防災の動き



富士山ハザードマップ(HM)改定に伴う御殿場市の取り組みについて
静岡県御殿場市危機管理課

 令和3年3月、国、県(静岡・山梨・神奈川3県)、27市町村を始め、火山専門家などで構成される富士山火山防災対策協議会の富士山ハザードマップ検討委員会により、17年ぶりに富士山噴火を想定した火山防災対策の基礎となる富士山ハザードマップ(以下、「HM」)が改定されました。

 また、本年3月に同協議会は「火山噴火による逃げ遅れ0(ゼロ)」を目指す富士山火山避難基本計画を公表、「いのちとくらしも守る」という基本方針が示され、溶岩流の影響を受ける自治体はそれぞれの地域の特性を踏まえた地域防災計画の見直し、そして避難計画を策定することとなりました。

 富士山の東麓に位置し、人口約8万5千人、年間約1,400万人の観光客が訪れ、多くのホテル・ゴルフ場などの観光施設が点在する高原都市である御殿場市も、協議会の計画に基づき、現在試行錯誤を重ねながら避難計画を策定中であります。

 当市は常日頃、防災・減災のスローガンとして「地を知り、危険を知り、我を知り、大切な市民の命を守る!」を掲げ、地形の分析と活用に留意し、「静的な地形×動的な気象=災害、災害×人・物×時間×運=被害」を被害発生の方程式として定義付け、業務を行っています。本誌では、富士山噴火に伴う避難構想、特に当市の地形上の最大の特性である『分水嶺』(小高い尾根)を活用した溶岩流からの避難要領について、その一端をご紹介したいと思います。


 前回のHMと改定版の最大の違いは「溶岩流の流れ方」であり、前回のマップでは溶岩流がほぼ横一線に流れて市街地に到達するのに対し、改訂版は新たな科学的知見などを踏まえ、それぞれの地域の地形、起伏が厳密に反映され、溶岩流が流れて来る地域と流れて来ない地域、流れて来る地域の範囲と到達時間などが極めて細やかに記載されている点にあります。


 御殿場地域の溶岩流の流れを見ると、富士山から箱根外輪山にかけ広がる、当市のほぼ中央を東西に走る約7kmの分水嶺、特に分水嶺に沿って走る県道23号線、通称滝ヶ原街道沿いの標高634.5m地点の桜公園バス停付近を起点として、溶岩流がものの見事に北と南に分かれて流れる状況が分かります。

 改定HMの種類は、溶岩流の量に応じて大規模(13億m3)×69、中規模(2億m3)×91、小規模(2千万m3)×92、計大中小252ヶ所の想定火口点から流れる溶岩流の一つ一つの流下パターン(到達範囲・時間)を表したドリルマップと252パターンすべてを重ね合わせ、同一時間内に最も遠くまで到達する地点を結んだエリアを示した可能性マップの2種類からなり、当市に流れるパターンは38パターンとなります。

 また、この38のパターンは分水嶺により、分水嶺の北側のみ(パターンA)、北・南両側(パターンB)、そして南側のみ(パターンC)に分かれる3つの流下パターンに区分できることも明らかになりました。

 当市は行政上6つの地域(支所)と59の自治会(区)に区分されていますが、今回分水嶺に連なる箱根山側の丘陵、JR御殿場駅から東名御殿場I.C周辺のデルタエリアに位置する7つの区だけは、地形上大中小いずれの規模のパターンでも溶岩流が流れてこないことも分かりました。

 避難計画を作成するに当たりこの点に着目し、それぞれの流下パターンに応じて噴火時の避難要領を検討することとし、全く北側しか流れない場合は、7つの区と分水嶺の南に位置する30区のエリアに避難(A号計画)、北・南に分離して流れる場合は、7つの区と当市の北に位置する小山町と南に位置する裾野市方向、そして災害時の相互応援に関する協定を締結している神奈川県箱根町方面など隣接市町方向に避難(B号計画)、全く南側しか流れない場合は、7つの区と分水嶺の北に位置する22区のエリアに避難(C号計画)、という市内、市外広域に避難する基本構想を考案しました。




 大中小38の流下パターンにより溶岩流到達時間・範囲が異なり、被害を受ける地域・避難者数も異なります。最も避難者が多く発生するパターンはL(Large)33番であり、この場合当市の約65%の市民、約5.5万人が避難せざるを得ない状況となることから、今後このパターンを最悪のケースとし、避難計画を策定することとなります。


 市民、特に災害時避難行動要支援者の避難後の暮らしを確実に守るとの観点で、可能な限り市内避難を追求したいことから、市内、特に7つの区のデルタエリアを中心に公民館、小中学校などの指定避難所、あるいは観光都市の特性を活かし、ホテル・旅館などの宿泊施設、大型集客施設、またゴルフ場などの屋外施設を活用するとともに、市外への広域避難においては、避難パターンによる隣接市町村との調整(避難所受入れ)、県の全般統制と直接的支援(輸送・物資支援)と、また国の総合的支援が必要であり、今後関係機関と密接に連携し、今年度末を目標に具体的かつ実効性ある避難計画を完成させたいと考えます。

【検索】防災DX『富士山HM改定に伴う御殿場市の取り組みについて』 https://www.city.gotemba.lg.jp/anzen/a-p-info/a-p-info-01/2400.html QRコード



所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.