防災リーダーの素顔 第3回

第3回NPO法人とちぎボランティアネットワーク 矢野正広さん

災害ボランティアだけでなく地域の活性化など継続的な支援を模索してきたソーシャルワーカーはいま何を考える?

ボランティアバスは栃木から始まった

 矢野さんは、高校時代に障害者と友人になったことをきっかけに、大学で福祉を専攻し、福祉作業所に勤めながら、海外協力のNGOや障害者自立生活支援の活動を行ってきた。
 そして、平成7年1月の阪神・淡路大震災では、被災した障害者のためにボランティアの送迎を行った。そのことをきっかけに、災害ボランティア活動を始め、現地の神戸市立鷹取中学校の避難所運営のため、毎週ボランティアを送り続けた。
 最初はワゴン、次第にバスで送るようになる。これがボランティアバスの始まり。
 「人をたくさん送るためにバスになっただけです。ただ、高校球児の応援に甲子園にバスで行く。それも頭にあったかな」と笑う。
 ボランティアの参加者は土曜日の夜にバスで出発し、日曜日から1週間活動、夜にバスで出発し月曜日に戻る。仕事を休んでも翌週に復帰できるように配慮した。また、バス協会に連絡して1社1台出してもらった。仕事帰りに車で集まってくるボランティアのために、駐車場の提供者も募集した。こうして、阪神・淡路大震災では、延べ1300人を現地に送ることになった。
 「社会のために役立ちたいと思っている人がたくさんいます。災害が起こると、現地に行って何かしたい人たち。それに応えているだけです。参加者は帰ってくると防災の意識も高まる。地域で活動するきっかけにもなりますね」
 矢野さんたちは、若者の職業自立支援も行っている。地域活性化や環境学習の施設を運営し、ボランティアセンター、NPOの活動支援、基金運営、情報誌の発行など、地域での活動を進めてきた。「災害ボランティアは、災害がないときに、その培ったノウハウをどう維持し伝えるかが課題です。そのために中間支援団体を作ったんです」
 ボランティアバスは、現地に受入れ相手がいないと行えない。だから、平成16年の新潟県中越地震では、自分たちで現地拠点を運営した。
 「現地との関係・調整が一番大事。より支援もスムースに行えますから」だが、矢野さんには気になることがある。
 「いまの参加者は、こんな制度や仕組みがあるから参加するという人が多い。でも制度や仕組みは必要に応じて作り、変えていくもの。自分で作る力が弱くなっていると感じます」
 阪神・淡路大震災から来年で十五年。矢野さんたちの活動は、災害が少ないともいわれる栃木の地に着実に根づいている。

平成9年のナホトカ号重油流出事故時のボランティアバス

平成9年のナホトカ号重油流出事故時のボランティアバス

矢野正広さん

やの・まさひろ
NPO 法人とちぎボランティアネットワーク常務理事・事務局長。難民問題、障害者支援などの活動から、阪神・淡路大震災を機に災害ボランティア活動を始め、平成7年、とちぎボランティアネットワーク設立。平成12 年より、震災がつなぐ全国ネットワーク事務局長

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内閣府政策統括官(防災担当)

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