防災リーダーと地域の輪 第3回

ラジオ番組作りを通じて、防災を学び、地域との交流を深める

近い将来発生するとされている東南海地震、南海地震などで大きな被害が想定される和歌山県では、住民の防災意識も高まっている。紀の川市立荒川中学校では、地域住民を巻き込んだ" ラジオ番組"作りによる防災教育が大きな成果を挙げている。
番組録音を行う荒川中の生徒たち

和歌山大学の今西客員教授の指導を受けながら、番組録音を行う荒川中の生徒たち(於 和歌山大学)

和歌山県北部、その名の通り紀ノ川沿いに広がる紀の川市は、古くから水害が発生することもあり、住民の防災意識は比較的高かったという。中央構造線断層帯にも近く、東南海地震、南海地震だけでなく、活断層による直下型地震への備えも進んでいる。中学生を対象とした新しい防災教育への取り組みが、紀の川市立荒川中学校の「あらかわ防災ステーション」だ。
防災教育に意欲的だった前任の辻正雄校長が、和歌山大学防災研究教育センターの今西武客員教授に、中学生への防災教育の取り組み内容について相談したところ、「校内放送を利用した防災トーク番組作りによる啓発活動」を提案されたことがきっかけだという。
番組に出演するのは、生徒会の安全委員会に所属する生徒と地域の防災ボランティアの皆さん。昼休みの給食時間に合わせた約5分の番組だ。阪神・淡路大震災の被災者の体験をまとめて出版された「12歳からの被災者学」をもとに作成された内容で、子どもが大人に問いかけるという形式をとりながら、防災についての基礎知識がわかりやすくまとめられている。
生徒会の安全委員会の顧問として、生徒たちと番組作りに携わってきた中村誠志教諭は「はじめは、台本づくりなどが難しく、知識のない自分には荷が重いと思ったのですが、地元防災ボランティアの方の協力と、今西客員教授によるプランづくりから実践まで首尾一貫したサポート体制もあり、安心して生徒への指導に専念することが出来ました」と振り返る。
2008年11月26日、正式に「あらかわ防災ステーション」の立ち上げが決定。約2週間で台本が完成、12月20日には、第1回の録音が行われた。中村教諭によると、当初こそセリフの読み間違いが続出して、録りなおしも多かったというが、回を重ねるごとに生徒たちも慣れて、アドリブまで出るようになったと言う。
2年目の2009年には、神戸の被災者に対しての出張取材や、地域の住民とともに災害発生時に危険な場所などを探す「タウンウォッチング」などを実施。また、大災害が発生した場合には避難所となる学校の設備を再点検しながら、避難生活を想定した調査を行うなど番組内容を充実させてきた。
「特に神戸で被災者の体験を聞いてからは、生徒たちの意識が変わってきたのを実感しました。また、タウンウォッチングでは、地域の防災マップを作成、地域の方と一緒に形に残るものができたことで、生徒たちの満足度も高まったように思います」と中村教諭。
2年目の活動が終わった時点でのアンケートでは、放送に係わった生徒の75%が「防災知識が高まった」と答えたそうだ。また、56%が、「家庭で実践しようという意識がめばえてきた」と答えるなど、確実に効果が現れている。さらに、放送のリスナーである一般生徒からも「分かりやすい」という意見が数多く聞こえている。
中村教諭は「基本のシナリオは、他の地域でも使えるものです。生徒たちが、番組作りを通じて自ら防災について学べ、地域との交流も深めることが出来ますので、他の学校にも広がってほしいと思います」と話していた。
取材・文:河崎美穂
(写真提供 紀の川市立荒川中学校)

防災・安全マップ

生徒たちと地域住民が協力して作成した防災・安全マップ

被災者の方にインタビュー

神戸市では被災者の方にインタビュー

簡易トイレづくり

災害時に避難所となる校内体育館で簡易トイレづくりを体験

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