特集② 地区防災計画制度施行から10年



地区防災計画づくりの取組2 よこすか海辺ニュータウンソフィアステイシアの地区防災計画づくり
神奈川県横須賀市危機管理課 よこすか海辺ニュータウンソフィアステイシア自主防災会

横須賀市のマンションソフィアステイシアは、内閣府や地区防災計画学会の地区防災計画モデル事業の対象地区でもあり、日本で最初にマンションの地区防災計画を作成した地区です。

1 よこすか海辺ニュータウンとマンションソフィアステイシア

 よこすか海辺ニュータウン地区は、全域が東京湾に面した埋立地で平均標高は約2mです。地震動の増幅のほか、津波、高潮、液状化、地盤沈下等のリスクが非常に高いエリアに定住人口約6,000人、地区内に進出した大学、公共団体、企業、大規模商業施設等の就学・就業人口約1万人、来街者を含めると最大6万人が滞在する巨大なニュータウンです。

 また、ソフィアステイシアは、平成15年(2003年)3月に竣工した309戸のマンションで、免震構造8階建~14階建の4棟に約1,000人が居住しています。

2 地区防災計画の作成

 平成26年(2014年)4月に地区防災計画制度が施行された直後の同年6月の管理組合及び自治会の通常総会で、内閣府の地区防災計画モデル地区に応募する件、地区防災計画策定委員会を設置し、住民から委員を公募する件及び地区防災計画策定予算を審議・承認しました。

 策定委員会は、防災士3名、横須賀市防災指導員6名、消防職員1名、看護師長1名、自衛官3名及び建築設備の有資格者3名の合計17名で編成し、平成26年(2014年)7月から翌年3月まで延べ20回の委員会を経て、平成27年(2015年)3月に「ソフィアステイシア地区防災計画」が完成し、直後に横須賀市防災会議に計画提案しました。

3 地区防災計画の見直し

 地区防災計画の本編は345頁、全世帯配布用の概要版「わが家の防災ハンドブック」は42頁で構成されており、概要版は毎年避難誘導班ごとに開催する防災講習会のテキストとして活用しています。

 また、地区防災計画完成直後の管理組合及び自治会の通常総会で、それぞれの規約及び会則を「災害即応型」の規約、会則に改訂しました。

 具体的には、総会決議を必要とする事案でも、帰宅困難者の発生により総会が開催できない場合は、理事会で決議ができること、その理事会さえも開催できない場合は、マンションの管理権原者である理事長の決裁で災害対応や予算執行を決定できることにしました。

 また、災害により負傷者が住戸内に閉じ込められた場合は、区分所有者の事前同意を得ることなく、当該住戸の玄関扉や窓を破壊して人命救助目的で住戸内に立ち入れること、救助目的で破壊した玄関扉や窓等の補修費用は管理組合の一般会計から支出できること、多額の費用を要する復旧工事費は修繕積立金を取り崩して支出できることとしました。

4 毎年の総合防災訓練・防災講習会

 毎年12月に開催する総合防災訓練では、当地に甚大な被害を及ぼすと想定される「三浦半島断層群地震」、「相模トラフ沿いの海溝型地震」、「首都直下地震」、「南海トラフ連動型地震」のほかに、マンション火災等具体的な災害による過酷事象を想定し、「災害から命を守る」実践的な訓練を実施しています。

 ソフィアステイシア管理組合は、法人格を取得し、理事・監事は14名、自治会は25名の役員で運営しています。入居開始から20年が経過し、住民の高齢化も進んでいますが、管理組合及び自治会の主要役員は、40代から50代の比較的若い世代が牽引していますので、人材不足とは無縁のマンションです。

 ソフィアステイシアの危機管理は、自然災害に備えるためだけではありません。

 平成21年(2009年)9月に発行した「住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理マニュアル(48頁)」では、自然災害だけでなく、住民を危機に陥れる事件、事故、急性症、感染症等のリスク要因に対して、危険予知と危機回避、被害の最小化の方策について詳しく記述し、住民向けの防災講習会で繰り返し啓発してきました。

 当時、南アジアを中心に多くの死者を出した「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)」や「新型インフルエンザ(H1N1型)」等のウイルス感染症に関する基礎知識や感染予防策、万一感染した場合の対応等について詳しく説明しました。

 平成23年(2011年)3月に発生した東日本大震災の甚大な被害を踏まえて、同年6月には「危機管理マニュアル:改訂版(74頁)」も発行しました。

5 コロナ禍への対応

 令和2年(2020年)1月に日本で最初の感染者が確認された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても、このウイルス感染症を公衆衛生上の危機ととらえて、直後の2月に「感染症対策チーム」を立ち上げ、万一マンション内で感染者が出た場合に備えて、「生活支援班」を設置しました。

 マンションの建物構造上の特性から、多くの住民がエントランス、エレベーター、メールボックス、ゴミ置き場等を共同利用しますので、感染者又は同居家族が、生活維持のために止むを得ずマンション内を移動すると、短時間でウイルスが拡散してしまいます。そこで、感染者世帯の個人情報を厳重に秘匿するという条件で、対策チーム責任者の携帯電話番号と携帯メールアドレスを全世帯に開示して、感染者は速やかに感染の事実を通知し、家族全員の10日間自宅内隔離の徹底を要請しました。やがて、数世帯から感染の事実通知と生活支援の要請がありましたが、生活支援班が買物代行やゴミ出し代行を行い、自宅内隔離を徹底したため、幸いにしてマンション内の二次感染は防ぐことができました。

 以上が、ソフィアステイシアにおける危機管理の一端の御紹介です。

負傷者搬送訓練

負傷者搬送訓練

はしご車による高層階からの避難訓練

はしご車による高層階からの避難訓練

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