特別企画 平成20年版 防災白書を発表

3.防災対策に求められる新たな視点

経済被害の拡大への対策

 経済のグローバル化・高度化等を背景として、新潟中越沖地震における自動車部品メーカーの被災に見られたように、個別企業の被災が他の企業・地域に連鎖的に被害を拡大する可能性が高まっており、こうした経済被害の拡大を防ぐために企業の事業継続計画(BCP)策定の促進は、単に個別企業のみの利益を超えて、社会全体の経済被害拡大を防止する観点からも必要です。
 このような中、企業はBCP策定の必要性は認識しているものの、実際の策定率は大規模地震対策において掲げられている目標には遠く及ばない状況です。
 このようなギャップを解消し、BCP策定を促進するには、

  1. 企業経営者等の企業防災への意識を高めるため、BCPの策定等企業防災への取組みが、格付けや融資等において適正に評価されるような市場条件の整備
  2. 業種業態に応じたBCPの策定等高度に専門的な助言・指導ができる支援体制を整備

が必要です。
 さらに、大規模災害時には個々の企業が必要とするだけの資金量を必要な時期に十分手当てしきれない事態も懸念されることから、事業継続計画の策定と並んで、こうした事態にも対処できるだけの財務上の備えを図って行くことは忘れてはならない課題であり、今後検討を深めていく必要があります。

人々の安心を確保する災害情報の提供のあり方

 高度情報化社会では、発達した情報メディアを効果的に活用することにより、高い災害対策の効果を挙げることができる一方で、その対応を誤ると、逆に社会の不安を増幅し、経済的な被害の拡大を招くことにもなりかねません。
 新潟県中越沖地震において柏崎刈羽原子力発電所が被災したケースでは、国及び事業者による地元自治体への連絡や周辺住民等への安全・安心情報の提供が迅速かつ的確に行われなかったことが、周辺住民のみならず広く不安を拡大させる一因となりました。さらに、こうした人々の不安の拡大は観光客の減少という形で地元経済に影響を及ぼしました。
 災害時においては、人々の安全の確保に加え、人々が安心を持ちえるような情報の提供を行うことが、地元経済に被害を与えることを防止するためにも重要であり、

  1. 正確な情報を迅速に、プレスはもとよりホームページ等の多様なメディアを通じて住民や国民に直接提供する取組みを強化、
  2. 情報を国民に分かりやすい形で提供する工夫を強化、

することなど、安全・安心情報が迅速かつ的確に国民や諸外国に広まる効果的なコミュニケーションを目指すべきです。

気候変動への適応策としての防災に関する取組み

 過去30年間を振り返ると、ここ10年間の気象には、短時間に激しく降る大雨の発生回数が明らかに多いなど異常なものが見られ、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は地球温暖化の進行に伴って大雨が頻繁になり、熱帯低気圧が強くなると予測しています。
 こうした中で、気候変動による豪雨や台風の強度の一層の増大、海面水位の上昇などにより、過去の統計や経験が通用しなくなる事態が生じることも想定されており、水害や土砂災害、高潮災害等に備えた防災・減災対策について、気候変動への対応の視点を踏まえて、従来の枠組みを超えた発想による対応が求められています。
 英国など諸外国では先進的な取組みもなされており、我が国においても、我が国の英知や持てる力を総合的に組み合わせて、防災基盤の整備を長期的な視点で立案し、確実に実施していく必要があります。そのためには、堤防やダム等の施設の整備を着実に進めるとともに、流域における土地利用のあり方や危機管理対応、早期警戒や訓練の強化など、ハードとソフトを効果的に組み合わせた適応策を検討していく必要があります。
 こうした対策に加え、このような新たな観点からの災害対策を実施していくためには、国と地方、地域コミュニティとの効果的な連携・協働や、官と民の協力・役割分担など、災害対策の総合性をさらに強化していくことが必要です。
防災白書の詳細はインターネットでご覧いただけます。
https://www.bousai.go.jp//kaigirep/hakusho/index.html

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