「巾着で命をつなげ~HAPPY & SAFETYプロジェクト~」の取組について
岩手県大槌町立吉里吉里中学校
1 はじめに
本校では、特別の教育課程「ふるさと科」の学びの中で「防災教育を中心とした学び」を学習しています。学びの目的は、「自他の命を大切にし、防災や安全について主体的に判断し行動しようとする子供の育成」です。震災後から継続してきた「地域を巻き込んだ防災学習」は、本校独自の取組として定着し、小中を一貫した9年間の学びは、特に「防災週間」を位置付けることで、年々充実してきたように感じています。また、コミュニティスクールの推進は地域と学校を強く結び、その協働した取組は様々な子供の学びの支えとなっています。

「ぼうさい甲子園」グランプリ受賞
2 「ふるさと科」での学び
子供たちは、震災後に新設された「ふるさと科」の学習で、「12年前の震災犠牲者の7割が高齢者であった」ことを学びました。高齢者の中には、「自分は年寄りだから逃げなくていい」と考え、避難しなかった人がいたことや、その人々を説得し避難させようとして命を落とした消防団員がいたことも学びました。地域の方を対象に実施したアンケートでは、「自分のために逃げる」が8割、「自分が逃げることで誰かの役に立つなら避難する」という回答も1割ありました。
そこで、「避難することが子供たちの役に立つ」という視点を持ってもらうことが高齢者の避難意識を一層高めるのではないかと考えました。「高齢者があめ入りの巾着をもって避難し、不安にしている子供たちにあめを配ります。もらった子供たちはHAPPY、避難した高齢者はSAFETYという狙いで、「巾着で命をつなげ~HAPPY & SAFETYプロジェクト~」を立ち上げました。

生徒手作りのあめ入り巾着袋
3 地域と連携した学び
今回の取組では、地域を巻き込み、中学生が作った巾着を高齢者に直接配布し、地域の避難訓練で実際に活用されました。学校、地域、保護者及び行政のそれぞれが、積極的に防災への取組に関わり、地域全体の防災意識は、年々高まっていると感じています。
子供たちの地域行事への参加率は高く、自分たちが地域の一員であるという意識が高くなっています。このことが、地域の方々の「自分の地域の子供たち」という意識にもつながっています。
4 おわりに
この地域に生きる子供たちは、将来、地域の支えの中心となります。「命をつなぐ」学びや実践が生きる力となり、震災の犠牲者が出ないことを心から願っています。
結びに、ここまで復興を支えてくれた全国の方々に感謝をお伝えしたいと思います。