防災の動き



災害対策基本法等の一部を改正する法律について
〈内閣府(防災担当)〉

1 本改正の背景及び必要性について

 甚大な災害をもたらした令和元年東日本台風(台風第19号)等においては、避難勧告、避難指示の区別等、行政による避難情報が分かりにくいという課題が顕在化したことに加え、避難が遅れたことによる被災、高齢者等の被災等も多数発生したため、防災対策実行会議の下に新たに「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」(以下「令和元年台風第19号WG」という。)が設置され、当該WGの報告書において、令和2年度も引き続き検討を行うべき事項として、「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)に規定される避難勧告及び避難指示の取扱い、高齢者等の避難の実効性確保、広域避難(災害発生のおそれがある段階における市町村又は都道府県の区域を越えた居住者等の避難)等が挙げられました。

 これらの検討事項については、令和2年6月から「令和元年台風第19号等を踏まえた避難情報及び広域避難等に関するサブワーキンググループ」(以下「避難情報等SWG」という。)及び「令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループ」(以下「高齢者等SWG」という。)において検討が進められ、同年12月に各報告書において各対応方針が取りまとめられたことを踏まえ、令和3年3月に「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」を第204回国会に提出し、衆参両院での審議を経て令和3年4月に成立しました(令和3年法律第30号。同年5月10日公布、同年5月20日施行)。各改正事項の詳細については、以下のとおりです。

図1 災害対策基本法等の一部を改正する法律の概要

図1 災害対策基本法等の一部を改正する法律の概要

2 各改正事項について

⑴ 災害時における円滑かつ迅速な避難の確保

① 避難勧告・避難指示の避難指示への一本化等

 令和元年台風第19号WGにおいて実施した住民アンケートでは、避難勧告の段階で避難すべきであることが理解されていないことが明らかになりました。また、避難勧告と避難指示の違いが理解されておらず、避難指示が発令されるまで避難しない、いわゆる「指示待ち」の人が依然として多いことも明らかになりました。

 以上を踏まえ、避難勧告と避難指示を避難指示へ一本化し、同じ警戒レベル(警戒レベル4)として発令する避難情報を一つにするなど、避難情報の包括的な見直しを行いました。

② 個別避難計画の作成

 近年の災害において、多くの高齢者・障害者等が被災しており、自ら避難することが困難な高齢者・障害者等の避難行動要支援者ごとの避難支援等を実施するための計画である個別避難計画の作成を一層推進することにより、高齢者等の円滑かつ迅速な避難を図る必要があるとの高齢者等SWGの報告書等を受けて、一部の市町村において作成が進められている個別避難計画について、全国的に作成を推進する観点から、当該計画の作成を市町村の努力義務とすることとしました。

図2 新たな避難情報の周知ポスター

図2 新たな避難情報の周知ポスター

③ 災害が発生するおそれ段階での国の災害対策本部の設置/当該本部が設置された場合における災害救助法の適用

 近年、気象予報の技術が向上し、大規模災害発生の事前予測が一定程度の確度で可能となっていることを踏まえ、発災時に備えた対応をできるだけ早く取ることが重要です。

 しかしながら、令和元年東日本台風においては、気象庁の特別警報の発表等を受け、浸水想定区域の住民に広域避難を呼びかけたところ、避難所へ向かう車で渋滞が発生する、渋滞を理由に避難をあきらめる等の問題が発生しています。

 以上を踏まえ、災害発生前であっても住民等の円滑な避難等の災害応急対策を迅速に実施できるよう、災害が発生するおそれがある段階から関係機関との総合調整等を行う国の災害対策本部を設置できることとしました。

 併せて、当該本部を設置したときは、都道府県知事等は、本部の所管区域とされた市町村の区域内において、災害救助法を適用し、避難所を供与できることとしました。

④ 広域避難に係る居住者等の受入れ等に関する規定の整備

 ③のとおり、災害発生後のみならず、災害の発生が予測される場合など、より早い段階から多くの居住者等の避難を促す必要性が高まっており、特に、広域避難については、荒川下流域をはじめとする全国の市区町村において検討が進められています。

 基本的に、広域避難やそのための居住者等の運送は、事前に他の地方公共団体や運送事業者と締結した協定等の事前の取り決めに基づき実施されることとなりますが、

  • 広域避難先として予定していた地方公共団体も被災するおそれが高いため、居住者等の受入れが困難となる
  • 協定による対応として想定していた規模以上の災害が発生するおそれがある場合には、追加で他の運送事業者に要請する必要が生じる

など、事前の取り決めが十分に機能しない事態も想定されます。

 以上を踏まえ、地方公共団体間や地方公共団体と運送事業者間の協定締結の促進を図りつつも、災害が発生するおそれがある段階における広域避難等の円滑な実施を確保するため、地方公共団体間の居住者等の受入れや、地方公共団体と運送事業者間の居住者等の運送に係る協議規定を整備しました。

⑵ 災害対策の実施体制の強化

 災害の大規模化や激甚化、また、災害時における円滑かつ迅速な対応についての社会的要請の高まりに対し、

  • 非常災害対策本部の本部長の内閣総理大臣への変更
  • 非常災害に至らない規模の災害における内閣府特命担当大臣(防災)を本部長とする特定災害対策本部の設置

等の措置を講じ、災害対策の実施体制の一層の強化を図ることとしました。



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内閣府政策統括官(防災担当)

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