防災リーダーの素顔 第1回

NPO法人ひまわりの夢企画代表 荒井 勣さん

神戸の“ひまわりオジサン”。全国の被災地でそう呼ばれ、愛されているのが荒井 勣さん。
トラックに乗って駆け付け、笑顔の種をまいていくのだ。

全国に広がる ひまわりネットワーク

 平成7年6月27日。「復興の息吹を ヒマワリ咲く」そう題された記事が新聞の一面を飾る。阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた神戸の民家跡地にひまわりが誇らしげに咲いていたというのだ。この夏、神戸にたくさんのひまわりが咲き誇り、震災で傷ついた多くの人を癒した。その種をまいたのが“ひまわりオジサン”として知られる荒井勣さんだ。
「瓦礫の町をひまわりで明るくしたくて、ドラム缶で3杯半の種を配りました。娘を亡くしたというお母さんから『ひまわりが大好きだった娘が帰ってきたようで、とても心が癒されました』という手紙をもらった時はうれしかったですね」
 荒井さんのもとに届いた手紙は200通を超えていたそう。当時、自動車販売会社を経営し、日々、セールスで頭を下げる毎日を送っていた彼を、幾つもの笑顔と感謝の声が変えていった。自身も被災した阪神・淡路大震災では被災した翌日からトラックで給水を始め、1週間後にはお風呂を提供。そして中越地震、中越沖地震、岩手・宮城内陸地震……。地震が起こるとトラックに乗って現地にかけつけ、みんなが喜んでくれることを探し、大勢の人を巻き込んでそれを実現させていく。
「復興ボランティアにはまり経営者として失格です(笑)。今は被災地に行き現地協力者を募り、お金ではなく、『知恵と汗』を出し活動しています。やっぱり人間、好きなことをしないと。ボランティアはあくまでも人間対人間。現場に行って何人もの人と話していると何をしたら喜んでもらえるのかわかる。後は行動のみ」
 そんな荒井さんが、子どもたちに楽しみながら防災を意識してほしいと始めたのが「防災楽習迷路」だ。この迷路はゴールに向かうのが目的ではない。迷路は被災した家。行き止まりに置いてある紙は、「飲料水」や「懐中電灯」など必要なもの。「ガスの元栓」などの注意点もある。行き止まりを探しながら、無事に避難するというゲームなのだ。
「中高校生用には迷路を町にしました。歩きながら、防災マップを作っていくんです。アイデアさえあれば、何にでも変えられるんです」
 目を輝かせて迷路を歩く子どもたちに先生たちも驚いたそう。そして荒井さんは自らの言葉で震災の体験を子どもたちに話し、その思いが子どもたちの心に種を巻いていくのだ。

防災楽習迷路で遊ぶ子どもたち(写真提供:NPO法人ひまわりの夢企画)

荒井 勣さん

あらい・いさお
NPO法人ひまわりの夢企画代表。阪神・淡路大震災以降、災害被災地でボランティアを続ける。被災地に茶碗を送ろうと呼び掛けて1200箱の茶碗を集め、トラックで運んだことも。「防災楽習迷路」は平成20年度防災教育チャレンジプラン大賞受賞。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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