特集 心をつかんで広げよう

テーマ3 活動を長く続けるには?

防災会の集まりやイベントの運営など、組織を立ち上げても長続きしないという問題は少なくありません。参加者のモチベーションを保ち、活動を継続させるには、どうしたらよいのでしょう?

繰り返しできることを少しずつ取り入れる

 せっかく訓練に参加し、クチコミなどで防災の知識が増えたとしても、人は忘れっぽいものですから、時間が経つとまた防災のことを意識しなくなってしまいます。頻繁に訓練を開催し、そこに参加してもらうことが大切です。
 では訓練を継続するにはどうすればいいのでしょう。ボーイスカウトの方法が一つの参考になります。ボーイスカウトでは繰り返し参加することで、級が上がり、違うバッジがもらえる制度です。参加者のモチベーションの向上につながります。市民防災大学などでも認定証の制度が参加意識を高めている、という話を聞きます。このほかにも参加した人はスタンプをもらえるという工夫なども考えられるでしょう。参加者を飽きさせない工夫も必要。毎回、違うイベントを開催している自主防災組織もあります。でも毎回趣向を凝らしたイベントをするのは大変です。小さいことでいいので、少しずつコツコツやることが実は大切です。
 そして訓練だけではなく、頻繁に繰り返し繰り返し啓発すること。例えば「マッチ一本火事のもと」のように覚えやすい標語を活用するのも手です。毎月違う標語を目に付きやすい場所に置くのもいいでしょう。
 継続する目的は訓練を日常化することにあります。普段していないことはいざという時にもできないので、避難所への道を犬の散歩道にするとか、ウオーキングのルートにするとか、毎日の行動に組み入れてみましょう。毎日繰り返すことで、防災への意識は確実に変わります。

ここがポイント 日常生活の延長にする 何回も繰り返すことが大切
イラスト:井塚剛

これが防災?というイベントがいっぱい! 〜「加古川グリーンシティ防災会」の場合〜

夏祭りやもちつき大会など、毎年恒例のイベントに防災を取り入れることで 「見えない防災」を実行。どんなことも防災につなげられるのです。

昭和60年に完成した集合マンションが加古川グリーンシティ。阪神・淡路大震災の被害はそれほど大きくなかったものの、神戸で働く人が多数住んでいたことから「今、何か防災対策をしなければ」と実感。そこで、同世代の子どもを持つ30代後半のお父さんたちが一念発起。自治会とは別に自主防災組織を立ち上げました。

あいさつ運動

 まずは地域に住む人の顔を知ろう!と始めたのが、「あいさつ運動」。子どもたちを中心に広がり、今では住民同士も自然に言葉を交わし、声をかけ合うようになりました。「防災を防災と声高に語らずとも防災の役割を果たすこと」を地域防災力や地域コミュニティへのしかけにしています。

サッカー観戦会

 平成14年のサッカーワールドカップ以来、集会所の2階に集まって、みんなで観戦しています。観戦後には、サッカーTシャツやタオルをめぐる、じゃんけん大会も開催。子どもから高齢者まで世代を超えた参加を可能にする「みんなで楽しく防災活動をやろう」を掲げ活動を継続しています。

「イカ焼き」の炊き出し訓練

「イカ焼き」の炊き出し訓練1

イカ焼き器はほかの食材を調理する上でも瞬時に火を通すことができるメリットもある

「イカ焼き」の炊き出し訓練2

子どもには水遊びの場、大人には井戸端会議の場として親しまれている防災井戸

 地域のつながりを強くするには「みんなで集まって何かをすることが大切」と、夏祭りなどのイベントを防災会主催で行っています。その際、炊き出し訓練を兼ねて大阪名物の「イカ焼き」を出店。1枚焼くのに約30秒とお米よりも調理時間が短く、味の変化もつけやすいと考えて、2台の機材を備蓄品として購入。長蛇の列ができないよう、作業をスムーズに進めるための訓練をしています。また、地域の人にも手伝ってもらい、使い方を覚えてもらう機会にもしています。関西では家庭でも小麦粉を使った料理をよく作るため、普段から未開封の1袋を常備しておくことも伝えています。
 現在、緑の日に行う清掃・グリーン大作戦、夏祭り、秋の防災訓練、年末のもちつき大会と、年に4回は必ず「イカ焼き」を実行。出店する際は「加古川グリーンシティ防災会」と書いたテントを立てて、「防災」をアピール。また、調理で使う水には防災井戸を使用しています。

防災ショットバー

防災ショットバー

お酒は、災害で被災しながらも頑張っている全国の酒蔵から購入している

 昨年の4月より、地元FM局の協力で始めたラジオ番組。今年4月から、防災に親しみをもってもらうためにお酒を取り入れ「防災SHOTBAR・DIR」にリニューアル。平成19年から全国に向けて、防災インターネットラジオ「E-KGB」も開局し、ホームページ上で配信。居住者向けに平成17年から開始したマンション内コミュニティ放送では、毎週日曜日に「ネットワーク584」を放送しています。

吉川先生の「ココが すごい!」

 おつき合いが疎遠になりがちな集合住宅での活動には、ヒントがたくさん。おいしいにおいが漂ってきそうなイカ焼きを炊き出しに選択されているところも、さすがというほかありません。これならマンション以外の方でも参加したくなりますね。

取材協力・写真提供:加古川グリーンシティ防災会会長・大西賞典

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内閣府政策統括官(防災担当)

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