「楽しみながら、しっかり学ぶボウサイ」を始めよう! 第1回

漫画で、災害時の知恵や工夫を学ぶ

東日本大震災以降、防災教育の重要性はますます高まってきています。このページではNPO法人プラス・アーツが開発してきた、「子どもたちと楽しく防災を学ぶ」プログラムやツールの紹介と、活用現場のレポートを併せて掲載していきます。

●東日本大震災の体験から生まれた防災教育教材「とっさのひとこと」

大地震が起きた後、「津波が来るぞー!」と、近所の人たちが避難しています。一方、家の中ではお母さんが「大事な食器、割れちゃった…」と座り込んでいます。焦っている男の子はお母さんの服を引っ張って言います。「○○○○○」。

防災教育教材「とっさのひとこと」は、このような災害時の状況を3コマ漫画で表現し、3コマ目のセリフを空白にしています。漫画を読み進めながら、描かれている状況を理解し、最後に「自分だったらどんなことを言うか」を考えます。こうしたプロセスが、災害時にとるべき行動への考察につながっていきます。また「漫画」という表現方法を用いたことで、登場人物が置かれた状況や気持ちが疑似体験しやすくなり、想像力と共感力を高められるようになっています。
この教材は、プラス・アーツと、国連に公認された子ども支援の国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが共同で開発しました。東日本大震災の被災地である岩手県と宮城県の学童保育施設や児童館の子どもたちと指導員を対象とした防災研修を共に行った際、子どもたちから災害時に役立ったさまざまな知恵や工夫の話を聞きました。被災者の教訓から学ぶ重要性を再認識した私たちは、50名の方たちにインタビューを行い、「困ったこと」「たいへんだったこと」「工夫してしのいだこと」などをお聞きしました。この体験談をもとに制作した「とっさのひとこと」はプラス・アーツのホームページから無料でダウンロードできます(下記参照)。東日本大震災の教訓を次の災害への備えに活かすための教材としてぜひご活用ください。

防災教育教材「とっさのひとこと」

【特徴】
1東日本大震災の被災体験を反映
2「漫画」という親しみやすいツール
3対象者が主体的に参加できる
4学校、イベント、ワークショップなどさまざまな場で使用可能
5無料でどなたでも入手可能

【問い合わせ先】
公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
TEL 03-6859-6869
MAIL drr-tossa@savechildren.or.jp
NPO法人プラス・アーツ
TEL 03-5655-2369
MAIL tokyo@plus-arts.net

学びの場──宮城県東松島市立矢本第二中学校

宮城県東松島市立矢本第二中学校が2014年1月16日に全校一斉で実施した防災教育授業に「とっさのひとこと」パイロット版が取り上げられました。1年生と2年生は「非常持ち出し袋を準備しておく」というトピックを取り上げ、2年生はグループでかばんの中に入れて持ち出せる物3つを選び、その理由を考えました。3年生は避難所内に「子どもたちが安心・安全に過ごせる場所をつくる」を取り上げ、体育館を避難所と見立ててレイアウトを考えました。お年寄りはトイレの近くにするなどの心配りが見られました。
授業後の生徒へのアンケートでは、95%が「ためになった」と答え、「こんなことはめずらしい」と先生からお聞きしました。「漫画だったから分かりやすかった。自分でみさきちゃん(登場人物)の言ったことを考えるのが楽しかった」「防災に対する意識が高くなりました」「東日本大震災で学ぶことができた教訓をこれから起こるかもしれない災害に生かしていきたい」など、生徒の感想から、防災について楽しみながら学び、東日本大震災の教訓を生かしていくという本教材の意図が伝わったと思われました。
矢本第二中学校は1階が津波で浸水し被災した生徒が多くいます。「とっさのひとこと」は、「震災を体験した生徒には物足りない気がします」という先生の意見がありました。一方で、生徒同士また生徒と先生の間で震災についてあまり話す機会がなかった中、「『あの時あれがあって助かった』など、体験をもとにした意見交換がしっかり行われていてよい雰囲気だった」「自らの経験を思い出し考えを表現している姿やアイデアを積極的に出す姿が見られた」など、体験を共有できてよかったという意見もありました。
先生方は、生徒が将来地域における防災のリーダーになれるように中学校で学び、巣立っていってほしいという願いをもっておられ、「とっさのひとこと」の活用がその一助となることが期待されます。(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

ワークショップ「非常持ち出し袋に入れるものについて考える」の様子

NPO法人プラス・アーツ www.plus-arts.net
教育/まちづくり/防災/福祉/環境/国際協力といった社会の既存の分野に対して、アート的な発想やアーティストの既成概念にとらわれない創造力を導入し、それぞれの分野が抱えている課題や問題を解消し、再活性化させることを活動目的に掲げる。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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