Disaster Management News—防災の動き

災害時の避難に関する専門調査会報告

近年、我が国では短期間強雨が増加傾向にあり、中小河川等での河川氾濫の発生の危険性が増しています。平成21年7月の中国・九州北部豪雨では、土砂災害が発生し、福祉施設において避難が間に合わず犠牲となる事例がありました。また、同年8月の台風第9号では、避難場所への移動中に犠牲となったと見られる事例がありました。一方で、災害対策基本法の制定当時と比較して、氾濫流等の外力への耐性が強い鉄筋コンクリート造りの住居構造の増加、スマートフォン等の個人が携帯できる情報端末の普及、高齢化の進展等、避難を考える上での社会環境は変化しています。

こうした近年の大雨災害の課題と社会環境の変化を背景に、平成22年4月に中央防災会議の専門調査会として「災害時の避難に関する専門調査会」(座長・林春男)が設置され、平成24年3月に報告がまとまりました。

本専門調査会の報告では、避難の考え方の明確化、避難準備情報・避難勧告・避難指示の実効性の向上、適切な安全確保行動を支えるための情報提供のあり方、行政・地域の担い手・住民等の防災リテラシー(災害から自分の身を守る知識、技能、実践力)の向上の徹底について、方向性が示されました。

避難の考え方の明確化については、一般的に「避難」ということについて、避難先として指定されている小中学校の体育館や公民館等といった公的な施設へ移動することを前提として捉えている場合が多いことが課題として挙げられています。既に河川氾濫が発生している場合等は、避難先への移動がかえって危険を伴うことがあります。また、都市部等人口が集中した地区においては、多くの住民等が避難先へ移動すると、避難先の収容量を超えてしまったり、避難路における混雑が発生したりすることで、適切な避難を行うことができないことも懸念されます。

こうしたことから、災害時の安全確保行動を図表の様に整理し、災害の発生に対して住民等の安全を確保するためには、状況によって、自宅等の建物の上階への移動やその場に留まるような行動も有効であるという考え方を示しました。ただし、早期の避難を心がけるのが前提であり、このような行動は、緊急時・切迫時の次善の策である場合が多いことに留意が必要です。

また、情報伝達においては、行政の出す避難勧告等の情報が、住民等に届かなかったり、十分理解されずに、適切な安全確保行動に結びついていない場合があります。行政は、わかりやすい情報を、防災行政無線のみならず、携帯電話・スマートフォン等の個人所有の情報端末を用いたエリアメール・SNS等あらゆる手段を活用して伝達することが必要です。

さらに、災害対応を迅速に行うためには、行政と、災害対応時の地域の担い手、災害時要援護者の支援者、住民、企業等の連携した対応が求められています。そのために、住民等が地域の特性や個々の状況を踏まえ、目の前の現実から確かな情報を獲得し、自ら優先順位を判断し行動ができるように、防災教育を推進する必要があります。子どもの頃から自然の理や脅威について、また、その中でどのように対応すべきかを学び、さらに大人になって防災教育の指導者となった後に、どのように次の世代に伝えるかまでの視点で考えることが必要です。

災害時の避難に関する専門調査会の報告は、内閣府防災情報のホームページでご覧いただけます。
https://www.bousai.go.jp//kaigirep/chousakai/saigaijihinan/index.html

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