防災の動き



小型漁船への防災情報伝達システムの開発と社会実装への取り組み
北海道根室市歯舞漁業協同組合

 道東沖の千島海溝でマグニチュード9クラスの超巨大地震が発生した場合の根室市の津波想定は、地震発生後、最短24分で第1波が来襲し、最大津波高は約22mと想定されています。

 津波避難対策において重要なことは、まず、地震や津波の緊急情報を可能な限り迅速かつ確実に入手することです。

 北海道の東端に位置する根室市の歯舞地区では、多くの漁業者が小型船外機船を使用した昆布漁業を営んでおり、操舵室が無いことから漁業無線を搭載しておらず、津波発生時に津波警報等が発表された場合、多重な情報入手手段のある陸域とは異なり、携帯電話への緊急速報メールが主な手段となっています。

 しかし、海上では、①エンジンや風・波音の騒音があること、②携帯電話は海水を被るため鞄やポケットにしまっていること、③カッパ、救命胴衣を着用し体を動かしているため着信音やバイブ機能に気が付かないこと、等の課題があります。

 このような状況を解消するため、操業中の漁業者が、Jアラート情報が配信されたことをサイレン音で認識できるようにし、詳細な情報はスマートフォンで確認するという手法を執る「小型漁船への防災情報伝達システム」を開発しました。

 なお、システム開発は、歯舞漁業協同組合、根室市、一般財団法人漁港漁場漁村総合研究所等による官民連携体制の下で進めました。

 Jアラート等の緊急防災情報の発信から、漁業者が情報を確認するまでの流れは以下のとおりです。

① 根室市のJアラート受信機が緊急情報を受信した際に、自動でシステムに緊急情報をメール配信
② 同システムから事前に登録した漁業者のスマートフォンに情報を発信
③ 通知を受信した漁業者のスマートフォンとBluetoothで接続した漁船用通知装置が吹鳴
④ 漁業者がスマートフォンで本システムのアプリ画面を開き災害情報の詳細を確認

 なお、ここでは小型漁船を対象にシステムを開発しましたが、騒音が大きい工事現場等での活用も可能と考えています。

 このシステムの確立により、緊急時には漁業者へ津波警報などの防災情報を迅速かつ確実に伝達することが可能となります。

 また、このようなシステムは国内ではあまり例がありません。小型漁船への防災情報の伝達は全国の漁業関係者の共通課題であり、この取り組みやシステムを広く周知し、導入が推進されることで、国内全体の災害に強い漁業地域づくりに資するものと考えております。

小型漁船への防災情報伝達システム全体概要

小型漁船への防災情報伝達システム全体概要

小型漁船による昆布漁

小型漁船による昆布漁

漁船用通知装置(サイレン・赤色灯)

漁船用通知装置(サイレン・赤色灯)



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