防災の動き



西尾市上羽角町の地区防災計画づくり
愛知県西尾市危機管理課 鈴木徹

1 上羽角町の特性

 上羽角町かみはすみちょうは、西尾市の北東部に位置し、矢作川、矢作古川、広田川、安藤川等の一級河川が、南西に向かって流れている三和地域に属しており、この地域全域が、矢作川水系の洪水浸水想定区域になっています。また、南の丘陵地は、土砂災害(特別)警戒区域の指定があり、これまでも、大雨時には、小規模な土砂崩れにより周辺市道の通行に支障をきたすといった被害が生じています。

2 上羽角町自主防災会

 上羽角町自主防災会は、平成16年(2004年)4月1日に発足し、令和7年(2025年)1月1日現在87世帯244人の住民により構成されています。

 これまでの主な活動としては、市の補助制度を利用した防災資機材の整備や防災訓練を行っています。例年の防災訓練では、自主防災会をさらに細かく区分した組ごとの避難訓練や水消火器を用いた消火訓練を主に実施しています。

3 地域の連携

 上羽角町の南の丘陵地に位置している株式会社デンソー西尾製作所(以下「デンソー」という。)は、西尾市と災害協定を締結し、災害時の避難場所に指定しています。地域の避難場所として、住民の心の拠り所となっていることもあり、いざというときスムーズに連携できるよう日頃から信頼関係を築いておくことは、上羽角町にとって必要不可欠な防災活動の一つです。

4 地区防災計画作成に向けての取組

 上羽角町では、令和6年度(2024年度)には、風水害の防災計画作成を至上命題として掲げ、内閣府のモデル事業をスタートさせました。

地区防災計画づくりを行う住民(令和6年(2024年)11月撮影)

地区防災計画づくりを行う住民(令和6年(2024年)11月撮影)

 10月に実施された上羽角町自主防災会の防災訓練では、希望者を募り、デンソーまでの集団避難訓練を初めて実施しました。住民にとっては、「何かあったらデンソーへ」のように、避難経路等を考えるよい機会となったようでした。

 その後、第1回のワークショップ(以下「WS」という。)ではこの地域に関係のある避難所についての良い点、心配な点についてグループワークを行ったところ、デンソーを含めて「避難所はどんな時に開設されるのか」正しく理解していない住民の方が多くいるという課題が見つかりました。

 そこで、「警報、警戒レベル、避難情報の違い」「どの避難所がどのタイミングで開設されるのか」について説明を行ったところ、住民の方も真剣に聞きいり、理解を深めたうえで、避難のタイミングや避難経路を検討しておくことの必要性を感じたようでした。

 第2回のWSでは、「いつ、誰が、どこへ逃げるのか」というテーマでグループワークを行いました。これにより、避難行動のタイミングについて「要支援者」「移動に不安がある人」「それ以外の人」に場合分けをして考え、「警戒レベル」「避難情報」「開設する避難所の関係性」の確認を行いました。

 このことから、継続してWSに関わることで、現状の把握と課題解決の検討が、ピンポイントで、かつタイムリーに行えるメリットを改めて感じました。

 西尾市は、災害リスクが多いことや浸水範囲が広いことから災害によって身を寄せる避難場所、避難所が異なります。同じ自主防災会の人たちと共に避難場所、避難所を確認して、コンセンサスが取れたことは、非常に価値のあることだったと思います。

 そして今回の取組を通して、驚いたことが2つあります。

 1つ目は、自主防災会長の熱意です。令和6年(2024年)9月の最初の打合せでは、関係者の顔合せ、今後の進め方について、確認が行われました。そこで、自主防災会長から災害時の防災行動(警戒レベルと避難情報、避難場所、避難行動、警戒レベルごとの行動フロー等)をまとめた地区防災計画の草案が示されたのです。やりたいことや方向性を示すことは、口頭での説明でも難しく、文書で草案を作成することは至難の業です。「このチャンスを生かして、地域のためになる防災計画にしたい」という自主防災会長の強い思いを感じた瞬間でした。

 2つ目は、WSに参加した住民の人数です。第1回、第2回ともに20人の住民が参加しており、防災への関心の高さを感じられました。どちらのWSでも、住民が慣れていないグループワークが行われましたが、住民同士でお互いの意見に耳を傾け、前向きな意見交換が行われていたことも印象的でした。

WSの議論(令和6年(2024年)11月撮影)

WSの議論(令和6年(2024年)11月撮影)

5 最後に

 地区防災計画の作成に関する取組を通して、地域における関係性が深まり、上羽角町自主防災会の共助力の向上を肌で感じることができました。

 西尾市では、令和5年度(2023年度)から、希望する自主防災会の地区防災計画作成をサポートする取組を始めています。件数はまだまだ少ないですが、毎年数件の申し出があり、計画作成に尽力しています。今後も自主防災会に寄り添い、地区防災計画作成をサポートすることで地域防災力の向上を図ってまいります。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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