毎日の暮らしの中に 防災の視線を取り込む
集中豪雨が発生し、避難勧告が出ても、多くの人が逃げなかったという事例があります。人はなぜ逃げないのか。一つ言えることは、普段していないことは、いざという時にもできないということです
想像してみてください。夜、大雨が降っている中、あなたは避難所まで歩いて行けますか。もしかしたら、地図がないとたどり着けない人もいるでしょう。そうした人が、悪条件の中、歩いて行くのは大変です。人は何かがあって逃げる時、来た道をそのまま引き返すことも多いのです。日ごろの行動を、いざという時も繰り返してしまうのが人間心理。
防災行動や意識を日常化すること——防災訓練や啓発活動の目的は、実はここにあります。毎日の暮らしの中に防災の視線を取り入れることです。防災といっても何も特別なことではありません。毎日を安全に暮らすことにつながるのです。
例えば、駅までの道。どのルートを行けば安全なのか、意識して歩いてみましょう。普段、気にもしていなかったことに気づくでしょう。
防災の意識を日常化するために大切なのはやはり訓練です。人は繰り返し行動しないと意識は変わりません。でも訓練は敬遠されがちなもの。参加してもらうにはどうすればいい? まずはそこから始めましょう。

平成16年(2004年)10月23日に発生した新潟県中越地震による被害(写真提供:毎日新聞社/アフロ)

平成16年(2004年)に発生した台風23号による被害(写真提供:兵庫県消防防災航空隊)
イザ!カエルキャラバン!

ポイント集めが訓練参加のモチベーションに
災害ボランティアネットワーク鈴鹿

大人を動かすには、まず子どもから!
加古川グリーンシティ防災会

「防災」に見えない「防災」で人集め
慶応義塾大学商学部・商学研究科准教授
吉川肇子
きっかわ・としこ
1982年に京都大学文学部卒業、85年に早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了、88年に京都大学大学院文学研究科博士課程を終了。その後、京都学園大学法学部、筑波大学社会工学系を経て、98年より現職。専門分野は組織心理学や社会心理学で、カー ドゲーム「クロスロード」をはじめ、心理学を生かした防災活動の普及も行っている。