防災リーダーの素顔 第4回

たかしま災害支援ボランティアネットワーク「なまず」 太田直子さん

防災漫才、なまず音頭など、楽しいアイデアで防災を広めてきた防災リーダーが、いま考えることは

なまず音頭でキュッ♪、キュッ♪、キュッ♪

 「平成7年の阪神・淡路大震災はショックでしたね。滋賀県も震度5で夫が棚を押さえたほど揺れました。そして、被災地に全国から駆けつけるボランティアの活動をテレビで見ながら、何か自分にもできることがないかという思いで一杯でした」
 太田さんは当時、琵琶湖の西、滋賀県高島市の中学校で体育を教えていた。間もなく社会福祉協議会で働くようになり、平成12年、13年の地震が活動のきっかけとなる。
 「琵琶湖湖西にも大きな断層帯があり、明日はわが身、今度こそ何かしなければいけない。でも、一人では何もできないと思いました」
 すぐに社会福祉協議会主催で、神戸の市民活動センターから講師を招いて震災の講演会を開催。集まってきた人たちに呼びかけて、30名ほどで防災を広めるための活動を始めた。
 だが発足して半年、防災啓発のチラシも読まれない。研究会も盛り上がらずに、1人2人と減っていく。
 「仲間が、防災の漫才や劇をしたらどうかといったのを思い出した。それで夢中で台本を書きました」
 例えば、「お風呂で地震きたら、どうするの? スッポンポンやでー」
 女性2人の漫才は大ウケした。
 「広報チラシに、防災漫才がやってくるって書くと、こんなにこの町に人が住んでいたのかと主催者が驚くほど、集まるんですよ」
 平成16年には、全国ボランティアフェスティバルで防災劇が話題となり、ユニークな活動が注目される。大型ロール紙芝居、腹話術など独自のプログラムをいくつも生み、振付つき『なまず音頭』のCDも出した。
 「当時集まってくるのはお年寄りが多かったから、音頭にしてみました」
 26名のメンバーの約半分は夫婦で、道具や教材はすべて手作りという、生活に根ざした活動も魅力の一つである。防災講座は近隣府県で年50回も出前講座を行うほどの人気だ。
 「講座では、常に個人の『備えと構え』が大切だと訴えています。一人ひとりの命を守ることが減災につながるんです」
 でも、そのための会議とか堅いことは苦手な太田さん。アドリブや、臨機応変な活動をしている。
 「漫才もそうだけど、新しいアイデアを思いついたらその場でやって、だめなら変える。災害の現場も、予想ができないものですからね。いつも、すばやい応用力が必要だと思います。そういう意味で、イベントの開催は格好の訓練の場です」
 太田さんたちの活動は、今後も多くの人々を楽しませ、防災を考えるきっかけを与えていくことだろう。

ご大型ロール紙芝居を演じる女性たち

大型ロール紙芝居を演じる女性たち

太田直子さん

おおた・なおこ
日本体育大学を卒業後、高校・中学教師を経て社会福祉協議会のボランティアコーディネーター。平成13年、新旭災害支援ボランティア「なまず」を結成、平成17年、地域合併で名前を改めた。たかしま災害支援ボランティアネットワーク「なまず」 代表。団体として平成21年防災功労者内閣総理大臣表彰受賞。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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