日本の知恵を世界に 第5回

まち歩きワークショップ

国連地域開発センターは大地震の危険性があるネパールでコミュニティの防災力を高めています。

阪神・淡路大震災の教訓によるネパールの防災力強化

 国連地域開発センター(UNCRD)は、1985年から名古屋本部で防災分野の活動を開始し、その機能は1999年、防災計画兵庫事務所へと引き継がれました。以来、UNCRD兵庫事務所では、地震国での安全な学校の推進や、耐震基準の普及を含めて、コミュニティ防災を核として防災支援に携わってきました。
 コミュニティ防災は、阪神・淡路大震災の重要な教訓です。震災発生時、最初に瓦礫の下の人々を救助したのは、隣近所、地域の人々であり、その後の復興に最後まで関わったのは当事者である地域の人々でした。
 よりよい社会への復興プロセスで住民が中心であるべきという教訓は世界へ広めていくべきものとして、UNCRDは兵庫県からの委託により、コミュニティ防災活動を推進してきました。そのなかでネパールの事例を紹介します。
 ネパールは1934年に大地震を経験しています。しかし、首都カトマンズは脆弱な建物で埋め尽くされ、人々の地震に対する意識は低いのです。そこでUNCRDはNGOや行政と協力して、まち歩きワークショップの開催や、女性への家具の安全備え付けトレーニング、地方開発省や関連省庁の関係者へのトレーニングなど、さまざまな活動を行っています。
 まち歩きワークショップでは、地元の人々が自分の地域の危険性をまず知り、そして阪神・淡路大震災時の教訓を学び、それぞれのコミュニティに戻り、災害が起こったらどうなるかという観点から歩いてみます。そして災害時に強みとなりうる場所(広場や井戸など)や脆弱な場所(狭い道路など)を考えます。それらを地図上に書き込み、コミュニティの人々によるハザードマップ(危険要因地図)が完成します。
 ハザードマップ作りは作って終了することが多いなかで、このプロジェクトでは、住民たちによって手書きされたハザードマップをデジタル化し、啓発メッセージとともに地域の市役所やバス停の前などに看板として設置しました。
 このように住民自身が自分たちの問題を考え、行動することにつなげる過程こそがコミュニティ防災の重要な鍵です。
 住民と専門家が考えていく過程で、それぞれの地域にあった特有のものを一緒に作り出していく、それが阪神・淡路大震災で学んだ「住民が主役」となるコミュニティ防災ではないでしょうか。

ネパールのまち歩きワークショップ
斉藤容子さん

斉藤容子
さいとう・ようこ。国連地域開発センター(UNCRD)防災計画兵庫事務所研究員。アフガニスタン復興支援などに携わり、ノーザンブリア大学「防災と持続可能な開発」修士修了。UNCRD でジェンダー配慮コミュニティ防災の調査研究

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内閣府政策統括官(防災担当)

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