防災の動き



高輪ゲートウェイ駅周辺地区における防災の取組について
東日本旅客鉄道株式会社

1 はじめに

 高輪ゲートウェイ駅周辺地区では、鉄道車両基地跡地開発を中心に大規模なまちづくりが推進されています。2020年3月の高輪ゲートウェイ駅開業を契機に、当社が中心となって、えきとまちが一体となったまちづくりが進行していますが、本地区を含む品川駅・田町駅周辺地域では、大規模地震が発生した場合においても災害に強く、安全・安心な拠点とするため、2022年に官民連携で都市再生安全確保計画(以下「安確計画」)が策定されています。本地区は、この安確計画を開業後のまち運営に生かしていくため、まちの内外のステークホルダーとともに、安全・安心の取組を進めています。本稿では、今までに至る取組の概況と今後の展望について御報告します。

2 高輪ゲートウェイ駅周辺まちづくりの概要について

 TAKANAWA GATEWAY CITYは、南北方向約1.6キロメートルの品川車両基地跡地(約13ha)を含む土地区画整理事業(約14.7ha)により新たに土地が創出される品川駅北周辺地区のうち、高輪ゲートウェイ駅前の街区と田町駅方面に向かって計四つの街区を先行的に開発、新たに生まれる街であり、更地からの新規開発、いわゆるグリーンフィールド開発であることが特徴です。また、広域交通結節機能を担う品川駅と、高輪ゲートウェイ駅、羽田空港に直結する泉岳寺駅に隣接し、優れた交通利便性を有した国際交流拠点を形成するため、2019年4月に国家戦略特別区域計画として認定されました。

表1 TAKANAWA GATEWAY CITYの開発概要

TAKANAWA GATEWAY CITYの開発概要
高輪ゲートウェイ駅周辺の全景

図1 高輪ゲートウェイ駅周辺の全景

3 都市再生安全確保計画の概要について

 品川駅・田町駅周辺地域は2012年1月に特定都市再生緊急整備地域に指定され、段階的かつ長期的なまちづくりが進められています。2019年4月のTAKANAWA GATEWAY CITY(品川駅北周辺地区)に関する国家戦略特別区域計画の認定を契機に、安確計画の検討が官民連携によりスタートし、安確計画作成検討会を経て2022年1月に安確計画が策定されました。

都市再生安全確保計画の対象区域

図2 都市再生安全確保計画の対象区域

4 官民連携の取組について

(1) 広域連携連絡会における「安心安全WG」

 安確計画では、都市の防災力を高めるためには平時から安全確保策を実施することが重要と考え、広域的なエリアマネジメントの推進を図る「高輪ゲートウェイ駅周辺地区広域連携連絡会」の中に「安全安心ワーキンググループ(以下「安全安心WG」)」を立ち上げました。安全安心WGは、開発事業を推進する民間事業者、各建物の所有・管理・運営者、鉄道事業者、インフラ事業者及び行政関係者により構成され、安確計画の実施に向けた情報共有や議論の場を担っています。

都市再生安全確保計画の作成・実施体制

図3 都市再生安全確保計画の作成・実施体制

(2) 国土交通省「Project PLATEAU」事業

 安確計画の方針「平時・非常時一体で機能する情報連携基盤の構築」に基づき、2022年度国土交通省Project PLATEAU実証事業にて、3D都市モデルを活用した大規模避難シミュレーションによる計画検証を行いました。この結果を安全安心WGで議論し、可視化による具体な避難のプランニングや地区全体の連携の必要性が認識され、まちの運営ルールを見い出すべき等、当事者としての主体的な対策を具体化するための機運醸成につながりました。

デジタルツインシミュレーション

図4 デジタルツインシミュレーション

安全安心WGでの議論の様子

写真1 安全安心WGでの議論の様子

(3) 医療機関と連携した防災訓練

 安確計画の方針「退避ネットワークと一時滞在施設の整備」の一環として、2024年3月には高輪ゲートウェイ駅での防災訓練を実施しました。災害時の実効力を高めるため、消防署や警察署とともに医療機関とも連携し、災害時や輸送障害時のえきまち一体運営の体制構築の検討に生かしています。

医療連携防災訓練の様子

写真2 医療連携防災訓練の様子

5 スマートシティ実行計画

 品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン(2021年9月改定)では、データ駆動型マネジメントによるSociety5.0の実現を目指すこととされているため、広域連携連絡会によって「高輪ゲートウェイ駅周辺地区スマートシティ実行計画(以下「実行計画」)」が2024年4月に定められました。実行計画では「安全・安心」を取組テーマの一つに掲げ、平時・非常時一体で機能する情報連携基盤の構築を実現するため、デジタル基盤を活用したエリア防災の高度化等に取り組むこととしています。

6 今後の展望—まちびらきに向けた防災計画の検討—

 2023年度の安全安心WGでは、2025年3月予定のTAKANAWA GATEWAY CITY「THE LINKPILLAR 1 SOUTH/NORTH」開業に向け、安全安心WGの中でビルマネジメントや商業施設運営者等、まちに係わる多様なメンバーを集めて議論を重ね、災害時の対応・行動方針の素案を作成しました。行政対応(公助)だけでは限界があるため「誰もが担い手」「まちぐるみ」「平時から」の三点を基本理念に、まちに関係する一人ひとりができること(自助)、事業者と協力連携しあって対応していくこと(共助)について、期待される役割や行動フローをまとめています。これらを取りまとめ、今後は地区防災計画の策定へ向けた関係者との調整を進めるとともに、まちに係る人々への周知・啓発を行ってまいります。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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