防災の動き



首都直下地震緊急対策推進基本計画の変更について
内閣府(防災担当)防災計画担当

1 はじめに

 政府では、令和5年(2023年)12月に中央防災会議防災対策実行会議の下に「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、被害想定の見直しや新たな防災対策について検討を進めてきました。令和7年(2025年)12月にとりまとめた同ワーキンググループの報告書を踏まえ、令和8年(2026年)6月12日に閣議決定された新たな「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(以下「基本計画」という。)について、本稿でその概要を紹介します。

2 首都直下地震の被害想定について

 東京圏及びその周辺地域はM7クラスの地震がいつどこで発生してもおかしくなく、あらかじめ発生場所を特定することもできないとされています。

 首都直下地震対策検討ワーキンググループでは、発生可能性や首都中枢機能への影響等を考慮し、被害が甚大となる「都心南部直下地震」を対象に、被害想定をまとめています(図1)

図1 新たな首都直下地震の被害想定について

図1 新たな首都直下地震の被害想定について

3 新たな基本計画の概要について

 新たな基本計画では、減災目標として、都心南部直下地震で想定される死者数及び建築物の全壊・焼失棟数をそれぞれ今後10年間で半減以上させることを目指すこととしており、この減災目標を達成するための様々な施策について、189個の具体目標を掲げています(図2)

 東京圏には、首都中枢機能が極めて高度に集積し、かつ、我が国の人口の約3割が居住していることから、首都直下地震対策においては「首都中枢機能の確保」、「膨大な人的・物的被害への対応強化」の2つの観点が重要です。くわえて、被災後の「迅速な復興、より良い復興」に向けた事前の備えが重要です。その前提として、国民、企業等、地域、行政が一丸となって首都直下地震を乗り越えるべく、首都直下地震を「自分ごと」として捉えて平時からの防災対策を進める(防災意識の醸成)とともに、社会全体での体制の構築に取り組んでいく必要があります。

図2 首都直下地震緊急対策推進基本計画の概要

図2 首都直下地震緊急対策推進基本計画の概要

⑴ 防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築

 膨大な量の被害に対しては、行政による公助だけでは限界があるため、自然災害に対して、「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」という考え方への転換が必要です。このような考え方に転換するため、東京圏及びその周辺地域で生活をする各人が、被災時の具体的なイメージを持ちながら、平時から防災対策に取り組む必要があり、住宅の耐震化、家具の固定、感震ブレーカーの設置、食料等の備蓄(最低でも3日分、可能な限り1週間分程度)といった各個人の防災対策について、国及び地方公共団体が普及啓発を図ることとしています。

 また、各主体単独の対応には限界があることから、あらゆる関係者の力を結集し、「総合的な防災力の向上に資する多様な連携」を進め、防災対策に取り組む必要があります。

⑵ 首都中枢機能の継続性の確保

 首都中枢機能の継続性の確保のためには、政治、行政、経済等の各中枢機能を担う首都中枢機関やこれを支えるライフライン事業者及びインフラ事業者において、首都直下地震発生時においてもそれらの機能を途絶させることがないよう、業務継続体制の構築、ライフライン及びインフラの耐震化、多重化等の徹底的な事前防災に取り組む必要があり、「各府省等の業務継続計画の見直しの実施率」や「企業のBCPの策定完了率」等を具体目標に掲げています。

 さらに、東京圏において首都中枢機能の維持が困難となる最悪の事態も想定し、首都中枢機能の全部又は一部を維持することが困難となった場合の一時的な代替拠点の確保についてあらかじめ検討することとしています。

⑶ 膨大な人的・物的被害への対応強化

 首都直下地震が発生した場合の膨大な人的・物的被害や経済被害を減少させるため、計画的かつ早急な予防対策を推進するとともに、一人でも多くの命を救うための迅速かつ円滑な災害応急対策を講ずるための備えを図ることとしており、「住宅の耐震化」や「ライフラインやインフラの強靱化」等に係る具体目標を設定しています。

 一方で、こうした事前対策を徹底的に取り組んでもなお発生する人的・物的被害に対しては、限られた人的・物的リソースの中で最大限に効率的かつ効果的に対応するための「災害対応力の強化」と、真に支援が必要なところに災害対応リソースを集中するための「災害対応ニーズの抑制と役割の分担」の両面から対応することが肝要であり、被災地内での災害対応ニーズを抑制するための取組として、在宅避難、広域的避難、マンション防災(防災訓練の実施、防災備蓄資機材の確保等)等を掲げています。

⑷ 迅速な復興・より良い復興への備え

 東京は、日本の政治・経済・文化の中心であり、首都直下地震からの復興が長期化すれば、国際金融都市等の国際的な役割を果たせなくなるほか、東京の国際競争力の低下が我が国全体の国際競争力の低下をも招くおそれがあることから、迅速な復興が必要です。迅速な復興・より良い復興に向けては事前の備えが不可欠であり、取り組むべき復興施策や方向性、優先順位、復興手順等をあらかじめ検討し、事前復興計画の策定を進めること、復興事業等の迅速・円滑な実施に向け、地籍調査を進めることを掲げています。

4 おわりに

 減災目標の達成に向けて、国は、各分野の専門家の意見を聞きながら、具体目標又は定性的な目標の進捗の把握や課題の共有等のフォローアップを毎年実施することとしています。

 「国民、企業等、地域、行政が共に首都直下地震に立ち向かう」姿が実現するよう、政府として取り組んでまいります。

文献
首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書
▶https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/index.html 首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書QRコード
新たな『首都直下地震緊急対策推進基本計画』
▶https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/index.html 新たな首都直下地震緊急対策推進基本計画QRコード

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.