Disaster Report 国内復興レポート

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震からの復興状況

昨年6月14日午前8時43分に発生した「岩手・宮城内陸地震」によって、岩手県・宮城県ともに、甚大な被害を受けました。それから1年。それぞれの県から、復興状況を報告します。

岩手県の復興状況

 被災直後から全国各地の皆さまからのお見舞いや励ましの数々に、県民一同が大きな勇気をいただきながら復旧・復興に取り組み、現在、公共工事などが順調に進んでいます。

復旧への取り組み

1.公共施設等

 河川、道路、橋梁などの公共土木 施設に係る災害復旧工事(県、市町村分)は、今年度末で99%が完了予定であり、農地、農業用施設にあっては、現在98%が完了済です。特に、被災により落橋した一関市の祭畤(まつるべ)大橋は、昨年11月末に仮橋が完成し、本橋は平成22年度の供用を目指し、工事を進めています。

一関市祭畤大橋の落橋現場と仮橋の開通(写真提供:岩手県)

2.避難の状況

 避難者は、ピーク時には奥州市で36世帯97人が自主避難、3世帯5人が避難勧告、一関市で23世帯69人が避難勧告によって避難していましたが、治山工事の進捗などにより、現在、避難勧告はすべて解除されています。ただし、住宅の再建などにまだ時間を要することから、一関市で2世帯11人が震災復興支援住宅に、奥州市で8世帯26人が仮設住宅に入居しています。

3.課題への取組状況

 今回の被災により防災対策上、検討を要する課題も明らかになったため、可能なものから順次改善を図っています。その主なものとしては、

ア)職員の参集について、災害時には電話がつながりにくいことを踏まえ、自主参集をルール化した。

イ)県災害対策本部支援室について、班編成の再構築や役割の明確化およびスペースの拡充を行い、機能を強化した。

ウ)孤立化想定地域の状況について、各市町村を再調査し、通信手段の確保、ヘリポートの確認および避難先の確保など各市町村に対策を要請した。

エ)DMATについて、その役割や機能および救助・救急搬送機関との連携など、県の地域防災計画を修正し、計画上の位置付けを明確化した。

 ことなどですが、県では、今年度の重点テーマを「訓練による対応力の強化」とし、より実践的な訓練を積み重ね、関係者間の連携をさらに強化しながら、総合的な防災対策を講じたいと考えています。

復興への着実な歩み

1.県民総参加の復興

 二度にわたる大地震の被害を乗り越え、県民総参加で復興に取り組みながら、元気な岩手を紹介するため、知事を先頭に「がんばろう!岩手」運動を展開してきたところであり、その成果は着実に実を結んできています。
 特に風評被害については、地域経済に及ぼす影響が非常に大きいことから、首都圏等での知事によるトップセールスを行うほか、「いわて平泉観光キャンペーン」を展開するなど、産業界、マスコミ、市町村等の関係機関が一体となって取り組んでいます。

2.黄金の国、いわてへ

 平成23年に世界遺産登録を目指す平泉の文化遺産をはじめ、岩手の誇る歴史や文化、素晴らしい自然、高品質で安全・安心な農林水産物、各地で伝承される伝統芸能や伝統工芸など、岩手全体の豊かさと信頼を「黄金の国、いわて」と表現し、観光素材の磨き上げや受け入れ態勢のレベルアップによる魅力ある「岩手」の確立に努めています。多くの皆さまに岩手の魅力を堪能していただけるよう、県民一同心からお待ちしております。

名勝天然記念物・厳美渓

連日観光客でにぎわう、国の名勝天然記念物・厳美渓(写真提供:岩手県)

宮城県の復興状況

被害の概況

 宮城県内においては、死亡者14人、行方不明者4人、負傷者365人の人的被害、また2000戸に迫る住宅等建物や一千億円を超える公共施設が被害を受けました。
 特に栗原市では、地震発生箇所が国定公園栗駒山直下の山岳部であったため、山地崩壊に伴う道路寸断や河道閉塞(土砂ダム)などの甚大な被害を受けて、孤立地区が多数発生しました。その結果、長期の避難生活を強いられ、現在も多数の住民が仮設住宅などでの生活を余儀なくされています。

応急から復旧へ

 発災直後の自衛隊、消防、警察による被災者の救助活動をはじめ、孤立地区住民への帰宅支援や、栗原市による2カ所の大規模避難所運営や避難者用の応急仮設住宅建設などの応急対策を行うとともに、電気等の公共インフラの復旧や住民一時帰宅用の暫定道路整備など復旧作業を進め、2カ月余りで陸路での避難者の昼間一時帰宅を実現しました。また被災地域では、一日も早い復興と元気な栗原を目指し「がんばろう栗原」をスローガンに「復興市」を開催するなど復興への歩みが始まっています。

宮城県知事の避難所訪問(平成20 年6 月)(写真提供:宮城県)

栗原市の花山地区で行われている「復興市」(写真提供:宮城県)

栗原市の近況

 現在も、国、県、市が一体となって被害を受けた主要道路や林地、河川、荒砥沢ダムなど全面復旧に向けて全力で工事が進められています。
 この結果、栗原市と大崎市で最大約150世帯に出された避難指示・勧告は、6月までに約9割が解除され、15世帯だけ(7月1日正午現在)が継続中となっています。
 しかしながら、避難指示・勧告を解除された被災者も、大きく住宅に被害を受けるなど、元の住まいに戻 、普通の生活に戻るまでには時間を要する方々が多いのも現実です。
 こうした中、地震から1年に当たる6月14日、栗原市主催の追悼式が開催され、ご遺族、防災担当大臣、知事など、約1300人が参列し、犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、復興への誓いを新たにしました。

一層の復興に向けて

 地域の復旧工事は着実に進んでいますが、まずは来年秋に完全復旧を目指している国道398号など主要道路の完成が待たれるところです。
 今後、観光客の立ち入りが可能となる箇所が増え、地域再生の大きな原動力となることが期待されています。どうぞ皆さまには、「がんばろう栗原」をスローガンに復興を目指す被災地の復旧状況を確認いただきながら、宮城県各地に足を運んでいただきたいと思います。
 最後に、全国から多数寄せられた 温かい励ましや義援金などが復興の大きな力となっています。改めて、心からの御礼と感謝を申し上げます。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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