日本の知恵を世界に 第4回

洪水ハザードマップ

水災害・リスクマネジメント国際センターは、多くの国々に洪水ハザードマップの作成を広げます。

ネパールの水害をハザードマップで軽減する

 ネパールの災害というと、たびたび報じられる「温暖化による氷河湖の決壊と洪水」をイメージするのではないでしょうか。しかしネパールはモンスーンの影響を強く受けるので、雨期の降雨量が非常に多く、毎年、大雨による洪水や地すべり被害が多数生じています。
 このため(独)土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、ネパール開発研究所(NDRI)の協力で、洪水被害軽減に向けて、コミュニティ防災能力向上を目的とした地域住民による洪水ハザードマップ作成支援を行いました。
対象はネパール西部のバンケ地区です。この地域では、西ラプティ川の氾濫で頻繁に洪水被害が発生します。洪水ハザードマップは破堤、氾濫などの浸水情報と避難に関する情報をわかりやすく提供するもので、開発途上国の洪水管理のソフト的対策として有効で、普及が望まれています。
日本で作成される洪水ハザードマップの多くは、洪水氾濫シミュレーション結果に基づいて浸水深や避難場所・経路などを表示するもので、主に市区町村が作成・公表を行います。しかし、今回バンケ地区コハラで作成した洪水ハザードマップは、地域住民に働きかけ、彼らが主体となって作成しました。洪水は、細かい地形の特徴や排水施設などの影響を強く受けるので、地域住民の経験・知識をふまえた作成が重要と考えたためです。
最初に作成の目的を住民たちと共有・確認した後、彼らと村を歩き、細かい水路や水が溜まりやすい場所などの危険箇所を抽出しました。また、住民たちにアンケートを行い、家屋浸水、洪水発生時の集落孤立・疫病発生・食料不足、蛇の出没などがどの地域で発生しやすいか、どんな人が被害を受けるかなどの情報収集を行いました。そして、これらに基づいて危険地域・避難経路・避難場所の情報を盛り込み、洪水ハザードマップを作成しました。
さらにこの地区とネパールの首都カトマンズでワークショップを開催し、洪水管理における洪水ハザードマップ作成の重要性を述べ、作成したマップを紹介しました。
今後、このような取組がネパールで広く自主的に行われ、洪水ハザードマップの作成が洪水対策の一つとして正式に位置づけられることが望まれます。

洪水ハザードマップを作成する住民たち

作成した洪水ハザードマップ

猪股広典さん

猪股広典
いのまた・ひろのり。2004 年4月〜 2006年2月(独)土木研究所水理水文チーム研究員、2006 年3 月〜(独)土木研究所水災害リスクマネジメント国際センター水文チーム研究員

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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