シリーズ 一日前プロジェクト(第9回)

もし、1日前に戻れたら…
私たち(被災者)から皆さんに伝えたいこと

地震、津波、風水害……さまざまな災害を実際に体験した方に、 「もし、一日前に戻れたら何をしますか?」と訊ねたのが、「一日前プロジェクト」。被災者の声は、 私たちにいろいろなことを教えてくれます。今月のテーマは『台風23号(平成16年10月)パート1』です。

日頃から携帯電話の 充電器を持ち歩く (福知山市  60代 男性 市役所職員)

 隣町の消防から「今、役場が浸水しとるんや!」と電話がかかってきました。あっという間に水があふれてきたので、あわてて書類とかを机の上に上げているところだ というのです。それに、防災行政無線等の電源もすべて1 階にあったので、全部ダメになってしまったとも。
 夜中に、「これが最後の通信になると思います。もう携帯電話の電池がありません」という連絡が入って以降通信が途絶え、その役場は孤立してしまったのです。
 携帯電話というのは、電源さえ確保できれば、非常に頼りになるものなんですね。あれから、職員はみんな携帯電話の充電器をかばんの中に入れて持ち歩くようになりました。水害を経験して、少しは自分たちの意識も高まってきたのかなという気がします。

日頃から携帯電話の充電器を持ち歩く

鳴り続けた電話が停電でパッタリ(宮津市 30代 女性 市役所職員)

 どんどんどんどん雨は降りますし、川の水位が上がってきたのが、役所からも見えました。「ひどいぞ、ひどいぞ」ということで、「川が警戒水位(*1)を超えました。水位がいくらになりました」という町内放送が何度も何度も出されました。
 私は、ずっと民生委員(*2)への連絡とかをしていましたが、夜になると、今度は遠方にいらっしゃる市民のご家族の方からも、どんどんどんどん市役所に電話が入ってくるようになりまして、「うちのおばあちゃんちに見に行ってください」、「うちの親戚の家はどうなっていますか」というのが、台風の報道やお天気ニュースなんかに合わせて入ってきて、ものすごい状況でした。それが、しばらくしたら役所も停電になり、電話が通じない状況になってしまったのです。
 外はすごい雨なんですけれども、じゃんじゃんかかっていた電話が急に鳴りやんでしまって、一種異様な静けさになったのを今でも覚えています。

(*1)現在のはん濫注意水位であり、水害の発生に備えて、水防法で定める各水防管理団体が出動する目安になる水位です。市町村長の避難準備情報等の発令の判断 ・住民のはん濫に関する情報への注意喚起 ・水防団の出動の目安とされています。
(* 2) 民生委員とは、社会奉仕の精神を持ち、常に住民の立場になって相談に応じるなど、社会福祉の増進に努めることを任務として、市町村の区域に配置されている民間の人です。また、民生委員は児童委員を兼ねています。

鳴り続けた電話が停電でパッタリ

119番通報パンクでお手上げ(福知山市 50代 男性 市役所職員)

  台風の影響で雨風が強まっていました。私は市役所の消防本部につめていて、119番通報されてきた方の電話番号を消防署からバトンタッチして受け取って、その人に電話するということをやっていました。ある時を境に、消防署への通報がパンク状態になってしまったからです。
 私が「もしもし」と言った瞬間に、「助けてください!」という声がして、「今どちらですか?」と聞いたら、「どこか分からんけど、とりあえず電柱にしがみついとる」と。仕事で車を走らせていたら急に水が出てきて、車の屋根に逃げたけれど、どんどん水が増えて、車は流れていってしまったと言うのです。
「もう少し上へ上がれますか?」と聞いたら、「まだもうちょっとあるので上がれます」と。その頃は増水中でしたので、「できるだけ上へ上がって頑張ってくださいというほかなく、後で消防隊に連絡をとり、だいたいの場所を教えて何とか救助してもらいました。
 一日そんなやりとりばかりしていたのですが、車の上に取り残されたまま連絡がとれなくなった人のことがずっと気になっていたので、明くる日、上司に頼んで、1隊編制してもらい、警察官の方と一緒に捜しました。
 ようやく捜しあてた時、その人はずぶ濡れで、農家の土間のあがり口で休んでいました。「大丈夫ですか」と言ったら、「うん」と。それでやっと、「ああ、助かったんだなあ」と胸をなでおろしました。

https://www.bousai.go.jp/km/imp/

被災者の実体験を聞くことができる『一日前プロジェクト』は左記HPでも見ることができます。家庭はもちろん、地域や職場など、さまざまな話が掲載されていますので、企業の「社内報」や地域での「広報」に幅広く活用してください。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.