防災 Q&A

Q:耐震補強の必要性について教えてください

A:現在、わが国は地震活動の活発な時期を迎えています。皆さんは、世界有数の地震国で、しかも特に活動度の高い時期に暮らしているのです。このような状況下で、どうすれば自分や家族、そして大切な財産を守れるのでしょうか? 地震のたびに、事後対応のまずさが指摘されます。しかし、いかに充実した事後対応システムを持とうが、地震直後に発生する被害の量を減らす努力なしでは、地震被害を抜本的に軽減することはできません。阪神・淡路大震災の最大の教訓は、「激しい地震動で地震の最中から直後に発生した約25万棟の全半壊建物により、直後に5500余名の犠牲者を出したことが、その後に生じた様々な問題の根本的な原因であり、これを減らす努力なしには地震防災はありえない」ということです。言い換えると、地震の後に指摘された様々な問題、すなわち、救命・救出活動の遅れ、延焼拡大と焼死者の問題、避難所や仮設住宅での問題、家屋解体やゴミの問題、復興住宅や生活再建の問題、被災者の心理的な問題や孤独死、膨大な復旧・復興経費の発生などは、建物被害が少なければ、顕在化しなかった可能性が高いのです。兵庫県南部地震では、犠牲者(地震後2週間まで)の87%が自宅の被害で亡くなっています。また犠牲者の92%は地震直後の15分内(兵庫県監察医による)に亡くなっているのです。これは補修・補強や建て替えなど、事前のハード対策がない限り、救うことができない犠牲者がほとんどであったことを示しています。地震後に指摘された内閣総理大臣への被害情報の早期伝達の問題や自衛隊の出動体制の問題が仮に解決されていたとしても、直後の犠牲者を救う意味では状況を大きく改善することはできなかったのです。震後火災による焼死者も、そのほとんどは倒壊建物の下から逃げ出すことができずに亡くなっています。家が壊れなければ、傷んだ建物の下敷きになって、なすすべなく火事を待たなくてはならない状況は回避できたのです。耐震性が高くなると出火率も延焼率も大幅に低下します。消防水利や消火活動の問題の前に、構造物の問題があったことを認識しなくてはいけません。自分が地震で亡くなってしまう状況を想像してみてください。何を最大の教訓として遺族に、大切な仲間たちに伝えたいですか? 防災においては、「自助・共助・公助」が重要ですが、「自助」のない「共助」や「公助」は大幅な無駄を生みます。自然災害に関しては、市民に十分な量と質の情報を開示し、自分の置かれた環境やリスクを十分認識してもらうことが重要です。市民は適切な情報に基づいて、「自助」で事前対策を講じるべきですし、「共助」や「公助」も、「自助」を支援し誘発する仕組みになっていることが重要です。事前対策で最も重要なことは、言うまでもなく既存不適格建物の耐震補強です。これが地震大国で現在進行中の地震多発期に暮らす皆さんが自分と家族、そして大切な財産を守るために最も重要なことなのです。

耐震補強の必要性について教えてください

イラスト:井塚剛

あなたの疑問に答えます!

防災、災害に関する疑問・質問がありましたら、内閣府(防災担当)まで、はがき、FAX、メールにてお寄せください。専門家が、ていねいにお答えします。
〒100-8969
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館3階 内閣府(防災担当)  防災Q&A係 まで
03 - 3581 - 8933(FAX) 

東京大学 教授
目黒 公郎

めぐろ・きみろう
東京大学大学院修了後、東京大学助手、准教授を経て、2004年に教授、2007年より生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター長を務める。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.