特集 津波防災の推進について

「11月5日は津波防災の日」

平成23年に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に伴う大規模な津波災害により、東北地方から千葉県に至る太平洋沿岸地域において、多くの尊い命が奪われました。これを教訓として、同年6月に津波災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的として、「津波対策の推進に関する法律」が制定され、同法の中で、11月5日が「津波防災の日」と定められました。平時から、家族と逃げる場所を決めておくことや、自らの命を守ることに全力を尽くすなど、津波に対しての備えをすることにより、被害を最小限に止めることができます。「津波防災の日」を契機に、津波に対する防災意識を高めることが重要です。

津波から命を守る

津波から命を守るために一番にとるべき行動は「素早い避難」です。

東日本大震災の大津波が東北地方の沿岸部に甚大な被害を及ぼした中、岩手県釜石市内の児童・生徒の多くが無事であった事例が「釜石の出来事」として反響を呼んでいます。これは群馬大学大学院の片田敏孝教授が提唱する「津波避難の三原則」、第一「想定にとらわれるな」、第二「最善をつくせ」、第三「率先避難者たれ」を忠実に実行した結果であったと言えます。

この三原則の中で一番大事なことは、第一の「想定にとらわれるな」です。例えば各地域で作成している「ハザードマップ」等に記載されている警戒情報は、「あくまで予想」と考えること。相手は自然でありどんなことが起こるか分かりません。自分の居る場所がハザードマップでは安全と判断される場所であっても油断しないことです。

第二の「最善をつくせ」とは、一時的に避難した場所が決して一番安全な場所ではなく、その場所に留まることに固執せず、より安全な別の場所に避難できるかを考える、そのときに出来る最善をつくして避難行動をすることです。

第三の「率先避難者たれ」とは、通常私たちは「自分は被害に遭わないだろう」と考えがちですが、この考えを排除し、率先して避難することです。「想定」に頼らず自分たちで判断するのは、とても難しいことです。しかし、いざというときには想定以上のことを判断しなければならない事態が起こることを考えておきましょう。

東日本大震災の津波による被害(宮城県気仙沼市)

平時の備えと訓練参加

今後発生が危惧される、南海トラフ地震の被害想定の中で、津波による人的被害(死者数)は、最大で約23万人と試算されています。しかし、住民一人一人が迅速に避難を開始し、強固で安全なできるだけ高い位置に避難するなど、主体的な避難行動を行うことで、死者数は4.6万人と約2割にまで減少することが出来ると試算されています。

こうした適切な避難行動を発災時にとるためには、実践的な訓練を重ねることで、一人一人がとるべき行動を体に刻み込み、平時から備えることが極めて重要です。

また、東日本大震災の教訓を踏まえて、避難訓練の内容についても見つめ直すことが重要です。市町村など地方公共団体が主体となって行われる訓練は、避難する行動や場所等があらかじめ決められているものが主流でした。しかし、災害時においては、このような訓練で避難している場所が、必ずしも安全であるとは限りません。日頃から地域において、地震、津波、台風など各種の自然災害に対応した、「自分の命を守る」ための迅速な避難行動や避難場所について、これまでの知識にとらわれることなく、自らが主体的に考え訓練に参加し、備えておくことが重要になります。

内閣府では、11月5日の「津波防災の日」を中心に、内閣府と関係地方公共団体が共催して、全国10か所(北海道日高町、青森県むつ市、福井県福井市、茨城県日立市、静岡県東伊豆町、兵庫県香美町、愛媛県西予市、鳥取県鳥取市、福岡県苅田町、沖縄県与那原町)において住民参加の避難訓練を実施するなど、広く自主的な訓練の呼びかけを行い、多くの方に参加していただくよう努めてまいります。また、200団体以上の地方公共団体、民間企業等が、津波避難訓練や安否確認訓練等の訓練を計画しており、このような訓練等の取組に参加者する方を約100万人規模にまで充実させていきます。

東日本大震災の津波によって被害を受けた岩手県宮古市

東日本大地震の津波で破壊された宮城県仙台市の工場(消防科学総合センター 提供)

津波防災ひろめ隊 2015‒2016

津波による被害を最小限に軽減するために、防災意識の向上、及び適切な避難行動の定着・浸透が不可欠です。

そのため「津波!?高いところへ!」などの津波防災に関するシンプルなメッセージを幅広くお伝えしようと考えております。

内閣府のこのような主旨に賛同してくれた、全国的に有名で発信力のあるご当地キャラクター等が「津波防災ひろめ隊」を結成し、さまざまな形で応援することにより、地域密着型の津波防災の取組を展開してまいります。

平成27 年9月7日には、「津波防災ひろめ隊」のコアメンバーが集結して、お披露目会を開催しました。当日は、山谷内閣府特命担当大臣(防災)とともに、コアメンバーである「しんじょう君」、「ちっちゃいおっさん」、「ふなっしー」、「くまモン」、「きいちゃん」から、津波防災のポイントが紹介されました。一つ目は、「津波が来たら各自がただちに全力で逃げること」、二つ目は、約束事として①家族と逃げる場所を決めておく②自らの命を守ることに全力を尽くすと言うものです。このポイントはとても重要なことなので、皆様もよく覚えていただき、ご家族の皆様とも共有してください。

津波避難ポーズ

シンプルなメッセージとともに、国民の皆様により親しみやすく、津波防災の意味をしっかりと覚えていただくために「津波避難ポーズ」も考案しました。
このポーズは、「大きな地震がおこったら、津波が来るおそれがあるので、速やかにできるだけ高いところへ避難しましょう」という、津波防災のキーメッセージを、体感して身に着けていただくために考案したものです。前足を大きく踏み出し、両手を大きく振る「全力で避難」している動作と、上を見上げて上体を反り返らせる「高いところを目指して」いる動作とを融合させることにより、「高いところを目指して全力で避難している」様子を表現しています。

津波避難ポーズ

みんなで津波避難ポーズ(9月7日お披露目会)

「津波防災ひろめ隊サイト」の運用開始

津波防災の特設サイト「津波防災ひろめ隊サイト」も同時に運用を開始しました。サイト内では、「津波防災動画」、「全国各地の訓練イベント情報」、「津波のしくみ」など掲載しており、「津波防災ひろめ隊」の動画を一人でも多くの方々に御覧いただけるよう、ユーチューブのオフィシャルチャンネルを開設しましたので、ぜひ御覧ください。

津波防災ひろめ隊サイトトップページ

コラム 津波防災の日

平成23年6月に、津波対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とした「津波対策の推進に関する法律」が制定されました。この法律では、津波対策に関する観測体制強化、調査研究推進、被害予測、連携協力体制整備、防災対策実施などが規定されています。そして、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるために、11月5日を「津波防災の日」とすることが定められました。
11月5日は、今から160年前の安政元年11月5日(太陽暦では、1854年12月24日)に発生した安政南海地震で、紀州藩広村(現在の和歌山県広川町)を津波が襲った時、濱口梧陵(はまぐちごりょう)(儀兵衛)【写真1】が、暗闇の中で逃げる方向を見失わないように、稲むら(取り入れの終わった稲わらを屋外に積み重ねたもの)に火をつけて、村人を安全な場所に誘導したという実話にちなみます。【写真2】
この実話は、後に「稲むらの火」の物語として、地震後の早期避難の重要性を伝える優れた防災教材として、教科書を始め、マンガ、紙芝居など様々な形で紹介されています。また、国内に限らず、翻訳されアジア地域の8か国にも提供されています。

写真1 濱口梧陵(儀兵衛)(1820-1885)

写真2 濱口梧陵が稲むらに火をつけようと松明を持って走る姿の銅像。広川町役場前の稲むらの火広場

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.