特集 心をつかんで広げよう

テーマ1 防災への関心を高めるには?

日ごろから災害に備えたり、地域の防災訓練に参加してもらったりするには、まず防災に関心を持ってもらうことが大切です。人の興味をひいたり、やる気を促したりするには、どうしたらよいでしょう?

楽しく参加できるイベントを工夫する

 訓練には多くの人に参加してもらいたいもの。でも普段参加していない人や、最初から参加する気のない人に参加してもらうのが、大変です。
 では、どうするか。まずは「間口を広く、敷居は低く!」することです。スーパーで楽しそうなイベントをやっていた。参加したら何かをもらえるというので、やってみたら、実は防災のイベントだったというような流れです。防災訓練と言われるとしり込みしてしまう人も気軽に参加できるような工夫をしましょう。
 例えば、広島県呉市では高齢者が行き慣れたお寺を避難所にしているところがあります。防災訓練の途中でお花見を楽しもう、などという工夫でもいいでしょう。まずは参加しようというモチベーションを高めることが大事。
 次に訓練の内容ですが、日ごろから防災のことをあまり意識していない人に難しい話をしてもなかなか伝わりません。楽しく参加できるようなイベント形式のものがいいと思います。バケツリレーなどを運動会形式でやるのもいいでしょう。地域の"お祭り"にすれば、多くの人に参加してもらえます。
 自分の身を守る防災訓練は、サバイバル訓練と共通しているところがあります。実際、海外の教材にはサバイバル術をまず教えているものが多いです。親子で参加できるようなサバイバルキャンプを防災訓練として開催するのも面白いと思います。
 入り口はどうあれ、実際に参加し行動することで、参加者の意識や考え方が少しずつ変わっていきます。

ここがポイント 間口は広く、敷居は低く 行動させると考え方も変わる 他のことで関心を高める

イラスト:井塚剛

ポイントを集めて、おもちゃを交換 〜『イザ!カエルキャラバン!」の場合〜

防災ゲームに参加してポイントを集めて、おもちゃと交換するイベントで、 毎回、多くのファミリーが参加し、大盛況。親子で楽しく防災を学べます。

阪神・淡路大震災10周年事業の一環として、美術家の藤浩志さんとNPO法人プラス・アーツが共同開発。おもちゃと交換できるポイントを集めようと、さまざまな防災ゲームに参加するため、自然に防災が身につきます。ゲームには、被災者や救助にあたった人の経験も反映され、実用的。現在は、全国各地で行われています。

かえっこバザール

かえっこバザール

「かえっこオークション」(写真左)と「ショップコーナー」(写真右)

 まず、いらなくなった自宅のおもちゃを「かえっこバンク」に持ち込み、査定を受けます。評価は1〜3ポイントの3段階。特にいいおもちゃは「感動ポイント」と して、査定者が自由にポイントをつけます。
 査定されたおもちゃは「ショップコーナー」に集められ、いつでもポイントと交換できますが、「感動ポイント」のおもちゃは、イベント終了前の30分間で行われるオークションで落札しなければなりません。そのため、子どもたちは最後まで夢中でたくさんのポイントを集め続けます。

水消火器で的あてゲーム

水消火器で的あてゲーム

いつも行列ができる一番人気のプログラム。 的の芯を狙わないと、うまく倒れない

 水消火器でカエルの的を狙うゲームです。10〜 15秒ほどしか水が出ないため、うまく操作しないと的を倒せません。参加するだけでもポイントはもらえますが、倒した的の数に応じて加算されます。そのため、何度もチャレンジするうちに、消火器の使い方を覚え、火を消すには火元を狙うことも学べます。

毛布担架トライアル

毛布担架トライアル

阪神・淡路大震災で救助にあたった人の声を反映

 6人1チームで、重さ40kgのカエル人形を毛布で運びます。折り返し地点を回り、カエルを安静に寝かせるまでのタイムトライアルで、ランキングは会場内で発表。 自分の記録が塗り替えられても、再び挑戦できます。
 震災時は担架が足りず、畳や雨戸を使っていました。そこで毛布を使ったこのゲームを考案。備蓄倉庫にあり、子どもにも安全です。毛布の両端を手で握れるぐらいの太さに巻いて順手で持てば、子ども6人で大人も運べます。

ジャッキアップゲーム

ジャッキアップゲーム

なまずの中には、水の入ったペットボトルが入っている

 大きななまずに押しつぶされたカエル人形を、ジャッキを使って救出します。まず、なまずをジャッキで上げて木材で支え、そこを土台にもう一度ジャッキで上げなければ助けられません。これは実際に救助をする時と同じ方法。阪神・淡路大震災でも、瓦礫の下敷きになった人を車のジャッキを使って助けたことがありました。子どもの後ろで親も見ているため、親も一緒にジャッキの使い方を覚えます。

吉川先生の「ココが すごい!」

 何より楽しい!どのイベントも遊びとしての完成度が高く、子どもが参加したくなる気持ちを自然な形で引き出しています。もっと大事なことは、大人でも難しい技術を身につけられるということ。ぜひ大人向けのものも欲しいですね。

取材協力:NPO法人プラス・アーツ代表・永田宏和 撮影:宮前祥子

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内閣府政策統括官(防災担当)

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