特集 防災教育

防災教育は特別なものか

【専門家だけのものであってはならない】
 前述のように、防災教育のさまざまな行事・取組には、多くの子どもたち、家族、そして指導者などが「参加者」となっている。これらの人たちは皆、防災に対する非常に高い熱意をもち、防災を心から願う人ばかりである。ただ、一方で、その参加者の数をはるかに上回る「非」参加者が存在する。そのような人たちは、そもそもそのような行事、または教材の存在すら知らないことがほとんどだろう。そして「参加者」にも「非参加者」にも、災害というのは等しい確率で、ふりかかってくる。防災における自助・共助の重要性がますます認識されてきている今日、防災という分野に限っては、誰か特定の一部のリーダー・専門家さえ高い知識・認識を身につけていればいいというものでは決してない。

【日常の中に防災を取り入れること】
 防災教育の環境が徐々に整備されてきているとはいえ、これまでの取組を続けていくかぎり、現在の状況を大きく打開していけるかは疑問である。それでなくても現代人は忙しい。災害は、発生したら甚大な被害を及ぼすものであるが、いつ来るともわからないものに対して、「ただでさえ仕事や家事で忙しいのに無用なエネルギーなど使っていられるか」というのが(行動をしない人の)率直な気持ちだろう。確かに、日常忙しいなかで、家を耐震化したり、避難場所を確認したり、訓練に参加したり、というのは面倒で困難な面もある。その効果を実感しにくい防災対策のために、日常の中での必要な行動に使っている時間を削らなければならないからだ。あるいは、耐震化のように、かなり高額な費用がかかるものもある。
 そのような人たちに、ただ、「大地震が来たら危ない。早く対策を」とお題目のように唱えても、重い腰を上げてくれるかどうか、かなり疑問である。それを打開するには、「やりやすい・気軽な」「コストがかからない」「楽しい」という要素が一つのカギになるのではないか。重要なのは、高い熱意・志を持った人たちと、普段あまり関心がない人たちとの協働である。特に関心がない人たちにとっては、声高に「防災」といって入らせるのではなく、日常の生活の中で、ほんの少しずつ防災の要素を取り入れることができるように、有識者や地域の防災リーダーがサポートしてあげること、これが近道になる可能性はないだろうか。
 それは、教師についても当てはまる。防災教育のための最大の人的資源である教師こそ、最も災害の危険を理解し実感していただきたい職種であるが、その教師に防災教育を「特別なこと」と受け止められてしまっては、「防災教育は難しい」という反応が出てくるだけである。教師が気軽に、しかし正確に防災に必要な知識を理解し、そして日常的に子どもたちに伝える、ということを可能にするような環境を整備することが肝要である。
 以上はすぐに結果が見えるものではないという面もある。しかし、それらの作業を粘り強く、不断に行っていくこと、それこそが、10年後、20年後の日本の防災力を高めることになっていくのではないだろうか。

新しい学習指導要領( 実施:小学校/平成23 年、中学校/平成24 年)における防災教育の内容の充実(主なもの)

「防災教育支援プログラム」
内閣府・民間が行う支援プログラム〜

防災ポスターコンクール

 内閣府は、毎年の防災週間行事の一環として、一般から広く防災に関するポスターデザインを公募することにより一層の防災意識の向上を図るため、防災ポスターコンクールを行っている。平成21年度で25回目を数えるが、「幼児・小学1〜 4年生の部」「小学5・6年生の部」「中学生・高校生の部」「一般の部」の4部門で、合わせて7,000点近い応募があった。

防災ポスター

防災教育チャレンジプラン

 全国の学校や地域で取組まれる防災教育を推進するための新しい企画・取組を1 年間サポートするもの。企画の準備・実践のための経費、担当実行委員による相談などの支援を行う。公募で選ばれた企画は1 年間の結果を中間報告会とワークショップで発表し、アドバイスを受け、防災教育大賞、優秀賞、特別賞が授与される。防災教育チャレンジプラン実行委員会の主催で、内閣府を始めとする各省庁、各団体などの後援で実施。平成21 年度は選出された9件が進行している。

平成21年の防災チャレンジプラン実践団体、滋賀県立 彦根工業高等学校 都市工学科によるかまどベンチづくりの展示物

ぼうさい甲子園(1.17防災未来賞)

 学校や地域で防災教育に取組む子どもや学生を顕彰するもの。毎日新聞社が兵庫県、(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構との共催で行っている。小学生、中学生、高校生、大学生の4 部門で、応募は学校、クラス、サークル活動、ボランティア活動、地域など。応募する学校や団体の取組は、福祉、環境問題、街づくりなどさまざまで、表彰式とともに活動成果の発表会も行われる。

ぼうさい甲子園の活動写真

小学生のぼうさい探検隊マップコンクール

 子どもたちが楽しみながらまちの防災、防犯、交通安全の施設や設備などを見て回り、地図にまとめて発表する安全教育プログラム。地域への関心が子どもたちから広がり、防災・防犯・交通安全への意識の高まりや、安全で安心な地域社会の強化へつながることを目的とする。平成16 年度に始まり、平成21年度は297 校・団体から1,389 作品の応募、約1万人の小学生が参加した。(社)日本損害保険協会が朝日新聞社、ユネスコ、NPO 法人日本災害救援ボランティアネットワークとの共催で行っている。

ぼうさい探検隊のまち歩き

ぼうさい探検隊マップコンクールで防災担当大臣賞を受賞した徳島県三好市立佐野小学校の防災マップ

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内閣府政策統括官(防災担当)

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