防災の動き



防災意識を高める一試み~「危険な場所」と「魅力ある場所」を住民自身が地図化~
北海道ニセコ町総務課・こども未来課

 住民に防災意識を高めてもらうイベントをもっと楽しくできないか?子どもからお年寄りまで防災を自分事として捉えることができる活動とはどんなことか?そんな思いから、町役場×町内会×小中高生×大学×地元放送局で協業し、町内の「危険な場所」と「魅力ある場所」を住民自身が町内を歩いて探し、それらを地図化して各家庭に備えてもらう活動を、「ふれあいマップづくり」と名付けて2020年度から続けています。

 この地図のミソは、「危険な場所」だけではなく「魅力ある場所」も併記することです。「魅力ある場所」とは、例えば「私がきれい!と思う景色」や「スープカレーがおいしいお店」「地域の歴史が刻まれた神社」「いつも行く駅前の温泉施設」「エサやりができる『だちょう牧場』」等、行楽や暮らしに役立つタウン情報や、参加者が個人的に自慢したり、お勧めしたい情報を、自由に選んでもらうことです。そうすることで、出来上がった地図を普段の暮らしでも見てもらえる頻度が上がるのではないかと考えるためです。郷土愛を深めてもらうことも合わせて期待し、参加者からは好評を得ています。

 今年度の「ふれあいマップづくり」は、農家が多く移住者も多い町内中心部の近藤地区で7月に行い、大人と子ども合わせて40人が参加しました。地図づくりの主役は小中高生と町内会の大人です。当町では、「住むことが誇りに思えるまち」を掲げる「ニセコ町まちづくり基本条例(=2001年4月に日本初の自治基本条例として施行)」の下で、子どもがまちづくりに参加することを保証する「小学生・中学生まちづくり委員会」を設け、この地図づくりを同委員会の活動の一つに位置付けています。もう一方の主役を町内会の大人としたのは、昨今、衰退が懸念されている町内会活動で、楽しく役に立つイベントとして活用してもらうことが狙いです。大学からは、札幌にある北海学園大学で人文地理学を専攻する谷端郷講師に初年度から参加していただき、地図づくりのプログラムを設計し、作業のアドバイスをする立場として参加していただいています。また、同大学の学生にも人文地理学の実習の一環として参加してもらい、地域住民と一緒に地図を作り上げることで、社会性を身に付ける場としても活用していただいています。地元放送局(北海道放送)は大学と当町をつなぐコーディネーター役として協業し、この活動をニュースとして広く発信する役割を担っていただいています。

 地図づくりは例年、1日で展開します。参加者は午前8時30分に地区の会館に集合し、まず谷端講師からこの地図づくりの目的と概要について、わかりやすくかみ砕かれた講義を受けます。そして「子ども+大人+学生」で複数の班をつくり、町へ出て、地図の材料となる「危険な場所」と「魅力ある場所」をメモと写真に収めていきます(写真1)。お昼には会館へ戻り、参加者全員で弁当を一緒に食べます。この頃には子どもも大人もすっかり打ち解け合い、ワイワイガヤガヤはピークに達します。午後からはフィールドワークで集めた情報を大きな模造紙に手書きで落とし込んでいきます(写真2)。地図は防災編(=危険な場所を記したもの)と魅力編(=魅力ある場所を記したもの)に分けて作り上げ、出来上がったものを各班が別の班に、それぞれの特徴を説明する形でプレゼンし、講評し合います。終了するのは午後4時で、朝の“お勉強”から始まって、フィールドワーク、情報整理、地図化、プレゼン、互いの講評まで、たっぷり充実した時間を過ごします。

 今年度出来上がった地図は、現在、谷端講師の研究室で学生がデータ化する作業を続けており、年内には製本され、小学生・中学生まちづくり委員会のメンバーと近藤地区の全戸に配布します。またGIS(地理情報システム)の技術を使ってウェブ版も作成し、誰でもどこからでもスマートフォンやパソコンで閲覧できるようになります。昨年度作成した地図は下記に公開していますので、御覧いただけましたら幸いです(注1)

 防災を身近に楽しく意識するにはどうしたらよいか、その一つの試みを「ふれあいマップづくり」という形で実践し、来年度も継続する予定です。

写真1 「だちょう牧場」でのフィールドワーク(令和7年(2025年)7月撮影)

写真1 「だちょう牧場」でのフィールドワーク(令和7年(2025年)7月撮影)

写真2 大学生(右)がサポートする地図化作業(令和7年(2025年)7月撮影)

写真2 大学生(右)がサポートする地図化作業(令和7年(2025年)7月撮影)

写真3 昨年度作成した地図

写真3 昨年度作成した地図

注1 昨年度作成した地図のウェブ版

注1 昨年度作成した地図のウェブ版

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