防災の動き



産官学民で取り組む「切れ目のない全世代型防災教育」
愛媛県松山市総合政策部防災・危機管理課

1 はじめに

 平成最悪の水害となった「平成30年7月豪雨」。本市でも多くの被害があり、残念ながら逃げ遅れによる犠牲者も出ました。同じ悲劇を繰り返さないために、令和元年度から小学生から高齢者まで途切れることなく防災教育を受けることができる「全世代型防災教育」の仕組み作りに着手しました。

2 全世代型防災教育の特徴

 令和元年5月に産官学民が参画する「松山市防災教育推進協議会」を設立し、同年10月に愛媛大学防災情報研究センターの協力で運営する「松山防災リーダー育成センター」を設置しました。この2つの組織を中心に、「世代に応じた防災教育」と「全世代・職域への防災リーダー育成」に取り組んでいます。

(1) 世代に応じた防災教育の実践

 小学生から大学生まで、発達段階に応じた「身につける力」の目標を設定し、目標に合わせたプログラムを開発して学校や地域で授業や研修を実施しています。

(2) 全世代・職域での防災リーダー育成

 小学校5年生から高校生で「ジュニア防災リーダークラブ」、大学生防災士で「防災リーダークラブ」を結成し、若い世代のリーダー育成を進めています。

 また、教員や自主防災組織、企業や福祉施設で防災士の養成を進め、それぞれの場所で積極的な防災活動を展開しています。

ジュニア防災リーダークラブ「防災マップ作り」

ジュニア防災リーダークラブ「防災マップ作り」

防災リーダークラブ「在住外国人の方への防災講座」

防災リーダークラブ「在住外国人の方への防災講座」

3 松山逃げ遅れゼロプロジェクト

 全世代型防災教育の中でも、特に注力しているのが、令和4年度より本格始動した「松山逃げ遅れゼロプロジェクト」です。風水害時に取るべき行動を時系列で整理する「マイ・タイムライン」を、学校、地域、施設等で広めています。

(1) 学校での取組

 松山市教育委員会と連携し、全ての市立中学校が1年生を中心にマイ・タイムラインの授業を取り入れています。約4,000名の中学生が学校のタブレットを使って作成し、自宅の災害リスクや、避難先、風水害時にとるべき行動を学んでいます。

 また、授業で学んだ災害の怖さや避難の重要性をはがきに書いて大切な人に送る「命のはがき」作成を行っています。受け取った家族や祖父母と、防災について話し合うきっかけが生まれています。 

(2) 地域での取組

 松山市自主防災組織ネットワーク会議と連携し、市内全41地区の自主防災組織と防災士を対象に、マイ・タイムラインの講師養成研修を行っています。受講者は、それぞれの地区で講師となり、マイ・タイムラインの普及を図っています。

(3) 施設での取組

 学校、保育園、幼稚園、福祉施設等では施設版タイムラインの作成を進めています。施設職員の防災情報の理解を促し、いつ・誰が・何をするかを整理して、いざというときに利用者も職員も守ることができるタイムラインの作成を進めています。

 令和5年4月には、プロジェクトをさらに進めるため「松山市マイ・タイムライン防災アプリ」をリリースしました。アプリで簡単にマイ・タイムラインが作成でき、災害時には自分が決めた避難のタイミングに合わせて、避難情報がプッシュ通知で届きます。

松山市マイ・タイムライン防災アプリ

松山市マイ・タイムライン防災アプリ

中学校でのタブレットを使った授業

中学校でのタブレットを使った授業

4 3つの成果

 「全世代型防災教育」を通じて、主に3つの成果が得られています。

(1) 学校防災教育の広がり

 教育委員会と連携し、市の防災部局や愛媛大学が教員への防災教育をサポートすることにより、学校での防災教育が広がっています。

 小学校から自分を守ることのできる人材を育成し、切れ目なく防災教育を継続することで、他者や地域を守る人づくりにつながっています。

(2) リーダーの増加による防災教育の自立化

 防災リーダークラブの結成や防災士の育成により、これまで大学や行政が主体となって実施していた防災教育が小中学校や高校、民間団体で自発的に進んでいます。

(3) 防災を通じた交流の活性化

 産官学民が連携して防災教育に取り組むことで、異なる世代や職業で新たな交流が生まれています。これまでになかった新たな視点や知識が加わることで、防災活動が前進・活性化する事例が増加しています。

 これからも「全世代型防災教育」を通じ、「ひとりの犠牲も出さないまち」そして「防災で未来を創るまち」を目指します。

【参考】

○松山防災リーダー育成センターHP ▶https://matsuyama-bltc.com QRコード

○松山市HP「切れ目のない全世代型防災教育」 ▶http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/bosai/bousai/bousaikyouiku/zensedaibousaikyoiku.html QRコード

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