特集 津波防災の日

2015年3月に仙台市で開催される第3回国連防災世界会議に向け、会議準備もラスト・スパートをかける段階に入ってきました。本稿では、最近の主な動きについてご紹介します。

10月31日に、学識経験者、防災関係機関、仙台市、東北4県等の委員で構成される「第3回国連防災世界会議に係る国内準備会合」(第4回)を開催し、国連防災世界会議の全体構成(案)や日本側準備状況等を報告するとともに、11月にジュネーブで開催される第2回政府間準備会合(後述)に向けての我が国の発信内容について検討を行いました。

第3回国連防災世界会議のキービジュアル。同会議のイメージデザインとなります。

11月17、18日にはジュネーブで第2回政府間準備会合が開催されました。この準備会合は、国連全加盟国と国際機関、NGO等の多様な主体(マルチステークホルダー)が参加し、現行の国際的な防災の取組指針である「兵庫行動枠組2005-2015」(HFA)の後継枠組(ポストHFA)の素案について、各国で検討を行うとともに、本体会議の実施手法について決定することを目的として開催されたものです。

第2回政府間準備会合の全体会合の議場風景

全体会合では、ワルストロム国連事務総長特別代表(SRSG)より本件会議に係る国連側の準備状況について説明があった後、日本政府代表より共同議長、国連国際防災戦略(UNISDR)事務局、各国の協力に対し謝意を表明するとともに、グリーン・カンファレンス(ペーパレス化やごみの分別を進めるなど、環境負荷の少ない会議)を目指すこと、アクセシブル・カンファレンス(障害者も苦労することなく会議に参加できるよう、バリアフリーや手話通訳、字幕等を用意した会議)として準備することを説明し、改めて各国からの首脳を含む閣僚級の参加について依頼しました。
その後、国連防災世界会議の成果となる、ポストHFA及び政治宣言について、各国が意見を表明しました。各国からは、開発分野の重要な課題である「持続可能な開発目標」(SDGs)や「気候変動適応」とポストHFAとが整合が取れた議論とすべき、との意見が多く見られました。また、HFAの10年間の取組を評価し、ポストHFAは現行のHFAとの継続性が重要であるとの意見や、子供や高齢者、障害者などの避難行動要支援者への配慮、コミュニティや女性、先住民などを巻き込んだ防災の取組の重要性が指摘されました。
また、女性グループや民間企業グループ、自治体グループ、青少年グループ、NGOグループ、障害者グループ等、マルチステークホルダーのセッションも開催され、各グループは防災という分野横断的な課題に対し、各自が持つ問題意識を国際社会に向けて発信しました。

日本財団とUNISDRとの間で交わされた、アクセシブル・カンファレンス合意書締結の記念写真

女性グループからは、女性は防災において重要な役割を果たしており、人材育成が重要との意見があり、障害者グループからは、全ての参加者が積極的に参加し、貢献できることが重要であり、政策には障害者の視点が含まれるべきとの意見が出されました。近年の国際的な防災の議論では、マルチステークホルダーの巻き込みが重要視されており、彼らの意見はポストHFAの議論においても大きな意味を持つことになります。
ポストHFAの交渉は、タイ大使とフィンランド大使の共同議長の下、共同議長作成のゼロドラフト(原案)に対する各国からのコメントをテキスト上に反映させる形で、初日は深夜過ぎまで行われました。我が国としては、ポストHFAは、我が国にとって重要な視点が反映されるとともに、各国の防災実務者にとって使い勝手のよい実用的な文書であるべきと考えています。ポストHFAの交渉は続きますが、我が国は今後も交渉に積極的に参画して行きます。
(現在の交渉テキストは、ドラフト・ワンとして国連防災世界会議のHPで公開されています。)

第2回政府間準備会合でのポストHFA交渉会場の協議風景

11月の第2回政府間準備会合で共同議長より提案されたポストHFAのゼロドラフト(原案)の構造(仮訳)

国連防災世界会議に向けた様々なイベント

11月29日には、学術フォーラム「東日本大震災・阪神淡路大震災等の経験を国際的にどう活かすか」が六本木の日本学術会議講堂で開催されました。このフォーラムでは、我が国の防災・減災に関連する諸学会及び社会経済や医学等、30もの幅広い分野の学会からなる「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会」において、東日本大震災や阪神・淡路大震災をはじめとするこれまでに我が国が経験した災害から得られた教訓・知見について議論してきたことを取りまとめており、その成果が英文の共同声明として発表されました。分野を超えて、あらゆる視点から防災・減災について総合的に議論するこの取組の成果が、来年1月に開催される「防災・減災に関する国際研究のための東京会議」、更に3月の第3回「国連防災世界会議」へと繋がって行くことが期待されています。

学術フォーラムでの大西学術会議会長の講演

また12月3日には、内閣府男女共同参画局の主催により「防災・復興における女性の参画とリーダーシップ~第3回国連防災世界会議に向けてのシンポジウム~」が福島市内で開催され、全国各地から約150名の参加がありました。UNISDR松岡駐日代表による基調講演に続き、「過去の災害対応の経験と教訓~男女共同参画の視点から~」をテーマにパネルディスカッションが開催されました。阪神・淡路大震災や東日本大震災、広島豪雨災害等の過去の災害時に明らかとなった、男女共同参画の課題について各スピーカーから発表がありました。シンポジウムでは、地域の人々が男女ともに力をつけ、横のネットワークを広げること、女性がリーダーとして活躍するためには、トレーニング・人材育成が不可欠であることが、会場の参加者と共有されました。

シンポジウム「防災・復興における女性の参画とリーダーシップ」におけるパネルディスカッション

12月5日には、第3回国連防災世界会議先行イベントとして、シンポジウム「マルチセクターの防災」が日比谷コンベンションホールにて開催されました。これは、東日本大震災の被災地での活動経験を有する約100団体の市民社会組織(CSO)から構成される、2015防災世界会議日本CSOネットワーク、内閣府及び外務省の共催により、ポストHFAに対する市民社会の声を聴くことを目的として開催したものです。パネリストからは、防災の取組において市民社会組織が大きな力を発揮できる、自助・共助への積極的な参加など、市民社会組織が有する貴重な経験や提案などの発言が続き、活発な意見交換が行われました。

マルチセクターの防災

進みゆく会議準備

また、本体会議で特定テーマを取り上げて議論するワーキング・セッションの準備も関係者間で進んでいます。現在、各ワーキング・セッションに関心を持つ各国政府、国際機関、ステークホルダー等が運営チームを組織し、その中でセッションの話題や発表者、期待される成果などについて、電話会議やテレビ会議等で議論しています。
国際機関や政府機関、NGOや市民等、幅広い主体が防災に関する知見・教訓や問題意識を共有したり、交流したりする関連事業については、当初想定を大幅に超える申し込みがあり、仙台開催実行委員会では会場の追加確保を行うなど、本会議への関心の高まりに対応すべく準備しているところです。
会議本番まで残り3か月となりましたが、会議の成功に向けて、国際連合、国内関係機関と緊密に連携し、関係省庁一体となって取り組んでまいります。

仙台市内中心部の本体会議・関連事業の主な会場(沿岸部の夢メッセみやぎや、隣接する他県の会場でも関連事業が実施されます)

国連防災世界会議の全体行程(案)

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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