有しながら行動をとる旨が記載されています。

 この原則に基づき、国民の防災に関する意識向上に関し、広く各界各層との情報及び意見の交換並びにその他の必要な連携を図り、中央防災会議と協力しつつ国民の防災に関する意識向上を図るため、地方六団体、経済界、教育界、医療・福祉関係などの各界各層の有識者で構成される「防災推進国民会議」が発足、同年12月に第1回全体会議が開催され、毎年末に中央防災会議会長(内閣総理大臣)へ各界の防災の取組を報告する全体会議を開催することや、防災に関する統一的な普及啓発資料の作成・普及、ウェブサイト「TEAM防災ジャパン」を通じた情報発信、さらには全国規模の国民の防災意識の醸成・向上を図るための事業への協力などが活動方針として示されました。

 そして「全国規模の国民の防災意識の醸成・向上を図るための事業」として翌年から開催されるようになったのが「ぼうさいこくたい」です。

東京で第1回大会、仙台で第2回大会を開催

 「ぼうさいこくたい」の第1回大会は、平成28年(2016年)8月に東京大学本郷キャンパスで開催されました。「大規模災害への備え~過去に学び未来を拓く~」をテーマに、61団体による82催事が出展され、約1万2000人の来場者を集めました。来場者の約半数が防災関係者以外の者であり、大会は幅広い層へのアピールに貢献することとなりました。

第1回東京大会メインフォーラムの様子(内閣府ウェブサイトより)

第1回東京大会メインフォーラムの様子(内閣府ウェブサイトより)

 第2回大会は平成29年(2017年)11月に宮城県仙台市の仙台国際センターで、「大規模災害への備え~みんなの連携が力になる防災~」をテーマに開催されました。平成23年(2011年)3月に東日本大震災を経験し、防災に対する先進性が高い東北地方での開催だったことに加え、同時期に同会場にて3つの防災に関する催事(ぼうさいこくたい、世界防災フォーラム、2017防災産業展in仙台)が行われることもあり、産官学民の垣根を越え、防災に関する様々な知見が集まる場となりました。

 クロージングセッションでは「仙台ぼうさいこくたい憲章」が取りまとめられ、将来の発生が予想される大規模災害に対して産官学民が連携して対応することの重要性、また、公助による取組に加えて、更なる自助・共助による取組の必要性を共有しました。大会期間中の来場者は約1万人、うち84%が防災関係の仕事や研究を行っている方以外であり、前回大会以上に一般来場者が増えたことも特徴的でした。

第2回仙台大会のセッションの様子(2017年11月26日撮影)

第2回仙台大会のセッションの様子(2017年11月26日撮影)

連携の重要性、そしてコロナ禍の第5回大会

 第3回大会は平成30年(2018年)10月に、東京ビッグサイトと東京臨海広域防災公園で開催されました。テーマは「大規模災害に備える~みんなの連携の輪を地域で強くする~」で、前回大会同様に自助・共助や地域における防災力の向上の取組が強調されました。

 クロージングセッションでは「自助・共助」、「多様な主体の連携」など、社会の全構成員の参画による具体的行動を起こすことの重要性が確認されました。大会の来場者は約1万2000人で、今後の防災を担う若い世代の活躍が多く見られたことも今大会の特徴でした。

 第4回大会は令和元年(2019年)10月に愛知県名古屋市ささしまライブエリアで、「大規模災害に備える ー まなぶ、つながる、つよくなる ー『防災を、もっと日常に』」をテーマに開催されました。おりしも令和元年東日本台風(台風第19号)により東日本の広域で被害が発生した直後の開催であり、恒例となっている防災担当大臣による挨拶も災害対応のためビデオメッセージによるものとなりました。

 大会来場者は約1万5000人を数え、自助・共助の推進により地域全体で防災意識を高め、あらゆる自然災害に備える「防災意識社会」を構築することの重要性が共有されたことは大きな成果となりました。

第4回愛知大会のワークショップの様子(内閣府ウェブサイトより)

第4回愛知大会のワークショップの様子(内閣府ウェブサイトより)

 第5回大会は令和2年(2020年)10月、コロナ禍の中での開催となりました。状況を鑑みて、当初開催を予定していた広島からの発信に重きを置きつつ、オンラインでの実施となりました。

 テーマは「頻発化する大規模災害に備える~『みんなで減災』助け合いをひろげんさい~」、主な発信地となった広島は平成30年7月豪雨災害を経験しており、課題や教訓などを全国に発信する場となりました。各セッションだけでなく、ワークショップ等もWeb会議システムを活用して実施されました。オンライン開催により遠方からも気軽に参加することが可能であることから、従来とは異なる新たな「つながり」の場ともなったことが特徴的でした。参加者はオンライン視聴ながら約1万5000人にのぼりました。

第6回~第8回は過去の大災害の継承がテーマに

 第6回大会は東日本大震災から10年の節目を迎える岩手県釜石市で、令和3年(2021年)11月に現地+オンラインのハイブリッド方式で開催されました。テーマは「〜震災から10年〜つながりが創る復興と防災力」で、通常のセッションに加えて、震災遺構の視察も含めた「震災復興エクスカーション」も企画されました。

 クロージングセッションでは震災を語り継ぐ取組などの紹介や、釜石からの感謝のメッセージが伝えられ、「つながり」の力が強調されました。東日本大震災から10年を経た被災地の現在の姿を発信するとともに、震災の経験や未来の命を守る教訓の継承の必要性が共有されたことも特徴的でした。

 第7回大会は令和4年(2022年)10月に、兵庫県神戸市で人と防災未来センターをメイン会場として開催されました。27年前の阪神・淡路大震災の被災地の開催でもあり、テーマは「未来につなぐ災害の経験と教訓~忘れない、伝える、活かす、備える~」と、前年大会で共有された経験や教訓の継承を引き継ぐ形となりました。

 人と防災未来センターが中心となり、地元有志と開催した会議から生まれた共同企画の出展がなされるなど、地域が大会に深くかかわったことに加え、阪神・淡路大震災当時の映像と現在の復興状況を自身の目で確かめながら震災の教訓を学べるデジタルスタンプラリーなども実施されるなど新たな試みも行われ、前大会同様のハイブリッド開催ながら2日間で約1万2000人の来場者を集めました。

第6回釜石大会のエクスカーションの様子(内閣府ウェブサイトより)

第6回釜石大会のエクスカーションの様子(内閣府ウェブサイトより)

 第8回大会は令和5年(2023年)9月に神奈川県で横浜国立大学を会場に開催されました。関東大震災から100年目という節目の年であることから、その震源地でもある神奈川での開催で、テーマも100年前の大震災の記憶の継承を災害への備えにつなげる意味を込めた「次の100年への備え~過去に学び、次世代へつなぐ~」に設定されました。

 ハイレベルセッションでは、「次の100年に向けて、来るべき巨大地震に備えるため、それぞれの立場からどう取り組むか」をテーマに議論が交わされたほか、クロージングセッションでは「次世代へつなぐ」にフォーカスして、大学の研究室やサークルに所属する学生が今後の防災への思いやメッセージを発信しました。出展団体数は約400団体、来場者は2日間で約1万6000人、オンライン視聴数は約1万1000回といずれも過去最多を記録しました。

第8回横浜大会のハイレベルセッションの様子(内閣府ウェブサイトより)

第8回横浜大会のハイレベルセッションの様子(内閣府ウェブサイトより)

熊本、新潟、そして鳥取へとつなぐ

 第9回大会は令和6年(2024年)10月に熊本で開催されました。熊本県は8年前に平成28年熊本地震、4年前に令和2年7月豪雨を経験しており、災害の経験や教訓を多くの人に、そして次世代につなげる意味から「復興への希望を、熊本から全国へ~伝えるばい熊本!がんばるばい日本!~」がテーマとなりました。

 会場が熊本市の中心市街地だったこともあり、防災関係者以外も多く訪れ、来場者は過去最高の約1万7000人を数えました。ハイレベルセッションでは「熊本地震とその後の復興と災害への備え」をテーマに災害の振り返りとその後の創造的復興の取組が紹介され、クロージングセッションでは地元熊本県の高校生から未来へのメッセージが発表されました。

第9回熊本大会の会場の一つである熊本城ホールでのブース展示の様子(内閣府ウェブサイトより)

第9回熊本大会の会場の一つである熊本城ホールでのブース展示の様子(内閣府ウェブサイトより)

 第10回大会は令和7年(2025年)9月に新潟市の朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで開催されました。中越地震をはじめとした様々な新潟県の災害での経験や教訓と、全国から集まる人々の知恵や知識を織り交ぜて次世代へ伝えていくことで、災害への備えにつなげる意味から、テーマは「語り合い・支え合い~新潟からオールジャパンで進める防災・減災」となりました。

 クロージングセッションでは、過去に災害救助法の適用が最も多い新潟県で、多様な災害の経験を共有する場として来場者、出展者の様々な語り合いが行われたこと、辛い経験を思い出した人や今も災害やその記憶と闘っている人もいる中で、お互いの経験を尊重し、支え合うことができたことは大きな成果であると総括されました。

第10回新潟大会での展示会場の様子(内閣府ウェブサイトより)

第10回新潟大会での展示会場の様子(内閣府ウェブサイトより)

 第11回大会は令和8年(2026年)10月に鳥取県で開催されることが決まっています。大会テーマは「共に考え・備え・守る ~『支え愛』で守る命と暮らし~」で、前回大会から「支え合い」が継承されています。

 「ぼうさいこくたい」はこの10年、「仙台防災枠組2015-2030」の指導原則にある、「国と様々なステークホルダーが防災・減災への取組を共有する」うえで重要な役割を果たしてきました。自助・共助の重要性は多くの国民に浸透し、過去の災害の経験・教訓の継承についても、各地で様々な取組が行われるようになりました。防災意識の醸成は確実に進みつつあります。

 一方で、この10年の間にも、日本列島は多くの自然災害に見舞われています。過去の災害を知り、適切に備え(自助)、いざという時には支え合う(共助)。防災の取組に終わりはありません。災害リスクの更なる削減に向けて、ぼうさいこくたいはこれからも続いていきます。

 防災推進国民会議の将来像について、同会議の清家篤議長は「様々な技術進歩などにより防災・減災のあり方も劇的に進化しています。ただ、最終的に生命を守るのは一人ひとりの行動だということに変わりはありません。日々進化する防災の姿を国民にしっかりとお伝えし、それを行動につなげ、防災・減災の実効性を高めていくことができるか、このことに尽きると思っています」と語り、国民に向けて「防災はもしもの話ではなく、日常の習慣として根づいていくよう願っています」と呼びかけています。

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