防災の動き



首都直下地震の新しい被害想定と実施すべき防災対策~首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書公表~
内閣府(防災担当)防災計画担当/内閣府(防災担当)調査・企画担当

1 はじめに

 東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)には、中央省庁や企業本社等の首都中枢機能が集積し、かつ、人口や建築物が密集しています。このような東京圏において大規模地震が発生した場合、広域的な災害応急対策に不可欠な首都中枢機能の継続性の確保が課題となります。また、他の地域と比べ格段に高い集積性から人的・物的被害や経済的被害は甚大なものになると予想され、その軽減策の推進は、我が国の存亡に関わる喫緊の根幹的課題と言えます。

 政府は、平成26年(2014年)3月に「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(以下「基本計画」といいます。)及び政府業務継続計画を閣議決定し、さらに平成27年(2015年)3月には減災目標を基本計画に位置付けて、対策に取り組んできたところです。今般、基本計画の策定から10年が経過することから、「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、東京圏を取り巻く状況の変化や防災対策の進捗状況等を踏まえ、被害想定の見直しや新たな防災対策について検討し、令和7年12月に報告書が取りまとめられましたので、本稿においてその概要を紹介します。

2 新たな被害想定の概要

 東京圏及びその周辺地域は複数のプレートが沈み込む比較的地震活動が活発な地域であり、M7クラスの地震はいつどこで発生してもおかしくありません。地震調査研究推進本部によると、南関東地域の直下でプレートの沈み込みに伴うM7程度の地震が発生する確率は今後30年間で70%程度と評価されています。被害想定の対象としては、首都中枢機能への影響等を考慮し、被害が甚大となる「都心南部直下地震」を選定しています。

 都心南部直下地震による人的・物的被害については、最悪のケースでは、死者数約1.8万人、全壊・焼失棟数約40万棟と想定されています。揺れによる被害については、曝露量(被災する可能性がある人や建物)が膨大であることから、木造家屋等が多数倒壊するほか、固定していない家具等の下敷きによる死傷等、多数の人的被害が発生するおそれがあります。地震火災による被害として、大規模な延焼火災が発生するおそれがあります。四方を火災で取り囲まれたり、火災旋風等が生じたりする等して、多くの人的被害が発生するおそれがあります(図1)

図1 新たな首都直下地震の被害想定

図1 新たな首都直下地震の被害想定

 ライフライン被害については、被災した火力発電所の運転停止等により、被災直後に最大約5割の建物が停電するおそれがあります。停電や設備の被災等に起因して、被災直後には固定電話・インターネット回線の約5割で支障が想定されます。また、管路や浄水場、下水処理場等の上下水道施設の被災により、被災直後に上水道は約3割、下水道は約5%の地域で利用支障が生じるおそれがあります。

 避難者については、自宅家屋の被害やライフライン被害、マンション等におけるエレベーターの長期間停止、家庭の物資不足等が発生することで、発災2週間後に約480万人まで達するおそれがあります。また、鉄道等の公共交通機関の運転取りやめ等に伴って約840万人が帰宅困難になると想定されています。

 このほか、災害時に首都中枢機能を確保できなければ、災害応急活動はもとより、社会経済活動が維持できず、我が国全体の国民生活や企業等の経済活動に大きな影響が生じるおそれがあります。

 さらに、この10年の社会情勢の変化を踏まえると、高齢者や外国人等の災害時に配慮が必要な方の増加に伴う災害対応ニーズの増大、SNS等におけるデマ等の拡散等も想定されます。このほか、高層マンションが増えていることから、居住者が一斉に避難所へ避難することで避難所の定員を大幅に超過するおそれがあります。

3 対策の方向性

 東京圏には、首都中枢機能が極めて高度に集積し、かつ、我が国の人口の約3割が居住していることから、首都直下地震対策においては「首都中枢機能の確保」、「膨大な人的・物的被害への対応強化」の2つの観点が重要です。加えて、被災後の「迅速な復興、より良い復興」に向けた事前の備えが重要です。その前提として、国民、企業等、地域、行政が一丸となって首都直下地震を乗り越えるべく、首都直下地震を「自分ごと」として捉えて平時からの防災対策を進めるとともに、社会全体での体制の構築に取り組んでいく必要があります(図2)

図2 首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書 新たな対策のポイント

図2 首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書 新たな対策のポイント

 東京圏に住む国民一人ひとりは、住宅の耐震化や家具の固定、感震ブレーカーの設置等の自らの命を守る取組を進めるとともに、食料や水等の家庭備蓄等により発災時の在宅避難が可能な環境づくりに取り組み、首都直下地震による被害を最小限にすることが求められます。

 建物の耐震化や感震ブレーカーの設置については、その取組の実施により被害が大幅に軽減することが見込まれています(図3)

図3 防災対策の効果試算

図3 防災対策の効果試算

4 おわりに

 東京圏に住む国民一人ひとりが、首都直下地震発生時に自らが極めて困難な状況に見舞われることを「自分ごと」として捉え受け止めて、自分でできることは自分で行い、自ら進んで自助・共助に取り組む意識を持ち、首都直下地震による被害を最小限にしていかなければなりません。

 本報告書が、国民、企業等、地域、行政それぞれの立場から読み込まれ、首都直下地震対策の検討や見直しを行う端緒となり、「国民、企業等、地域、行政が共に首都直下地震に立ち向かう」姿が実現することを期待しています。

文献
首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書
https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/index.html

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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