防災の動き



災害時情報集約支援チームISUT(アイサット)出動!
〈国立研究開発法人防災科学技術研究所 臼田裕一郎〉

1 経緯

災害時情報集約支援チームISUT(アイサット)ロゴ

災害大国である我が国では、毎年多くの自然災害が発生します。令和元年は、6月18日に山形県沖を震源とする地震、九州南部を襲った6月下旬からの大雨、佐賀県を中心に浸水被害が発生した8月の前線に伴う大雨、千葉県や伊豆大島等が暴風被害を受けた台風15号、東日本全体で広域同時多発災害となった台風19号等と、極めて大きな自然災害が立て続けに発生した年となりました。

災害発生時、その対応のため、多くの機関・団体は同時並行で活動します。救助、避難所支援、道路啓開、インフラ復旧、物資供給、ボランティア活動など、これらを効率よく的確に行うためには、機関・団体間で、その災害に関する状況認識を統一する必要があります。そこで重要となるのが「情報」です。互いに知っていることを「情報」に表し、互いに共有することで、互いに知らないことをなくし、互いの活動の歩調を合わせたり、役割分担したりすることが、緊急事態である災害時には重要となります。

この情報共有を支援するために、内閣府はISUT(アイサット:Information Support Team、災害時情報集約支援チーム)を立ち上げました。平成30年度に試行を重ね、大阪府北部の地震、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、北海道胆振東部地震での実災害適用を経て、令和元年より本格運用が開始されました。

ISUTのメンバーは、現時点では内閣府と国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)で構成されています。ISUTの出動は、内閣府の情報先遣チームが派遣されることをきっかけに決定します。ISUTが集約・共有する情報は多岐に渡ります。震度分布、降水量分布、停電・通信途絶状況、道路通行可否状況、避難所状況、給水・入浴支援箇所、衛星画像、空中写真、ドローン画像、等々。所管の枠を超え、組織の横串を刺す形で情報を一元的に利用できるようにする点が特徴です。

システムとして、防災科研が開発したSIP4D(エスアイピーフォーディー:Shared Information Platform for Disaster Management、基盤的防災情報流通ネットワーク)を活用して情報を共有し、一般公開できる情報はNIED-CRS(エヌアイイーディー・シーアールエス、防災科研クライシスレスポンスサイト、図1)、公開できない情報はアクセス制御をかけた災害対応機関限定のISUT-SITE(アイサットサイト)という地図システム上に可視化します。

図1 防災科研クライシスレスポンスサイト(令和元年 台風19 号)

図1 防災科研クライシスレスポンスサイト(令和元年 台風19 号)

被災地の現場では、主に都道府県の災害対策本部に入ります。そこで、地方公共団体はもちろん、府省庁のリエゾンや派遣チーム、自衛隊、DMAT等の保健医療福祉支援チーム、インフラ復旧を担う指定公共機関等と連携し、情報の集約・共有を支援します(図2)。

  • 図2 情報の集約・共有支援

    図2 情報の集約・共有支援

  • 図2 情報の集約・共有支援


特に、現場では毎日、本部会議や連絡会議が開催されますが、その際、これらの地図を示し、状況を目で確認しながら調整や協議を行えるよう支援しています(図3)

図3 関係省庁連絡会議の様子

図3 関係省庁連絡会議の様子

台風15号の際は、千葉県庁に入りました。特に課題となっていたのは電気・通信の復旧で、その妨げとなっていたのが倒木です。電力会社や通信会社が復旧に向かっても、倒木によって道が塞がれ、復旧作業はもちろん、その先の被害状況も掴めないという事態が長く続きました。そこで、内閣府、県、自衛隊、総務省、電力会社、通信会社が一致団結し、ISUTが提示した共通様式を使って各組織が倒木箇所の位置を入力し、それをISUTが地図化するという流れで状況認識の統一を図ることとなりました。その地図を共有し、活動の進捗状況を確認したり、倒木撤去の優先度を決めたりするなど、地図が大いに活用された事例となりました。

台風19号では、災害救助法が適用された自治体数が、東日本大震災や昨年の西日本豪雨を超え、390に及ぶなど、広域に被害が発生しました。ISUTは千葉県に加え、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、長野県に派遣されることになりました。その中で、千曲川が破堤した長野では、多くの災害廃棄物が道や広場にあふれ、復旧活動を妨げる事態となり、国、県、市、自衛隊、社協、ボランティアによる「One Nagano」という協働活動が始まりました。その際、関係組織が災害廃棄物の位置や規模の情報を集約し、ISUTが地図化したものが図4です。「One Nagano」では、この地図に基づいて、昼間は行政・市民・ボランティアが点在する廃棄物を集積地まで移動し、夜間は自衛隊が集積地から地区外に排出するという活動が日々行われました(図5)。この活動は、人と人、組織と組織、そして情報が一体となって活動した事例となりました。

図4 災害廃棄物置場・運搬ルート

図4 災害廃棄物置場・運搬ルート

図5 ボランティアとの情報共有

図5 ボランティアとの情報共有

ISUTは運用が始まったばかりですが、令和元年の災害対応を経て、組織横断での情報共有の重要性、有効性はさらに明確となりました。一方で、内閣府と防災科研だけで全てを担うことは不可能です。広域・甚大な災害になるほど、協働体制が不可欠となります。日本全体で「ONE TEAM」となるよう、ぜひ、この活動に対し、各機関・団体からの積極的な参画を期待しております。


●防災科学技術研究所

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