Topics  平成21年版防災白書

1 自然現象や社会環境の変化に伴って変化する災害リスク

 我が国では、伊勢湾台風、阪神・淡路大震災などの過去の大規模災害を契機として各種防災対策の充実・強化を図ってきました。これにより、社会の災害脆弱性は一定程度軽減されてきたと考えられますが、その一方で、短時間強雨の増加、海面上昇などの自然現象の変化や、高齢化の進展、都市構造の変化などの社会環境の変化により、新たな防災上の課題も生じてきています。

[1]近年における局地的な大雨の発生回数の増加等に伴う水関連災害の増加

 近年、短時間の局地的な大雨(短時間強雨)は増加傾向にあります(下図参照)。また、下水道や河川に排出できない大量の雨水による内水氾濫や中小河川における急激な増水による水難事故が発生しています。今後、地球温暖化に伴う気候変動の影響により浸水害、土砂災害などの水関連災害の増大も予測されています。

一時間降水量50mm以上の発生回数
神戸市都賀川

出典:神戸市資料

[2]高齢化により高まる災害脆弱性〜高齢化が進む地域の防災力の低下

 高齢者は各種災害において大きな被害を受ける傾向にありますが、この背景には、高齢化による地域コミュニティにおける共助の力の低下や、家族構成等の変化により、災害が発生した際に高齢者を助けられる者が周囲にいなくなってきていることがあると考えられます。平成20年6月の岩手・宮城内陸地震では、両県で6つの孤立集落が発生しましたが、高齢化による地域防災力の低下が進む中、こうした孤立集落対策も重要な課題となっています。また、高齢化の問題は中山間地だけのものではなく、高度経済成長期に開発された団地やニュータウンの一斉高齢化が進んでいるところもあり、都市部でも防災力の低下が懸念されています。

高齢化率

[3]都市化の進展により高まる災害脆弱性

 東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3 の地震が発生した場合、最大で約650 万人の帰宅困難者が発生すると予測されており、都心部から居住地に向けて一斉に帰宅行動をとった場合、路上では混雑による混乱や、応急対策活動の妨げになったりするなどの問題を引き起こす可能性も指摘されています。
 また、高層化が進む建築物では、災害発生時にはエレベーターが停止し、非難時や復旧までの日常生活において高層階からの移動に支障がでることも考えられ、また、関東平野など堆積層の厚い平野における高層建築物については、長周期地震動の影響も懸念されます。
 さらに、都市部では地下空間の利用も進んでいるが、大規模水害が大都市を襲った場合、地下街や地下鉄等は大きな被害を受けることが予想され、中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」が行った被害想定では、200年に1度の発生確率の洪水により、東京都北区志茂地先で荒川堤防が決壊した場合、17路線の97駅、延長約147kmが浸水するものと見込まれています。

帰宅困難者数
20階以上マンション完成棟数の推移

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.