防災の動き



ご存じでしたか? 不動産鑑定士が被災地の住家被害認定調査を支援します!
国土交通省不動産・建設経済局地価調査課

1 はじめに

 不動産鑑定士は、幅広い知識をもとに不動産の「適正な価値」を評価する国家資格であり、地価公示や課税評価を始めとする公的土地評価の担い手として重要な役割を果たしています。しかし、活動領域はそれらにとどまりません。災害時においても、自治体の行う住家被害認定調査への協力等の支援を行っていることをご存じでしょうか。本稿では、令和6年能登半島地震以降の不動産鑑定士の活動を紹介します。

2 住家被害認定調査と不動産鑑定士

 住家被害認定調査とは、国が定めた基準を踏まえて災害で被害に遭った建物やその敷地の利用価値を評価し、罹災証明書に必要な「被害の程度」を判定する作業であり、不動産鑑定士の専門性を活かせる分野と言えます。士業団体(日本不動産鑑定士協会連合会(以下、「鑑定士協会連合会」)や各都道府県の不動産鑑定士協会等)が中心となり、事前防災として調査実施手法に関する研修会を定期的に開催するとともに、災害時には不動産鑑定士を被災自治体に派遣しています。調査の実施体制に関する助言、全国の自治体からの応援職員向け講習会の実施、専門家としての住民説明等の活動は、調査の迅速化・効率化につながるものと評価されているところです。

3 令和6年能登半島地震以降の支援実績

 石川県を中心に甚大な被害をもたらした令和6年能登半島地震の発生後、鑑定士協会連合会は石川県からの要請を受け、全国の不動産鑑定士を被災市町に派遣しました(写真1)。その数は延べ1,564人日に上ります(図1)。これらの活動を踏まえ、9月には県との間で「災害時における住家被害認定調査等に関する協定」の締結に至りました(写真2)。その後、同月に奥能登地方が豪雨被害に遭った際には、本協定により、一層迅速な不動産鑑定士の派遣が実現しました。

 支援を受けた自治体からは、「調査のマネジメント面での支援を受けることで、調査全体の効率化・スピードアップが図られた」、「専門家である「不動産鑑定士」の肩書きが被災者に安心感を与える」といった声が寄せられています(図2)

写真1 非住家建物(ホテル)の調査を行う不動産鑑定士(左)(令和6年4月27日七尾市にて、鑑定士協会連合会撮影)

写真1 非住家建物(ホテル)の調査を行う不動産鑑定士(左)(令和6年4月27日七尾市にて、鑑定士協会連合会撮影)

図1 令和6年能登半島地震後の不動産鑑定士の派遣人数(市町ごと、延べ人数)(鑑定士協会連合会より提供された資料に基づき、国土交通省作成 地図は石川県「石川県内市町のページ」https://www.pref.ishikawa.lg.jp/shimachi.htmlより)

図1 令和6年能登半島地震後の不動産鑑定士の派遣人数(市町ごと、延べ人数)(鑑定士協会連合会より提供された資料に基づき、国土交通省作成 地図は石川県「石川県内市町のページ」https://www.pref.ishikawa.lg.jp/shimachi.htmlより)

写真2 石川県と鑑定士協会連合会との協定締結の様子(令和6年9月5日)(東京都不動産鑑定士協会「令和6年能登半島地震・豪雨に係る災害支援の取組みについて」https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/activity/report/20240517reportより)

写真2 石川県と鑑定士協会連合会との協定締結の様子(令和6年9月5日)(東京都不動産鑑定士協会「令和6年能登半島地震・豪雨に係る災害支援の取組みについて」https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/activity/report/20240517reportより)

図2 支援を受けた自治体の声(関係者へのヒアリングに基づき国土交通省作成)

図2 支援を受けた自治体の声(関係者へのヒアリングに基づき国土交通省作成)

4 今後の更なる支援の充実にむけて

 鑑定士協会連合会では、次の大規模災害に備えて不動産鑑定士による災害支援活動の更なる推進を図るため、令和6年12月に内閣府と「住家被害認定調査に係る自治体支援のための連携協定」を締結しました。本協定において、内閣府は災害発生時、鑑定士協会連合会に対し不動産鑑定士派遣の協力を要請できることとされています(図3)

図3 「住家被害認定調査に係る自治体支援のための連携協定」における内閣府と鑑定士協会連合会との連携協力の内容(内閣府資料より)

図3 「住家被害認定調査に係る自治体支援のための連携協定」における内閣府と鑑定士協会連合会との連携協力の内容(内閣府資料より)

 不動産鑑定士・不動産鑑定業を所管する国土交通省としても、その専門性を活かした災害支援の取組は防災・減災や被災地の早期復興のために極めて重要と考えております。不動産鑑定士の団体は各都道府県で組織され、地元に密着した活動をしておりますので、自治体の皆様におかれましては、災害時の備えとして不動産鑑定士との日頃からの連携をぜひご検討いただけますと幸いです。

5 関連情報

「不動産鑑定士による災害支援」(国土交通省)

▶https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk4_000001_00012.html QRコード

「災害対策支援(自治体の皆様へ)」(日本不動産鑑定士協会連合会)

▶https://www.fudousan-kanteishi.or.jp/info/news/saigaishienntaisaku_jjititai/ QRコード

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.