特集 心をつかんで広げよう

テーマ2 防災の知識をうまく伝えるには?

被害を少しでも減らすために、防災の知識や情報など、伝えたいことはさまざま。パンフレットやポスター、インターネットに電子メールなど、たくさんのメディアがありますが、どんな方法がよいのでしょうか?

つい話したくなる内容をクチコミにのせる


 新聞、テレビ、雑誌からの情報も大事ですが、実はアナログ的「クチコミ」が強力なコミュニケーション手段です。人はマスメディアよりも知人の言葉に動かされるものです。
 例えば、防災訓練で学んだことを二人に話せば、ねずみ算的に多くの人に伝わっていきます。特に、子どもが学校で聞いてきた話は確実に親に伝わります。防災に関心がない祖父母だって聞いてくれる。子どもから広がるネットワークは防災意識の伝達に非常に有効な手段です。
 クチコミを上手に活用するには、情報の発信源になるような人材を見つけることです。老人会、スポーツクラブ、趣味の会などたくさんのネットワークを持っている人をリーダーとし、そこに正確な情報をのせれば、クチコミで広がります。
 ただ、クチコミは諸刃の剣。嘘の情報に惑わされてしまう場合も。正しい情報をつなげるように内容を工夫する必要があります。しかも伝言ゲームのようなものですから、難しい内容や長い話は向きません。つい人に話したくなる豆知識的なもので、一言で言えるものがいいでしょう。クロスロードという防災ゲームは、実際の災害で起きたことを話し合うものですが、質問自体は「避難所に3000人いるのに確保できた食糧は2000食。あなたなら配りますか」とシンプルだけど考えさせるもの。クチコミに向いています。
 また、否定的な表現も向きません。「何人亡くなる」と言うよりは、「何人助かる」という前向きな表現が、人を動かすきっかけになります。

ここがポイント クチコミは強力なコミュニケーション法 子供の話なら大人は聞く ねずみ算的に広がっていく クチコミは諸刃の剣

イラスト:井塚剛

子どもが作った紙芝居や防災番組が好評 〜「災害ボランティアネットワーク鈴鹿」の場合〜

子どもたちを中心とした防災活動に力を入れてきた結果、家庭で子どもが親に話し、 防災への意識や実際の活動の輪が大人にも広まっています。

救助やボランティアに役立つ防災マップを作ろうと始まった組織で、理事長は南部美智代さん。地域の1700戸を1軒ずつ訪ね、1年かけて、災害時に必要なことを書き入れた地図を作りました。それをもとに大人向けの訓練をしていましたが、今は子どもたちの将来を考え、子ども中心の活動を展開しています。

手作り紙芝居

手作り紙芝居

「子ども防災サミット」に参加した子どもたちが手がけた紙芝居

 子どもたちが企画・制作した紙芝居。当初は子どもたちが地域で上演していましたが、今は主に南部さんの講演で上演されています。語り手は南部さんではなく会場の方々。登場人物を、さまざまな世代に配役して読んでもらいます。紙芝居は映像と違って動かないため、各場面において防災について深く考えられます。

子ども防災サミット

ロープ渡り。消防学校の本格的な施設を使うため、子どもたちは一生懸命に

ストローで建物を組み立てる「ストローハウス」

災害では大切なおもちゃが壊れることがある、と伝えるための「トイナオス」

 地域の消防学校で子どもたちが行う、1泊2日の防災訓練。将来の防災リーダーを育てようと、10年前から始まりました。
 主な内容は、防災講座、DIG、消火器訓練、ロープ渡りのほか、建物の耐震を学ぶ「ストローハウス」、暗闇の中で避難する「暗闇体験」など。壊れたおもちゃを自 分で直す「トイナオス」など、楽しいプログラムも用意。
 始めた時は小学生だった子どもも大学生となり、今はボランティアスタッフとして参加。着実に、地域の防災リーダーとして育っています。また、地域には3世代の家庭が多く、孫から話を聞いた高齢者から「自分たちも参加したい」との声が上がり、老人会が参加する「三ちゃん防災サミット」も始まりました。
 子どもたちは、毎年積極的に参加。地域の大学からのボランティア学生も増え、高齢者も防災への理解を示しています。

ケーブルテレビ番組 「子ども防災隊」

 地元ケーブルテレビ局の協力のもと、子どもたちによる演出・出演で、1カ月に7分の番組を2年間制作。家具の固定、土のう作り、防災まちあるきなど内容はさまざまで、1日に3〜4回ほど放送されました。最初は出演を嫌がっていた子どもも、自らセリフを直すようになり、演技する子どもたちの姿は大人にとても好評です。今も時折放送されており、南部さんの講演で上映することもあります。

吉川先生の「ココが すごい!」

 子ども主体の活動にしているところが非常に参考になります。また子どもだけではなく、高齢者をも巻き込む、世代を超えた交流につながっているところにも注目です。紙芝居の登場人物を多様な世代に配役して読んでもらう工夫も絶妙です。

取材協力:災害ボランティアネットワーク鈴鹿 理事長・南部美智代
写真提供:災害ボランティアネットワーク鈴鹿

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内閣府政策統括官(防災担当)

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