防災リーダーと地域の輪 第6回

子どもたちが見つけた楽しさが大人を動かした

三重県鳥羽市安楽島町(あらしまちょう)の子どもたちが取り組む防災活動は、世代を超えたふれあいを生み、地域の大切な資本になろうとしている。

 黄色いジャケットに身を包んだ子どもたちが、バインダーとペンを手に町をゆく光景に、「今年も始まったな」と町の人びとは思う。
 三重県鳥羽市安楽島町の子どもたちが、町内を点検して歩き、防災マップをつくる。7年前に第2回「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」(左下記事参照)に参加して以来、安楽島子ども会のマップづくりは町の風物詩となっている。

成功体験が伝統に

 安楽島子ども会が挑戦したマップのテーマは「地震・津波」だった。地震や津波が町を襲った時、安心な対策が取られている箇所は「青」、心配な所は「黄」、不安な所は「赤」で色わけして作ったマップが、思いがけず「審査員特別賞」を受賞した。
 「来年はどんなネタに取り組もうか?」
 子どもたちは消防団や地元の大人たちに話を聞き、一人暮らしの老人たちを訪ね、危険な箇所を見て歩き、話し合いそして考える。こうしてできあがった安楽島子ども会のマップは、毎年コンクールに入賞し、今年度の第7回では「安楽島防災MAP—ビフォー〜アフター」で防災担当大臣賞に輝いた。
 「ビフォー〜アフター」は、過去5年に及ぶ継続的な取り組みを子どもたちが実地検証し、改善された箇所と、そうでない箇所を色分けして明示したもの。改善された箇所は「緑色」で示し、例えば「階段に手すりが出来ている。ひなんする時に助かる」とコメントを書き、写真を貼り付けた。改善されていない箇所は「消火せんが土にうまっている → いざという時早くとりだせない」と「赤」で示し、写真も掲載した。そのほか、協力してくれた人たちの写真を貼り、新たに見つけた問題箇所を書き込んだ。これが「とても的確な内容で、非常にわかりやすい」と評価されたのだ。

「地域を巡り大人達と語り合い、防災マップをつくる安楽島町の子どもたち」(写真提供:中村欣一郎氏)

賞を超える価値

 子どもたちを指導し続けている中村欣一郎さんは、「参加してみると、防災への取り組みは地域の結束を図るとても優れたツール、受賞以上の価値と効果があることに気づかされます」と語る。
 マップ作りで歩いて、話をして、地域を知る。子どもたちは、たくさんの人たちと出会った。また、子どもたちに刺激されて大人たちも防災マップ作りを始め、中村さんは「顔の見えるコミュニティ」にどんどんなってきていると実感している。
 「地域の目に見えないインフラ整備である人間関係も一つの社会資本です。小学生のうちに、その基礎と言うか感性が磨かれている、そういう人材が財産だと思うんです」と中村さん。

2010 年度の「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で防災担当大臣賞を受賞

防災リーダーの一言

 子どもたちと一緒に歩き、地域を知ることが究極的な目的です。子どもたちと活動してみて初めてわかることがたくさんあります。社会とのつながりを学ぶことが彼ら自身の財産となり、社会の財産になると感じています。マップが出来上がらなくても、取り組んだ分だけ価値はありますから、多くの皆さんに第一歩を踏み出して欲しいと思います。

中村 欣一郎
なかむら・きんいちろう
安楽島子ども会

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内閣府政策統括官(防災担当)

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