Disaster Management News―防災の動き

「津波防災の日」・「世界津波の日」の取組みについて

はじめに

わが国では、東日本大震災が発生した平成23年、津波対策について国民の理解と関心をより一層高めるために「津波対策の推進に関する法律」により毎年11月5日を「津波防災の日」として制定しました。また、平成27年12月の第70回国連総会本会議で同日が「世界津波の日」として制定されました。11月5日が「津波防災の日」として選ばれたのは、嘉永7年(1854年)のこの日、安政南海地震による大津波が和歌山県広村(現・和歌山県広川町)を襲った際、庄屋・浜口梧陵が収穫されたばかりの稲わらに火をつけて、暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に避難させ命を救った「稲むらの火」の逸話に因ります。

毎年、11月5日の津波防災の日を中心に、全国各地で津波防災訓練や意識啓発の取り組みが実施され、内閣府においては、今年度も全国各地での防災訓練や啓発イベント等の各種取組みを実施しています。以下、内閣府で実施した各種取組について報告いたします。

地震・津波防災訓練

内閣府では地方公共団体と連携した住民参加型の地震・津波防災訓練を全国10ヶ所で実施しています。この訓練には約2万5000人が参加し、①地震発生時に我が身を守る(シェイクアウト訓練)、②揺れが収まった後に最寄りの避難場所等へ避難(津波避難訓練)を行いました。地域によって避難所開設、炊き出し、応急救護といった各種訓練も実施しています。

加えて、内閣府では全国の地方公共団体、民間企業などに対し、11月5日の「津波防災の日」の前後での地震・津波防災訓練の実施を呼びかけています。

今年度も全国各地の約300の団体により、住民参加の避難訓練などが実施されました。

夜間における津波避難タワーへの避難訓練(高知県黒潮町)

小学生による避難訓練(和歌山県広川町)

応急救護訓練(神奈川県茅ヶ崎市)

シェイクアウト訓練(福岡県芦屋町)

啓発イベント

内閣府では平成23年より「津波防災の日」にシンポジウム等のイベントを開催しており、今年度は11月5日(土)に東京都・千代田区のイイノカンファレンスセンターで啓発イベント「東日本大震災の教訓を未来へ~いのちを守る防災教育の挑戦~」と銘打って啓発イベントを実施しました。

第1部 釜石市、黒潮町の中学生同士の交流

オープニングでは、松本洋平内閣府副大臣より、「南海トラフ地震や首都直下地震のような巨大災害に備え、避難行動の確認や備蓄など、日常生活の中で具体的な取組が進むことを期待」する旨挨拶がありました。

次に、宮城県釜石市と高知県黒潮町の中学生同士で交流するセッションが行われました。東日本大震災において日頃の「いのちを守る防災教育」により、生徒たちが主体的な避難行動を実践し、多くの命が救われたことで知られる岩手県釜石市から、釜石中学校の生徒を東京に招くとともに、南海トラフ地震の被害想定で最大津波高34mが想定される中で、犠牲者ゼロを目指す高知県黒潮町の中継会場に黒潮町立大方中学校、佐賀中学校の生徒が登壇し、両地域の中学生による取組の発表がありました。

まず、釜石中学校の生徒達から、当時の被災経験の振り返りやそこから得た教訓の他、「釜石の災害史の学習」、「今後の釜石をどうしたらいいのか話し合った上での、市役所に対する提案活動」、「避難所のトイレ問題の学習」、「『防災手ぬぐい』の製作・配布」など、現在行っている取組について、発表がありました。

続いて、大方中学校、佐賀中学校の生徒が、「防災マップ作成」や、「保育園から高校まで合同の実践的な避難訓練」、「家庭における避難時の持ち出し袋の取組」など、地域に溶け込んだ活動を中心に紹介しました。

それぞれの発表に対し、釜石の防災教育に携わったことで知られ、高知県・黒潮会場から出演した片田敏孝群馬大学大学院教授は、「当時小学生だった皆さんは、いろいろな辛いことを経験されたでしょうが、それを次の災害に必ず役立てようと、今そんな思いで実践してくれています。その積極的な姿勢を高く評価したいと思います」(釜石中学校)、「犠牲者ゼロを目指し、小さな子供から高齢者のことも考え、地域において中学生に何ができるか、考えられた取組」(大方中学校・佐賀中学校)と講評しました。

そして、黒潮町の生徒から被災を乗り越えた釜石市の生徒に対し、「釜石に倣い、防災教育に取り組みます。これからも教訓の発信をしてください。」、釜石市の生徒から被害者ゼロに挑む黒潮町の生徒に対し、「これからも復興に積極的に参加し、経験を伝えていきます。これから起こるかもしれない災害に備え、自分の命は自分で守ることを大切に、一緒に頑張りましょう。」と、両地域の生徒によるエールの交換が行われました。

オープニングに登場した津波防災ひろめ隊のメンバー
(ふなっしー・ちっちゃいおっさん・くまモン・しんじょう君・きいちゃん)
松本副大臣と共に記念撮影

第2部 基調講演とトークセッションで防災教育の重要性を再確認

第2部では、東北大学災害科学国際研究所所長の今村文彦教授が基調講演を行い、東日本大震災の振り返りや、津波の発生メカニズムなどについて解説しました。

その後、今村教授をメインコメンテーターに、釜石市の地域防災の実践者である元釜石市消防防災課長の末永正志氏、東日本大震災の被災経験を経て岩手県職員として防災教育に携わることを目指す群馬大学2年生の小笠原舞さん、そしてゲストとして女優・作家の中江有里さんを迎えたトークセッションを開催し、過去の教訓をもとに家庭や地域で今後発生する災害にどのように向き合うべきか、防災教育を中心に意見を交わしました。

来場者へのアンケートによると、9割以上の方が「防災意識の向上に役立った」と答え、中学生の取組みへの賛辞や今後身近な防災に取り組むといった意見が寄せられました。

なお、当日の模様については、TEAM防災ジャパンホームページ)にイベントレポートが掲載されているほか、ライブ配信した動画も視聴いただけます。また、当イベントで使用した啓発動画も視聴可能ですので、ぜひご覧ください。

トークセッションの模様

おわりに

内閣府ではこれらの訓練、イベントに加え、啓発ポスターの掲示や全国のコンビニ、スーパー等のPOSレジディスプレイでの広報画像の表示、映画館、商業施設モニター等での啓発動画の上映、「津波防災ひろめ隊サイト」による情報発信など、様々な媒体を活用し、津波防災に対する啓発に取り組んでいます。

このような取組みについては、行政だけでなく、各種関係団体や民間企業、そして国民の皆様が一体となって実施することが非常に重要です。今後発生が懸念される南海トラフ地震などの巨大災害に備え、津波被害の軽減や防災意識の向上に向け、継続的に取組を実施していただけるようお願いします。

レジディスプレイで表示した広報画像
〈内閣府(防災担当)地方・訓練担当 普及啓発・連携担当〉

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