防災リーダーと地域の輪 第5回

防災マップで子どもたちと地域の結びつきを深める

防火の夜回りに参加した子どもたちが、毎年違った視点から防災・防犯マップづくりに取り組む滋賀県守山市の「ふけ町ふるさとクラブ」。
防災活動をきっかけに、子どもたちを中心とした地域交流が盛んになってきた。

 琵琶湖の南東部、野洲(やす)川沿いに広がる滋賀県守山市。「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で3年連続入賞を果たした「ふけ町ふるさとクラブ」のある浮気町(ふけちょう)も豊かな水に支えられた歴史のある町だ。
 同町の自治会の中に、「ふるさとクラブ」が発足したのは2006年。町内に住んでいる主婦の長谷川恭子さんが、冬季の「火の用心」の夜回りに子どもたちの参加を呼びかけたのがきっかけ。
 「最近の子どもは、外に出て遊ぶ機会が減っていて、自分の家族と学校の先生以外の大人と接触する機会がありません。町の人たちに子どもたちの顔を覚えてもらいたいと考えたんです」と長谷川さん。
 夜の町を「火の用心」と大きな声を出しながら歩くという初めての体験は、子どもたちをワクワクさせたようで、「今度はいつ?」「また夜回りがしたい」という問い合わせが殺到したという。
 「活動を継続するためには本拠地や予算も必要ということで、自治会内のクラブとして出発することになりました」と発足の経緯を説明してくれた。
 夜回りを続けるうちに、子どもたちからこの成果をまとめたいという希望が出てきたため、「ふけ町ふるさとクラブ夜回り隊」として応募したのが「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」だった。
 「最初に応募した2007年度は、夜回り中に見つけた、町の危険な場所をまとめた防犯マップでした。審査員特別賞を受賞し、自治会の回覧板にも載せてもらったことで、夜回り隊のメンバーが町を歩くと、あちこちで声をかけられ、ほめられるようになりました。それで子どもたちがますます張り切って、2008年度は防災マップに挑戦することになりました」
 自治会の防災担当者にインタビューしたり、消火栓や防火水槽の位置を確認したり。また、防災無線のスピーカーから一番離れた位置に住む一人暮らしのお年寄りの家を訪ねて、無線の聞こえ方や避難経路について質問した。充実した内容のマップが出来上がり、見事に防災担当大臣賞を受賞。「おばあちゃんの家を訪ねて、いろいろお話しを聞いたときには、きれいに包まれた人数分のお菓子をお土産に頂いて子どもたちは大感激していました。私も同席していましたが、こういう気配りが地域の伝統なのかなと感じました。同じ地域に住んでいても今まで出会わなかった人と、マップづくりをきっかけに交流が深まったと思います。世代を超えて地域の人々の考え方、習慣を伝えていくこともふるさとクラブの役割だと思います」と長谷川さん自身も、防災マップづくりから学んだことは大きかったという。
 ふるさとクラブ発足当初は、自治会館の部屋にゲーム機を持ち込んでいた子どももいたが、最近では全員が手ぶらでやってくるようになった。長谷川さんは「外を走ったり、大きな声を出したり、ときには防災についてまじめに話したりということが楽しくなってきたようです。子どもたちが将来、ここで楽しく感じた経験を次世代の子どもたちに伝えたいと感じてくれたら」と話す。子どもたちの顔ぶれは年々入れ替わるが、防災マップづくりをきっかけに子どもたちが地域との交流を深める活動は続いている。
取材・文:河崎美穂

2008年度のマップづくりでは、一人暮らしをしているお年寄りの防災対策にも着目。
町内の一人暮らしのおばあちゃんにインタビューを行った
2008年度の「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で
防災担当大臣賞を受賞したマップ
自治会防災担当の方に話を聞きながらマップを作成中
町内の防火設備の調査では、消火用の放水ノズルも実際に持たせてもらった

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