全国初!250人規模の避難所宿泊訓練
奈良県生駒市危機管理課
1 はじめに
令和6年能登半島地震では、避難所での生活環境の悪化が深刻な問題となっていました。そこで、避難所環境の問題点を洗い出すとともに、各自が避難所運営の理解を深め、備蓄品を見直すため、4年に1度の本市「総合防災訓練」の開催年である令和7年度に避難所宿泊訓練を実施することとなりました。
2 訓練概要
令和7年(2025年)11月1日・2日、指定避難所の一つであるスポーツ施設「生駒市体育協会 滝寺S.C.」にて、断水・停電状態を想定した宿泊を伴う訓練を実施しました。公募による市内の0歳から80歳代までの一般参加者124名や、市の「避難所自動参集職員」「避難所担当職員」等、約50名を含む計254名が参加しました。今回は、市職員が見本となり、避難所運営のための8つの運営係を担当しました。
訓練は、下のタイムスケジュールに沿って実施しました。初日は16時から受付を開始し、翌日の8時半に退所手続きをして終了となりました。

避難所宿泊訓練 タイムスケジュール
3 新たな取組
今回新たに行った取組であるLINEを利用した避難者把握システムの実証実験と、令和7年(2025年)度購入したパーティション・段ボールベッド等の資機材や、携帯トイレを使用した避難所開設訓練をご紹介します。
(1) LINEを利用した避難者把握システム
避難所名簿係の負担軽減や安否確認回答の迅速化、災害対策本部でのリアルタイムでの避難者状況の把握等を目的に、実証実験を行いました(写真1)。

写真1 LINEを利用した避難者把握システム
市公式LINE上でチャットボットの質問に答えることで簡単に生成された個人の二次元コードを受付担当者のスマートフォンのカメラで読み込むだけでチェックイン完了です。スマートフォンをお持ちでない1家族以外の全員が、LINEでチェックインができました。
また、訓練中、チェックインされた方全員にLINE上で健康チェックを配信し、88%の方から健康状態に関する質問への回答を得ました。「健康状態が良くない」と答えた方や未回答の方に保健師が訪問し、体調を確認しました。
チェックアウトは、本人がLINE上で退所申請を行うのみで可能。データはクラウド上に蓄積されるので、常時、避難所の名簿係がパソコンでチェックイン状況を確認することができます。
(2) 資機材や備蓄物品を使用した避難所開設訓練
令和7年度、パーティションや段ボールベッドを500台ずつ購入しました。本訓練では参加者自身で組み立てることで避難所設営のイメージを深めました(写真2)。

写真2 新しい資機材を利用した避難所設営訓練
また、断水を想定し、携帯トイレの使用・廃棄訓練を行いました(写真3)。家の備蓄を実際に使用する機会は少ないですが、訓練で使うことで重要性や必要性を改めて認識することができました。

写真3 携帯トイレ
参加者からは、「組み立て方法が案外簡単で安心できた」「実際に携帯トイレはあるが、使い方がわかってよかった」という意見をいただきました。アンケートでは「実際の避難所の設営や運営を体験し、イメージが深まった」と答えた方が97%に達しました。

実際の避難所の設営や運営を体験し、イメージが深まった
(3) 協定事業者との訓練
令和6年度に「生駒市災害支援協力会(IDS)」と「災害時等におけるキッチンカーによる炊き出し等に関する協定」を締結したため、実効性を高める目的でキッチンカーによる炊き出しを実施しました。また、生駒市スカウト協議会による防災レクリエーション、自動車販売事業者による給電車の展示、給水活動、近隣自治体による応援等、様々な主体が参画し、発災時に市民・行政・協定事業者等が一体となって災害対応ができるよう訓練を行いました。
4 見えてきた課題
LINEを利用した避難者把握システムについては、スマートフォンを使わない方や通信が断絶した場合の代替手段の確保及び市民への周知が課題となっています。
そのため、現行の紙の受付方法も並行して継続しますが、平常時から多くの市民に使い方を周知するため、避難所運営以外でも活用できる汎用性を持ったシステム仕様の検討や、代替通信手段を模索しています。
新しい資機材を使用した避難所開設については、だれが避難所に到着しても開設できるよう、開設に必要な手順書や必要物品を入れた「First Action Box」の設置、また、各避難所のレイアウトを事前に考えることが課題です。
そのため、令和8年度は複数の避難所において、その避難所に避難する方たちがレイアウトを事前に検討するワークショップを行い、迅速な避難所開設に向けた取組を進めていきます。
5 おわりに
今後、地域の防災訓練等で新しい資機材に触れる機会を積極的に設けていきたいと考えています。また、今回の避難所訓練で得たリアルな体験をお伝えし、各家庭や自主防災会単位での備蓄品等の見直しを促すとともに、備蓄物資を拡充し、自助・共助・公助力の向上を図っていきます。
