平成23年(2011年)・奈良県 紀伊半島大水害からの復興
平成23年(2011年)9月3日に高知県に上陸した台風12号による大雨により、紀伊半島に位置する奈良県・和歌山県・三重県では河川氾濫や土砂災害が相次ぎました。中でも山腹を深くまで抉られる深層崩壊の多発により、大規模な河道閉塞や道路の寸断が発生、紀伊半島大水害と呼ばれる記録的な災害となりました。
奈良県十津川村では、熊野川流域を中心に土砂災害や河道閉塞による河床の上昇などに起因する甚大な被害を記録しました。特に深刻だったのが、道路の寸断による集落の孤立で、村内だけで10カ所・185名の孤立が発生しました(国土交通省資料より)。
十津川村を南北に縦断する国道168号は村の主要幹線道路ながら狭隘箇所も多く、災害時にはたびたび寸断されることがありました。こうした脆弱性の解消のため、大規模災害時の緊急輸送道路としての役割を担う地域高規格道路「五條新宮道路」の整備が進められています。紀伊半島大水害後も工事は続いており、令和元年(2019年)には十津川温泉北トンネル・今戸高架橋が、令和6年(2024年)には五條市大塔の新阪本トンネル・阪本大橋がそれぞれ開通しました。孤立を経験した十津川村にとって「命の道」となる「五條新宮道路」の早期整備は地域の悲願でもあります。
孤立対策は道路だけではありません。十津川村では災害後に高森地区に整備された復興公営住宅に隣接して、独居高齢者を対象に畑や交流スペースを備えた高齢者向け住宅「高森のいえ」を整備し、「お互いの助け合い、支え合いによる暮らし」の実現による孤立解消にも取り組んでいます。


十津川村長殿地区周辺の被災前(1998年)と被災後(2011年9月7日)に撮影された航空写真の比較。崩壊斜面の規模や河川の増水の様子がわかる(地理院地図より)

令和元年(2019年)開通の今戸高架橋と十津川温泉北トンネル(令和8年(2026年)6月撮影)

「お互いの助け合い、支え合いによる暮らし」で孤立解消を実現する「高森のいえ」(令和8年(2026年)6月撮影)
| 災害は熊野川流域の五條市大塔町にも大きな爪痕を残しました。清水地区では大規模な斜面崩壊が発生し、約160万m3の土砂が流出、熊野川対岸の宇井地区まで到達して死者8名、行方不明者3名、全壊家屋11棟という甚大な被害を記録しました。現場はその後斜面抑止工や護岸整備などが施されていますが、現在でもその崩壊の大きさを対岸の広場から見学することが可能です。広場には慰霊碑が建つほか、広場上方の斜面には増水した熊野川の水位を後世に伝えるための石碑が設けられており、当時の水位の高さに驚かされます。 | |
![]() ![]() ▲慰霊碑が建てられた五條市大塔町宇井地区の広場からは崩壊斜面の跡を見ることが可能(いずれも令和8年(2026年)6月撮影) |
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