防災の動き



非常時におけるこども・若者の意見反映について
こども家庭庁長官官房参事官(総合政策担当)付こども意見係

1 はじめに

 令和5年に施行されたこども基本法では、全てのこどもについて、年齢や発達に応じた意見を表明する機会が確保されることや、その意見が尊重されることが基本理念として謳われています。また、国や地方公共団体は、こども施策の策定・実施・評価をする際に、こどもや若者、子育て当事者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずることが義務付けられています。つまり、こどもや若者に関連する施策を進めるときには、その声を聴いて反映することが大切であり、それが行政の義務にもなっているのです。

 こども家庭庁では、こうした考え方を踏まえ、令和6年(2024年)3月に「こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン」を作成し、各府省庁や自治体におけるこども・若者の意見反映の取組の推進を図ってきました。

 一方で、これまで自然災害などの非常時における意見反映については、十分に整理されていませんでした。そこで、今後の災害発生への備えや、発災後の対応・復旧・復興の過程でも、こども・若者の意見やニーズを適切に把握し、施策に反映できるようにするため、令和7年度に調査研究を実施し、令和8年5月に改定したガイドライン第2版では、新たに「非常時における意見反映の取組の在り方」を第4章として追加しました。あわせて、行政職員の方々が実際に意見反映に取り組む際に参照できるよう、ポイントや事例をまとめた手引きも作成しました。また、令和8年(2026年)7月に修正された防災基本計画においても、防災まちづくりをはじめとする防災対策、災害発生時や復旧・復興において、こども・若者の意見やニーズを踏まえた対策を行うよう示されています。

2 調査研究の実施

 ガイドラインの改定に当たって実施した「非常時におけるこども・若者の意見反映等の在り方に関する調査研究」では、被災経験のある国内の自治体を対象にアンケート調査やヒアリング調査等を行うとともに、海外で発生した非常事態についても、文献調査やヒアリング調査を実施しました。

 また、有識者、自治体関係者、NGO関係者に加え、若者も委員として参加する有識者会議を開催しました。さらに、被災経験のあるこどもや若者等による「こども・若者分科会」を開催し、被災当時の経験や調査結果について意見交換を行いました。

 これらの調査や会議、こども・若者分科会で寄せられた意見や提案を、ガイドラインの改定に活かしています(写真)

写真 輪島市で実施した「こども・若者分科会」の様子(令和7年(2025年)2月11日撮影)

写真 輪島市で実施した「こども・若者分科会」の様子(令和7年(2025年)2月11日撮影)

3 非常時の意見反映の重要性と取組例

 非常時は、事態の緊急性や様々な制約から、おとな中心で意思決定が進みがちです。しかし非常時には、平時からの課題の顕在化に加え、こども・若者特有の困難やニーズが生まれ、それは刻々と変化するため、その声を聴く必要性はむしろ高まります。

 一方で、非常時には、こどもや若者の意見を聴き、支援に生かすための人員を確保することが難しい、安心して過ごせる居場所が失われることで思いや考えを話しにくくなる、平時に整えていた仕組みがうまく機能しない、といった課題も生じます。このため、平時、災害発生直後、復旧・復興期といったそれぞれの段階ごとに、意見を聴く目的や内容、方法を理解し、できることから取り組んでいくことが重要です。

 例えば、発災後には、避難所での生活やルールについて、支援の中で意見を聴くことが考えられます。その際は、一人ひとりの状況に配慮し、無理に意見を引き出すのではなく、安心して話せる場や環境を整え、話された内容をしっかり受け止めることが大切です。また、こどもや若者ができることをおとなと一緒に取り組むことは、自身が「役に立っている」という実感につながるとも言われています。

4 おわりに

 調査研究を通じて、有識者、災害経験者、支援団体等、様々な立場の方々が共通して強調していたのは、「非常時にできるのは、平時からできていることだけ」であるということです。非常時にこども・若者の意見やニーズを適切に汲み取るためには、平時からこども・若者の意見反映に継続的に取り組むことが欠かせません(図)。おとな側の体制づくりも大切ですが、当事者であるこどもや若者が普段から意見を伝えることに慣れ、安心して話せる環境や仕組みを整えておくことが重要です。

図 被災経験のあるこども・若者へのアンケート結果(平時の意見反映の有無と災害後の意見反映の有無の関係、n=2,056人)

 こども家庭庁では、ガイドライン等の普及啓発を通じて、国や自治体における非常時のこども・若者の意見反映の取組推進を図ってまいります。いざというときに迅速に意見が反映できるよう、ガイドラインを踏まえた取組が広がり、国や自治体の職員をはじめ、地域のおとなやこども・若者一人ひとりに定着していくことを期待しています。

文献
こども家庭庁「非常時におけるこども・若者の意見反映等の在り方に関する調査研究」
▶https://www.cfa.go.jp/policies/iken/chosa/emergency-guideline こども家庭庁「非常時におけるこども・若者の意見反映等の在り方に関する調査研究」QRコード
こども家庭庁「災害時のこどもの居場所づくりについて」
▶https://www.cfa.go.jp/policies/ibasho/saigaiji こども家庭庁「災害時のこどもの居場所づくりについて」QRコード

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