防災の動き

平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難

1 はじめに

平成30年7月豪雨では岡山県・広島県・愛媛県を中心に河川の氾濫、土砂災害等が多数発生し、死者・行方不明者数が200名を超えるなど、近年稀にみる甚大な被害となりました。

今回の豪雨では、気象庁の緊急会見など、深刻な被害が発生する恐れがあるとの情報が事前に多く発信されていました。また、気象状況等の悪化に伴い、多くの自治体から避難勧告等の避難行動を促す情報が出されていたものの、自宅に留まる等により、多くの方が亡くなるという結果になりました。

今回の豪雨を教訓とし、避難対策の強化について検討するため、政府は昨年8月に中央防災会議防災対策実行会議の下に「平成30年7月豪雨による水害・土砂災害からの避難に関するワーキンググループ」(以下、「WG」)を設置しました。WGでは、被災の大きかった岡山県、広島県、愛媛県での現地調査を踏まえ、今後実施すべき対策について議論が行われ、昨年12月に報告がとりまとめられました。

  • 図1 浸水被害の状況(岡山県倉敷市真備町)
    図1 浸水被害の状況(岡山県倉敷市真備町)
  • 図2 土砂災害の状況(広島県安芸郡坂町小屋浦付近)
    図2 土砂災害の状況(広島県安芸郡坂町小屋浦付近)

2 報告の概要

今後の水害・土砂災害からの避難対策への提言について、下記のとおりとりまとめられました。

ⅰ これまでの行政主導の取組み の改善と防災行政の現状
行政は防災対策の充実に不断の努力を続けていくが、突発的に発生する激甚な災害に対しては、行政主導のハード対策・ソフト対策には限界がある。国民全体での共通理解のもとで住民主体の防災対策に転換していく必要がある。

ⅱ 目指す社会
これまでの「行政主導の取組みを改善することにより防災対策を強化する」という方向性を根本的に見直し、住民が「自らの命は自らが守る」意識を持って自らの判断で避難行動をとり、行政はそれを全力で支援するという、住民主体の取組みの強化による防災意識の高い社会を構築する必要がある。

ⅲ 実現のための戦略
「自らの命は自らが守る」という意識が社会での共通認識となり、住民が適切に災害を理解し、防災対策や避難行動がとれるよう、住民と行政が一体となった取組みを全国で展開する。


  • 図3 避難に対する基本姿勢

    図3 避難に対する基本姿勢

3 おわりに

今回の豪雨災害は、行政主導の避難対策の限界を明らかなものとし、国民一人ひとりが主体的に行動しなければ命を守ることは難しいということを我々に突き付けました。

WGの報告では、行政に対し、引き続き避難対策の強化に向け全力で取り組むことを求める一方、国民に対し、自然災害に関心を持つことや行政に命を委ねず最後は自らの判断で避難すること、一人では避難が難しい方の援助など地域で助け合うことなどを強く求めています。

本報告を受け、内閣府では、今後関係省庁と連携し、このような住民の主体的な避難の支援に向け、避難情報の分かりやすい提供のため避難勧告等の発令に関するガイドラインを改定するなど、本報告を踏まえた具体的な取組みを速やかに実行に移してまいります。



●[参考資料]「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について(報告)」

▶https://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigai_dosyaworking/index.html QRコード



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