絵本には、防災計画やマニュアルを読むのと違い、心の中にある感覚が残る。その感覚は小さな子どもにも伝染する。
私たちの「宝」を守るため、読ませておきたい絵本。そういった絵本を今回は紹介したい。
イルカのラボちゃん
文…すずきたかし(越前松島水族館長)
絵…やまざきようこ(おけら牧場)
福井新聞社
この絵本は、平成9年のロシアのタンカー「ナホトカ号」の重油流出事故のときにあった本当のお話。
福井県三国町(現在の坂井市)の海岸に漂着した大量の油。それが、越前松島水族館のイルカのプールにも入り込み、飼育していたイルカたちに忍び寄った。
それに気づいたボランティアたちは、トラックを手配し、受入れ先を探し、神戸の水族館に受入れてもらった。
当時生後6ヶ月のまだ乳飲み子で名前も決まっていない赤ちゃんイルカがいた。赤ちゃんイルカの移動は、99%難しいと思われていた。遠くへ運ぶまでに、死んでしまうかもしれない。名前をつけて勇気づけよう!
海やプールの油をすくってくれたたくさんのボランティアさんの文字をもらって「ラボ」。ラボは5時間の輸送に耐え奇跡的に命の危機から脱することができた。ラボは、みんなの気持ちに生かされたのだ。
この救出劇を絵本にしたのが、「イルカのラボちゃん」。尊い命を助けるために、数百人のボランティアが関わった。命の貴さ、環境の大切さ、ボランティアの大切さを考えさせる物語。いまでは、福井で子どもミュージカルにもなっている。
越前松島水族館を訪れると、いまもラボは元気な姿でショーを見せている。


元気に育ったラボ(写真提供:越前松島水族館)
こども安全えほんシリーズ 2 そなえる
絵…中村みつを
監修…危機管理アドバイザー国崎信江
株式会社学習研究社
この絵本は、登場人物のソナエールはかせと、なまずロボと一緒に、地震が起きてしまったときに、どうしたらいいのか、少しずつ考えていく構成となっている。
そもそも地震とは何かをイメージできない小さな子どもでも、ストーリーを追っていくと、地震のときにしたほうがいいことが、一通りわかるようになっている。それは、行動のポイントが、「仕掛け」となるように工夫されており、シール、迷路、絵探しなど、意味をわかっていなくても、記憶に残るようになっているからだ。
地震というものを子どもに初めて教える教材として、必要なポイントがきっちり押えてあり、とてもいい絵本といえるだろう。

